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二つの流星

 「フェン!俺が分かるか!?今しがたともに戦った戦友の名を!!」


 宗十郎は叫ぶがフェンに返答はない。ただその代わりに、先程見せた冴えわたる一撃。剣の一閃が宗十郎へと放たれた。しかし……その一撃にはまるで重みがない。

 死体を蘇らせ、自由意志を奪い兵隊のように扱う妖術。聞いたことがある。もっとも死体にはブシドーはない。故に軽いのだ、その一撃が!取るに足らない存在であるのは明白なのが、ブシドーの常識であった!


 「戯けが吉村!かような小手先、勝負に水を差すだけのものと知れ!!」


 地面にサムライブレードを突き刺す!そしてブシドー注入!ブシドーを注ぎ込まれた大地は光を帯び、龍脈を浮かび上がらせる!龍脈とは気の流れ!即ちブシドーである!そこにブシドーを注ぎ込まれたことにより一時的に暴走、発光現象と大爆発を引き起こすのだ!かつてオルヴェリン脱走時に宗十郎が見せた技の真骨頂である!


 「これぞタクティクスの一つ!龍紋陣!!」


 破裂!衝撃波!突き刺したサムライブレードを中心に、龍脈がまるで紋様のように輝き出し衝撃波を放つ!哀れ蘇生されたアンデッドたちは粉微塵に粉砕!生命活動を終え、極楽浄土へと召されるのだ!!

 その技が放たれた後には宗十郎を中心とした巨大クレーターのみ。本来ならば決着がついていた一撃。だが、此度の相手は不死の軍団。宗十郎はその瞬間まで完全に意識の外だった。目の前に、パイナップルのようなものがいくつも、飛んできたのだ。


 「───なに?」


 閃光。そして爆熱と衝撃波。グレネードボムである。火柱が立ち上がり、強烈な閃光は目を眩ませる!

 予想だにしなかった攻撃に宗十郎はもろに受け、視力を一時的に喪失したのだ!戦場において、視界を無くすという意味は致命的!吉村の剣が、宗十郎の首めがけて放たれた!


 ガキンッ!!


 金属音!砕かれた音である!宙を舞うは刀身、そう吉村が友より賜りし大業物・大和守安定である!


 「舐めるなよ吉村。目を潰したところでブシドーには心眼がある。殺気などブシドーで察知すれば問題はない。」


 無傷!そこには無傷の宗十郎が目だけを瞑り、そのサムライブレードで大和守安定を叩き折ったのだ!明白であった!今まで折れなかったのは吉村の技量あってのこと!正面から打ち合えばいくら大業物といえど、最新フレーバーのサムライブレードには地に足もつかないのだ!!


 「言わずとも分かる。吉村、お主は今、お主の背後にいる何者かに貶められただけのこと。ならば介錯致そう。それがブシドーである拙者の役割……!」


 首を刎ねても生きているのであれば、縦一文字に両断する。動けなくなるまで何度も何度も切り裂く。宗十郎はサムライブレード握る力を強め、狙いをつける。その時であった。折れた刀身が、空中であり得ぬ挙動をして、まるで生き物のように宗十郎へと向かってきたのだ!


 「なにっ!?これは……!?」


 何とか身を翻し躱すが、あまりの強襲にかすり傷が入る。

 宙を舞う刀身は、吉村が握りしめている日本刀に戻っていった。その挙動、まるでサムライブレードのようである!


 「森羅万象、意志なぎものであるべぇともその業物、いずれは魂籠もる。命込められだものだら、当然この力の範囲の内!外道さ下す天誅、今こそ知れ!!」


 八百万の神という考え方がある。宗教の一つである。万物には神々が宿り、その役割を果たすために生まれてきたというものだ。即ちそれは物にも命があるものと考える教義。

 デュラハンは命あるもの全てを支配する死の王である。命あるもの……仮にデュラハンが八百万の神々を意識し、死した物質に魂宿らせ再び不死の軍隊として蘇らせることができるのならば───。


 吉村の周囲に戦場の武装が集結する。その全てが八百万。神々の魂宿るものだと考える!実際は分からないが、吉村はそう本気で信じるのだ!故に起きる科学現象、それは意図せず起きた化学反応である!

 集まる武装の中には騎士の持っていた突撃銃が無数。コボルトたちが持っていた武器がいくつか。それらが集結し吉村の肉体を外骨格のように補強するのだ。言うならば武装骨格である。

 背中には翼のように構成された近代武装が集結する。しかしそれは翼と呼ぶにはあまりにも異様で、あまりにも幾何学的だった。


 「いざ!推参!殲滅されよ!士道に弓引く大逆人どもよ!!」


 轟音。急加速!背中の翼が火を吹いた!アフターバーナーによるロケット噴射!デュラハンの能力により組み替えられた、ノイマン発明の近代武装たちはその姿を変えて、より最適化されたのだ!ジェットエンジンへと!

 それはまるで音速飛行戦闘機のようであった!信じられぬ挙動、慣性の法則を無視した急加速に宗十郎は吉村のタックルを防御間に合わず受けてしまったのだ!


 「ぬぅ!?ぬぉぉぉぉぉおおぉ!!?なんだ!?なんだこれは吉村!!これがお主のブシドーだというのならば、まっこと奇怪!危機千万!!」


 気づけば上空10000メートル!星が見えた、昏き闇が見えた!ここはどこなのか!?ありえない空間に吹き飛ばされた宗十郎は困惑満ち足りていた!

 吉村の突撃はその圧倒的加速力により、大地離れ、重力を振り切り、宗十郎とともに空高く、飛翔していたというのだ!


 「北辰一刀流!星崩しィッッ!!」


 高度が限界に達した時、アフターバーナーは逆噴射を始める!重力も加わり、宗十郎へと渾身の一撃を叩きつける。

 高度10000メートル。そこから地面へと急降下!大気燃え尽きる果てしなき熱!刀身が赤熱と化し、ブシドーを斬り灼く!

 それはまるで隕石のようだった。二人はこの世界に降り立つ隕石になったのだ!地面衝突まで数コンマ、確実な死が待っている!


 「なめるなぁぁッッ!!」


 このまま地面に衝突すれば破裂四散!数万トンジュールのエネルギーを五臓六腑に叩きつけられ死亡不可避!サムライブレードにブシドーを注入しナノマシンを散布、防御形態……否!攻撃に転じるのだ!ブシドーは退き際を誤らない!今は、攻撃に敢えて転じるときなのだ!

 放つはサムライブレードにより圧縮したブシドー臨界波動である!遥か上空、星の空から叩き落される衝撃を利用し、その力を逆に敵に叩きつける!更にその波動反動により、この落下していくエネルギーを緩和するのだ!!


 ───人々は見た。

 空から、遥か遠い空から、赤熱の二対の星が降ってきたことを。

 あるものは天災の前触れだと、あるものは神の降臨だと、あるものは世界の祝福だと。

 どれも違う。そこにいるのは二人のおとこ。武士とブシドーが、その魂を削り合い、その武を競い合っているのだ。


 二対の星は地面に衝突する。瞬間、大爆発。周囲一体を吹き飛ばす。地盤は剥がれ粉砕。山は吹き飛び、大地は剥がれる。川は枯れ上がり地形を変える。

 全員が唖然としていた。誰もが思わなかった。その中心にいるのが、たった二人の異郷者であるということに。


 「はぁ……はぁ……薩長……攘夷派……息子の仇……。」


 死の王と化した吉村は死なず。武士はその首刎ねられるまで倒れず。まさにそれを顕現していた。デュラハンの因子を埋め込まれた吉村を最早誰にも止められる筈がない。


 「はぁ……がはっ……吉村……最早正気には戻らぬか……。」


 いいや、一人いるのだ!怨嗟の念に囚われ、その誇り高き魂を捻じ曲げられた吉村を救わんとする武士が一人!千刃宗十郎である!クレーターとなった大地の中心で立ち上がる!血を流し、肉体は既に悲鳴をあげようともブシドーは不滅なのだ!

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