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奇跡の伝い手

 「センサーに問題なし。近辺に人と思われし生命体は確認できない。ドラゴンの脅しが効いたようだな。」


 イアソンの報告にカーチェは胸をなでおろす。第一関門は突破できた。この巨大なアルゴー船が城壁を破壊した時に、巻き添えで市民に死者が出ないか、懸念だったのだ。


 「よし、このまま中央まで進み……ん?なんだ……熱源?」


 それは奇妙な熱源だった。何もない空中で、僅かだか確かに微細な熱源が大量に発生している。鳥にしては数が多く、虫にしては熱量が大きすぎる。イアソンの頭に浮かんだのは大規模魔術の行使。アルゴー号に防御姿勢を取らせる。

 やがてその熱源は静止し、アルゴー号の前に立ちはだかる。何かが来る。そう身構える。


 「亜人諸君、ようこそオルヴェリンへ!過激な挨拶だがまぁ許そう!私の名はノイマン、異郷者ノイマン!この街を作り上げた天才である!」


 空中に浮かぶ巨大な映像。ノイマンの作り出した三次元映写装置。だがそれを知らない亜人たちは驚愕する。とてつもない存在を目の前に。


 「きょ、巨人だ!なんだこいつは!突然現れた!!気配すらなかった!!こんな……こんな化け物がオルヴェリンにいたのか!!」


 亜人の一人が弓矢を放つ。当然、矢はノイマンには当たらず、空を切る。


 「おおう?突然、弓を放つとは何という野蛮な!しかし亜人たちよ、無駄だぞ?そんな弓ごときで私は倒れない。何故ならば私こそが、いかなる攻撃も通じない不滅の英雄!ははは怖かろう!無意味無意味!」

 「そ、そんなことが……畜生!なんで全然効かねぇんだ!イアソンさん!砲撃だ!あの巨人を倒さないと俺たちは進めないぞ!!」


 ノイマンの挑発に亜人たちは慌てる。しかしイアソンは冷静だった。何かがおかしい。まるで見たこと無い現象。だが彼の長年の経験からくる直感が告げている。あれはまやかし、幻想の類。だが、確信はない。推察をもとに断言したとして、もしも間違っていたら信頼を失う。考えあぐねていた。


 「落ち着くのだ皆の衆、あれは3Dホログラム。技術的映写装置。ただの映像にすぎぬ。」

 「いやぁーよくできた装置でござるな。トクガワ家でもあれほど立派なものはないでこざるぞ。余程の傾奇者かぶきものでもない限りあのような大規模なものは用意しないでござる。」

 「……この世界にもあったんだ3DMRビジョン……あれをアイドルライブに使えばもっと盛り上がるんじゃ……いやでも費用対効果が……ブツブツ」


 亜人たちだけではない。カーチェ含む皆が驚愕の存在に困惑している中、平然と懐かしいものを見るような目で、宗十郎たちはノイマンの映写装置を見ていた。

 そう、彼らの世界では当然のようでかような装置は実現済みなのだ!あれほど大型のものは流石に珍しいが、一家に一台!食事をしながら家族団らんで眺めるバラエティブシドーチャンネルを見ることもよくある!即ち、基本的な家電である!

 当初は戦争に使う、撹乱装置として発明されたものであったが、結局ブシドー相手には通じないという点、加えてニンジャならば同じことが、それも更に高品質なことができるということから不遇の発明品として見られていたものだが、ある歌人がそれに着目!戦争兵器ではなく娯楽として大衆に人気を博している!!


 「ほう、そうか。この映写装置を知る異郷者がいたかぁ。またブシドーか……。こうして敵対関係で無ければ話をきちんとしたかったぞ宗十郎。お前たちの世界は、一体どういう技術体系をしているのか……。」


 亜人たちの反応が面白く、つい悪ふざけをしたが目論見は外れた。圧倒的、科学技術をもってして亜人たちをからかうつもりが出鼻をくじかれた思いだった。しかしそれよりもノイマンはより一層宗十郎たちのいた世界に関心が深まったのだ。サムライブレードといい、未知の技術で詰まっている。自分の知らない科学技術。それが彼の本能を刺激するのだ。

 だが、今は立場上できない。彼はふざけた態度をとるが、根は真面目一貫。与えられた役割をこなすのだ。


 「おほん、茶番はここまでにしよう。カーチェ!天才の私がわざわざこうして派手に出てきたのはお前に話があるからだ!」


 カーチェの神経がこわばる。ノイマン。このオルヴェリンを作り上げた男。ある意味、建国の父と言ってもいい。この街の恵みも全ては彼の発明によるもの。言うならばオルヴェリンにとってもっとも尊敬に値する英雄。彼のおかげでオルヴェリンの人々が幸福を享受しているのは紛れもない事実なのだ。彼によって多くの人々が救われているのは事実なのだ。


 「私はここにいるぞ!何の用件だ!」


 故に礼節をもって答える。そのような男が名指しで自分に呼びかけている。おそらくは何か重大な話なのだろうと考えたのだ。


 「何の用件だと?本気で言っているのか……貴様、無断欠勤が続いているぞ!報告も無しに仕事を休むとは何事だ!貴様のところで書類が止まっているのが山ほどあるんだぞ!」


 目が点となった。頭の中が真っ白になった。

 この男は……何を言ってるんだ?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 一家に一台! 食事をしながら家族団らんで眺める バラエティブシドーチャンネル めちゃくちゃ見たい笑笑 宗十郎たちがいた世界、何気に技術先進国! そして、カーチェに対する言葉がまた……
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