生存者Ⅳ 旅立ち

プロローグ

「あ、お母ちゃん。

２人と遊んでいたら帰りのバスなくなっちゃた。

だから今日は学校に泊まるね。

…………

うん、見つからないようにするよ。

おやすみなさい」

スマホをポケットに仕舞うと女の子のような顔立ちの小柄な男子生徒は、友人たちが見ているパソコンの画面を彼等の背中によじ登るようにして覗き込む。

パソコンの画面には日本を含む世界各国で人が人を襲い、その肉を食べているというニュースが流れていた。

「これ本当の事なのかな？」

「ヤラセじゃないのか？」

「否、このニュースサイトやさっき見ていたサイトは、アメリカやイギリスの大手放送局のサイトだから信用できると思うんだ」

パソコンの前の椅子に座り友人たちの質問に答えた男子は、パソコンの画面の時計の時刻を見てから話しを続ける。

「遅い時間だから今日はもぅ寝よう、念のために明日の朝もう一度確認すればよいだろ。

場合によっては、俺たちも逃げないといけなくなるかもしれないからな」

翌朝小柄な生徒が目を覚ました時には既に起きていた上半身裸になった筋骨隆々とした身体の友人は朝の鍛錬の腹筋を行っており、パソコンの前では逆に腹の肉がワイシャツとズボンの間から覗いている脂肪の塊のような友人が、菓子バンを食べながらパソコン画面を食い入るように眺めていた。

「昨日のニュース本当の事みたいだぞ、被害が拡大している」

友人の言葉に、お盆初日というのに台風通過後のあちらこちらに水たまりがある校庭で運動部の生徒達が汗を流している姿を窓越しに見ながら、小柄な生徒は返事を返す。

「校庭を見ている限りだけど、そのニュースが嘘のように感じるけどな」

その時３人の耳に校舎の階下から、断末魔を思わせるような人の悲鳴が上がるのが聞こえた。

「ギヤアァァァァー！」