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同類

 雨は降り注ぐ。宗十郎、カーチェとは別れ一人中央へと駆け出す。頼りになる連中だった。視界は悪いが、単独での潜入となれば最早、有利にしか働かない。イアソンは敵との戦闘を可能な限り避けて、それでいて最短ルートを選択し突き進んでいた。


 「……!ちっ、カーチェの奴、こういうことは伝えるべきだろう。いや当たり前のことすぎて伝える必要もなかったと?」


 舌打ちをする。最早中央庁は目前。目前なのだが……。カーチェは言っていた。中央区は区画整理されていると。ならば当然だった。中央庁はオルヴェリンの中心に位置し、360度どこからでも入れるように開けた場所にある。これまでは建造物に隠れ道を行き来していたが、中央庁へは遮蔽物の類はまるでない。誰が入るのか、丸わかりということだ。

 そして当然だ。そこには軍隊の本陣があった。今、幽斎が指揮している亜人連合軍を迎撃している部隊の作戦本部。

 だがこれは好機とも捉えられる。ここで指揮系統を破壊すれば、連合軍の勝利は確実となる。中央庁を占拠しようが連合軍が敗北してしまえば意味がない。敵の戦力は未知数。こちらには軍師がいるわけではない。ならば、ここで叩くのが最適……!


 イアソンは弓を引き絞る。狙いは奇襲。一撃で指揮官を殺す。あとは雑兵、どうにでもなる。

 息を整える。精神を集中させ、目標を見据える。目の前にイメージするは必中。ぼんやりと浮かんでいく。弓を構え、矢をつがえる。指先に感じる弦の緊張。胸に響く鼓動。全身の力を集中させる。一瞬、世界が静まり返ったように感じた。そして、放つ。


 矢は風を切って飛んだ。的に向かって一直線に進む。イアソンはその軌道を見守った。的の中心に命中するかどうか、わずかな差で決まる。

 騎士達は矢の風切り音に気が付き、指揮官を守ろうとするがもう遅い。放たれた矢は本陣の守り貫き確実に中の指揮官を射抜いた。


 「おのれ、不意打ちとは姑息な手を!出てこい!貴様に騎士道を叩き込んでくれようぞ!」

 「言われなくてもそのつもりさ。悪いな、だが俺たちのしているのは戦争。不意打ちなど日常茶飯事だと思うがな。」


 剣を握りイアソンは物陰から出てくる。開けた場所。狙撃兵がいればひとたまりもないが、この豪雨だ。ろくに狙うことはできまい。従って為すべきは速攻。一瞬で決着けりをつける……!

 水たまりが跳ねる。イアソンが加速するのに地面を蹴ったその衝撃で飛散したのだ。降りしきる雨粒が、イアソンの爆発的な加速により吹き飛ばされて、まるで巨大な暴風雨のようであった。

 そして鎧の上から剣を叩き込む。鉄製のプレート。高い治金技術を彷彿させる立派な装備であったが、イアソンの膂力には無意味。無慈悲に叩きつけられ変形した鎧は意味をなさず、崩れ落ちる。

 ようやく気がつく。目の前にいるものは異郷者。圧倒的力を持ってオルヴェインに弓引く暴力。それは天災の如し。


 騎士の一人が叫んだ。だからといって逃げるわけにはいかないのだ。彼らの手にあるのはノイマンが発明した突撃銃。その威力や絶大で、威力だけならば先程のイアソンの剣技など足元にも及ばない。


 「なるほど、ヒュドラのようなものか。もっとも……それに比べれば脆い。」


 銃を構える騎士たちを見てイアソンは身を翻し、乱戦へと持ち込む。敢えて更に敵のいる場所へ。狙いは一つ。もっとも銃の扱いなど、つい先日まで知らなかった騎士たちには、それが何の意図を持つか理解していなかった。イアソンに向けて引き金を引く。放たれる無数の弾丸!


 悲鳴、悲鳴、悲鳴!悲鳴の声は騎士たちだ!射線上にいる味方を撃ってしまったのだ!イアソンは無傷、跳躍し難を逃れている。

 銃弾を見て躱すのは不可能だ。だがしかし、銃を扱うにあたりそのプロセスは分かる。

 銃口を向けて狙いを定め、引き金を引く。大きく分類するならばこの程度。イアソンは銃口と引き金を引く動作に着目した。そこさえ注意すれば、結論的に銃弾を躱したことになる!


 だがしかし!騎士たちはそこまで頭が回らなかった!ただでさえパニックになっている状態。そして異郷者という理外の力を使うものたち。その先入観から、目の前の男には銃は通じない、全て躱されてしまうという畏れを抱いたのだ!


 「やめとけ、やめとけ!お前らじゃそいつには敵わねぇよ……いよぉ、久しぶりだな兄ちゃん。」


 立ちすくむ騎士たちを押しのけて前に出てきたのは見覚えのある男だった。エルフの森で出会った男。リュウと呼ばれていた異郷者である。


 「相変わらず容赦しないねぇ兄ちゃん。何がそこまでさせるのやら。」


 表情にこそは出さなかったがイアソンは内心、困惑していた。何故ならば、今しがた弓矢で射殺したつもりだったのは間違いなくこの男だったからだ。だというのに何故、平然としている。刺された矢はどうした?

 まず第一に考えたのは何らかの加護を得て不死の肉体となっている可能性。しかしそれならば、あの場でエルフの森でのジルとの会話に整合性がつかない。ジルはリュウを庇いきれないと言っていた。それは即ち剣刺されば傷つく身体。不死でないことの証明。

 頭の中で様々な可能性を張り巡らせている中、リュウは笑いながら答える。


 「実はこうして話したかったんだよ兄ちゃん。お前とは色々とな……良いだろ兄弟?」

 「お前に兄弟扱いされる謂われはないが。」

 「そう邪険にするなって!俺たち似たもの同士なんだから。ひと目見て分かったぜ。お前はこちら側の人間だ。分かるんだ。だから兄弟。俺とお前は……中身は一緒だよ。クヒヒッ……教えてくれよ兄弟。自分の子供たちを目の前で殺された時ってどんな気持ちだったんだ?女に裏切られ何もかもなくしたときは?号泣していたらしいが、心情までは分からねぇからなぁ?」

 「お前は俺のことを知っているのか。」


 リュウという名前に聞き覚えはない。しかし偽名の可能性がある。記憶をたどる。この老人の姿を。いつかどこかで出会ったのか。冒険で出会った人々を思い出す。

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