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黄金色の白騎士

 「いたぞ!あそこだ!!」


 前方に衛兵たち。街の警備にあたっていたのか、運悪く見つかってしまった。そう思っていた。数にして三名、問題なく処理できると判断したが、脚を止める。矢が飛んできたのだ。見回すと囲まれていた。


 「馬鹿な……この街の警備兵はここまで多くはなかったはず。」


 宗十郎は困惑した。しかしその疑問はすぐに解決する。衛兵の一人が板切れのものを耳に当てて連絡をとっている。あれは……カーチェに手渡された遠隔連絡装置の一種。

 即ち、この世界において伝令兵などという存在は不要なのだ。異変が起き次第、すぐに連絡連携をとれる体制。恐るべしはそれがニンジュツを極めたニンジャではなく、誰もが平等に扱えるという点。

 感じる。更に軍隊が集まってくることに。動けるオルヴェリンの軍隊を可能な限り動員させるつもりなのか。しかし宗十郎にはもう一つ懸念事項がある。それはハンゾーとの戦いで割り込んできた黒き矢を放ったものの存在。もしもあれがまた来れば……サムライブレードを持たぬ今の自分では確実に敵わない。明白であった。


 「くっ……!!」


 もっともそんな心配は傲慢な考えであるのかもしれない。まるで乱れ雨のように放たれる矢の数々。これを躱すのだけでも精一杯である。四方八方から飛んでくる矢全てに対応するのは流石に宗十郎も困難である。オルヴェリン軍は……確実に自分を殺すつもりで来ていると確信した。

 逃げた先、そこには重装騎士たちが待ち構えていた。数十名。かつて相手にしたニンジャ軍団と比べれば雀の涙ではある。


 「徒手空拳でどこまで可能かは分からぬが……いいだろう!いざ参らん!!」


 カラテスタイルの構えをとり、宗十郎は騎士たちに向けて走り出した。だがその拳は届かず。まるで落雷に打たれたかのような衝撃が宗十郎の身に走る。


 「な……に……?」


 街中、敵はあらゆる死角を利用し宗十郎を狙っていた。だが弓や種子島の類には警戒していた。射線に入らぬよう障害物を使っていた。だが此度は違う。まるで突如現れた力。稲妻が宗十郎を襲ったのだ。

 雷撃は宗十郎の神経を引き裂き、身動きを奪うのだ!


 「この異郷者は魔法を知らないというのは本当のようだな。」


 気づくと重装騎士が目の前にいた。


 「───不覚!」


 騎士の持つ大槌が宗十郎に直撃する。メキメキと音を立てて宗十郎の肉、骨を砕く。突然に雷撃に防御が間に合わず完全無防備の状態で渾身の一撃を食らったのだ。ブシドーとてひとたまりもない。幸いだったのはこれが大槌であったこと。刃物の類であれば胴体を切断されていたかもしれない。

 だがそれでもダメージは深刻。骨はきしみ、臓腑は深刻な負傷を抱えた。すぐさまブシドーを駆け巡らせ治療する。だが目の前の敵とも戦わなくてはならない。治療に専念するわけにもいかないのだ。


 「観念しろ異郷者、オルヴェリンにあらぬ疑いをかけ破滅へと誘うなど、騎士として許すわけにはならない。」

 「ブシドーは嘘をつかぬ!虚偽方便で誤魔化し生きるなど、ブシドーとして最も恥ずべき生き様よ!拙者たちは見たのだ、異なる世界にて、オルヴェリンの侵略を!」

 「まだ戯言を言うか!せめて死ぬ前に白状したらどうだ!そして詫びよ!我々への侮辱を、偽りの報告で国を滅びへと誘おうとしたことを!!」

 「断る!!例え命果てようとも!!ブシドーの誇りにかけて拙者は嘘偽りを申さぬ!!己の矜持、人生を否定しない!!それは死よりも耐え難き苦痛であり、屈辱なのだ!!」

 「ならば死ね!!」


 そうはいかぬ───身を翻し駆け抜けようとした瞬間、炸裂音。更に宗十郎に見慣れぬ一撃が入る。奥に控えていた騎士の構えた槍状の兵器。あれは種子島の一種であったようだ。否、種子島というには威力が大きすぎる。可搬型大砲の類。腹部が爆発する。砲弾が直撃したのだ。口から血反吐が溢れる。肋骨が折れて肺に突き刺さったのだ!胸に手を当て呼吸を整える。

 ニンジュツに近いが得体の知れない魔法という技術。そしてまだ見ぬオルヴェリン独自の兵器武装!宗十郎は未だ無知であった。この国の武装、兵法、あらゆることについて……!


 「……南無三!!」


 巨大な剣と斧を持った騎士が気づくと射程距離にいた。振り下ろされる一撃。間に合わぬ。素手では到底敵わぬ。見誤ったのだ、この国の武力、暴力を。

 宗十郎は目を瞑り唱える。せめて我が魂は、かの地へと。死してなおも、我が殿の傍にいることを祈った。


 ───ガコンッ!!


 苛烈な金属音。金属と金属が衝突する音である。本来であるならば宗十郎の首を切り落とし、胴体を引き裂く騎士の刃は、あらぬ方向へと吹き飛ばされ、地面に突き刺さる。

 宗十郎は薄ら目を開ける。何が起きたのか分からなかった。何故まだ自分は生きているのだ。


 「らしくないではないか宗十郎。敵を前にして目を瞑るなど。それがお前の言うブシドーというやつなのか?」


 見慣れた鎧姿であった。稲穂畑を彷彿させる風に揺れる黄金こがねの長髪。しかしながらその姿は威風堂々の佇まい。右手に握られた騎士剣は両側の重騎士が振り下ろした武器を容易く弾き飛ばしたのだ。その姿は見覚えがあった。忘れるはずがないのだ。カーチェ・フルブライト。宗十郎がこの世界で初めて出会った、紛れもない戦士である。

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