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10話 悪役令嬢からの解放

 


「あれは!お前がマリアを虐めたからーーー!」


「私が、マリアを虐めていた証拠は無かったはずです!事実無根です!」


 ゲームの悪役令嬢と違って、私はヒロインを虐めていないんだから。


「それはーーー」


 ゲームの悪役令嬢(わたし)は、こんなに嫌われているのに、それでもサステナ王子が好きで、手に入れたかったんですねーーーでも、もうそろそろ、サステナ王子も解放されるべきです。


「サステナ王子、私、サステナ王子のこと、好きじゃありません」

「ーーえ?」


「もう好きじゃなくなったんです。だから、もう二度と貴方に付きまとったりしません。安心して、好きな人と恋愛して下さい!」


 暗に、ヒロインとの恋路を邪魔しませんよ!とアピールしている。


 私の言葉に、サステナ王子は憑き物が落ちたように、穏やかな表情に変わった。

 ずっと、私の重すぎる愛に苦しんで、張り詰めていたんでしょうね。私はこの人のこんな穏やかな顔を、見た事が無い。私の記憶に残るサステナ王子は、いつも不機嫌で、怒っていて、眉間に皺が寄っていた。


 それが答えな気がする。


 悪役令嬢(わたし)は、彼に愛されていなかった。



「ティセ様、マリア様!順番が来ましたよ!」


「はーい!分かりました」


 先生に呼ばれたので、私は大きな声で手を上げ、返事をした。


「役に立てないと思うけど……頑張ろうね!」

「は、はい…!」


 私はマリアに声をかえ、呆けているサステナ王子を素通りして、先生のもとに向かった。


 どうかこれで、彼が私の呪縛から解き放たれて、自由に生きれますようにーーーついでに、私に対するむき出しの敵意が無くなりますように!!!


 それにしてもーーーこんなイベント、ゲームには無かったよね?悪役令嬢とヒロインが友達になっていたのも知らないし……あのゲーム、裏設定が多かったのかな?




 ヒロインであるマリアの光魔法は、万能だ。私と違って、攻撃も回復も出来る優れもの。流石ヒロイン。


 対して、私の魔法属性は悪役令嬢らしくーーー闇ーーーだけど、全く強く無い。


 光と相反する闇も希少だと思われるかもしれないけど、実はそうじゃない。闇の魔力を持つ者は、普通にいる。ただそのどれもが、闇の力を使えず、持て余しているだけ。

 どこかの攻略本の裏情報で得た話によると、闇は魔物の力だから、闇の魔力を持っていても、人間は上手く使えないらしい。

 真面目に授業を受けた私も、ゲームの悪役令嬢が扱う魔法以外は習得出来ず、上達出来なかった。


闇魔法(ダークシーク)


 使える闇魔法は、非戦闘魔法の、影の中に身を隠す魔法。


 ただ、この魔法は見ての通り、隠れることしか出来ないので、私はただ戦闘中は、陰に隠れてやり過ごすしかない。隠密行動とかには向いてるけど、こういった訓練には全く向いてない!気付かれず背後に周っても、攻撃魔法使えないからね!しかも定員は自分だけ。

 折角乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのにーーー雑魚感がヤバい。

 私と戦っても訓練にならないから、二年生でたまにあった戦闘訓練でも、誰も私と対戦しようとしなかった。


 公爵家の権力を振りかざさないと誰も近寄ってこないなんて、私はどんだけヤバいの……。


 影の中に隠れながら、外の様子を見ると、マリアが一人で戦っているのが見えた。


 ……私は一人、安全な場所にいて、マリア一人に戦わせるなんてーーーまるでゲームの悪役令嬢そのもの!


「ティ、ティセちゃん…!戦闘、終わりました……勝ちましたよ」


 上から私を呼ぶマリアの声が聞こえる。

 ヒロインであるマリアは順調に成長しているのに、悪役令嬢の私ときたら……


 駄目!無理ーーー!罪悪感が半端無い!次からは、マリアとのペアを断ろう!

 私はそう決心して、影の中から外に出た。




 ***



 マリアの光の力は、この学園生活の中で大幅な成長を遂げていて、同じくハイスペックな攻略対象キャラ以外は、太刀打ち出来ないまでに成長していた。

 それなら、女子生徒達に囲まれた時も、自分一人で余裕で対処出来たんじゃないかとは思ったけど、そこはヒロイン。守られ属性が働いたのでは無いかと受け取った。


「何だか、今日はいつもより疲れました…」


 授業が終わり、家に帰って来た後も、何故かお父様とお母様に、今日あった出来事を根掘り葉掘り聞き出された……さ、流石に、ウィルとキスしたことは話せませんでしたけど!

 私にも、恥じらいがありますからね!


 ネグリジェに着替え、ベッドに仰向けで寝る。


 あれから、今後一切、マリアとはペアを組まないと言ったら、マリアは目に涙をため、泣き出してしまった。

 慌てて弁解と理由を述べたけど、『私は……ティセちゃんの役に立てるなら、それでいいの…!』なんて、泣きながら健気で可愛いことを言われて、心臓が鷲掴みにされるところだった!

 事情を知らない他生徒から見たら、私がマリアを利用して戦闘訓練を受けていると思われるでしょうけどーーーマリアに泣かれるよりはマシ!私の名誉なんて、マリアの涙の一万分の一の価値しかない!


 結局、攻略対象キャラとのイベントも考慮して、一週間に一回、ペアを組む事で納得して貰えた。


 うん……私、女の子に一人で戦わせて、自分は安全な影の中ぬくぬくと見学なんてーーー人間的に大丈夫かな?



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