営業所
回を重ねる毎にクオリティがさがっているような気がする
車に揺られること体感30分。
森を抜けた。
「そろそろ着きますよ」
というタナカさんが言い、開けた草原の道路を走っていると建物が徐々に増えてきた。
2階建てのレンガ造りの建造物が並ぶ様子はいかにもなファンタジーな空気を醸し出している。
人通りも少なくはない。
辺りを見回すと人が5、6人ほど視界に入るぐらいには人がいる。
車が珍しいからか彼らからの視線を感じる。
「なんか、視線を感じる」
「車はまだ、珍しいですからね」
タナカさんは慣れているのか、気にしていない様子。
数分走ったら、タナカさんが
「もう、見えてきましたね」
と言い放ったので彼の視線を追うと三階建てのレンガ造りの建物があった。
一階には自動車1.5台分ぐらいの空間がある。
車を停めるためかな?
建物の前に着くとそこに車を停めるためかレバーを操作しペダルを踏んでハンドルで動きを調整しながらバックをした。
中に入ると、イグニッションスイッチを切りエンジンを止めた。
ガタガタと鳴るエンジン音がなくなるとブレーキをかけた。
「もう、降りていいですよ」
タナカさんの呼びかけを聞き、車を降りる。
ちょっと座席に高さがあったからか、降りた時の衝撃が直に伝わってきて痛い。
でも、耐えられないほどじゃないからいっか。
「ここってどこ?」
「オイリス社の営業所ですよ。
ただ、社員がいることが少ないので車を使った時に停めるぐらいでしか使われませんが」
「へ~」
駐車場の代わりとして使っている感じなんだ。
「今はいるの?」
「分かりませんね。
中に入ってみないと何も言えないので」
「……」
「入ってみますか?」
「いやいや、僕関係者じゃないよ!」
「いえ、大丈夫ですよ。私はそれなりに偉い立場にいるので一人入れ
た程度ならどうにもできますので」
この言葉、信じてもいいのか?
基本的に会社って部外者を入れちゃダメだよね。
ん~~~、まぁいっかな。
なにかあったら、タナカさんに押し付ければいいし。
「じゃあ、よろしく」
「では、行きましょうか」
タナカさんに付いて行くと駐車場を出た隣にドアがあった。
彼がドアの鍵を外して、ドアノブを捻り扉を開けた。
「どうぞ、入って下さい」
「おじゃまします」
中に入ると目の前に階段があった。
玄関はなく殺風景なレンガの壁にコンクリートの床があるだけだ。
「ついてきて下さい」
と言って、タナカさんは階段を上がった。
上がり切るとオフィスとも一軒家の内装とも取れるような空間が広がっていた。
まず、視界に入ってきたのは長机。
木製の長机の端には地図が放置されており、インクやペンも同様に散乱している。
机の周りには椅子が6つほど置かれている。
5つはきっちりと整理されているが1つは斜めに机からはみ出ていた。
左には作業できそうな小さな机が4つほど置かれている。
そして、壁はレンガではなく木製だ。
床も同様に木でできている。
窓には主張の弱いブラウンのカーテンが横に縛られていた。
なんかおしゃれな感じ。
「ん~~?あれどこだったけ?」
という声がした。
目線を移すと部屋の右隅にスーツに身をまとった男がいた。