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魂の随伴者

 「それで、衛兵に捕まって身分が明らかになるまで牢にいたの……?衛兵に捕まる騎士など前代未聞だぞ……。」


 宗十郎から事の顛末を聞いてカーチェは呆れ返っていた。あれからあまりにも帰ってくるのが遅いので心配になって見に行ってみると、街が半壊、そして巨大な謎のオブジェが立っているではないか。意味の分からない事態だったが、なんとなく察しがついたカーチェはすぐに手引きをして、宗十郎が捕まっていることを知り、解放までに至ったのだ。


 「いや、此度は真にカーチェには迷惑をかけた。ブシドーとしてここにハラキリをすることで詫びを……。」

 「いや良いから!なんなのブシドーってことあるごとに自傷行為するのが流行りなのか!?」

 「む……寛大な処置、痛み入る。しかし厄介なのはハンゾーがこの世界にいること。カーチェは知らなかったのか?」

 「宗十郎と互角に渡り合う異郷者なんて、私の耳にすぐ入るはずだ。しかし本当にお前のいた世界ではお前のようなのがゴロゴロといるのだな……。」


 カーチェは宗十郎の言葉を半ば信用していなかった。宗十郎の戦闘能力は凄まじいものがあるが、それは宗十郎が特段優れた戦士であったからということ。彼の言う「自分のようなブシドーは山ほどいる」というのはただの謙虚な物言いに過ぎないと思っていた。

 しかしこうして半壊した街を見ると考えを改める。是非ともハンゾーとやらにはオルヴェリンの為に味方になってほしいが、消息不明であるため難しい。


 「まったく信じていなかったのかカーチェ。何ならば拙者よりも強い者がすぐそこにいるではないか。そうですよね師匠!」


 突然、話を振られた幽斎。不意打ちだったのか少し驚いたように身体を跳ねる。


 「むっ……そ、そうだな。だがシュウ。残念ながら儂はお主の期待には応えられぬ。見よ儂の今の姿を、何か違和感を感じぬか?」

 「師匠なら女性の姿となろうとも、関係などありませぬ!決して拙者に引けを……引けを……師匠?そういえばサムライブレードはどうしたのですか。」


 サムライブレードとはブシドーの魂。肌身離さず持ち歩くのが基本なのだ。しかし、今の幽斎のその腰にはサムライブレードは携えられていなかった。


 「この世界に来た時からなかったのだ。サムライブレードはブシドーの魂。魂なきブシドーは万全に力を振るえぬ。女々しい言い訳に聞こえるかもしれぬが、魔王に儂が敗北をしたのも、それが原因とも言える。」


 女体化し、魂までも失った状態。今の幽斎は飛車角落ちという状態。万全であればそもそも宗十郎が勝てる相手ではないのだ。


 「師匠……差し支えなければ拙者のサムライブレードを。」

 「馬鹿者ッ!」


 幽斎はサムライブレードを渡そうとする宗十郎の頬に平手打ちをした。


 「サムライブレードとはブシドーの魂!それを他者に軽々と譲渡しようとするとは何事か!恥を知れシュウ!貴様、儂の居ぬ間に誉れを忘れたか!!」

 「し、師匠……!申し訳ありませぬ!師匠のことを想い……女の身体になり生き恥を晒し、魂までも失った師匠のことを思うと拙者は平静でいられず……拙者誉れをまた……!」

 「分かれば良い、すまぬなシュウよ。お主の気持ちは伝わっている。だがその……生き恥というのは気にしていないのであまり考えないでくれ。」


 内心、幽斎は考えていた。まずは今のこの姿、生き恥と感じていないことを宗十郎に理解してもらわなくてはならないと。少しずつ……少しずつ今の自分をさらけ出していきいずれは……そう考えているのだ。


 「ご安心を師匠!その件ですが、実は此度、魔王討伐の命を頂きました!」


 街を半壊させて捕まり、解放されるにあたって宗十郎は五代表より本件を不問にすること条件に魔王討伐を言い渡されたのだ!魔王についてはカーチェより報告を聞いていたため、早急に対策を練る必要があると考えた!


 「魔王討伐って……そもそも魔王はどこにいるの、ユウさんは知ってる?」

 「……知っている。だが、行く方法がない。魔王城は絶海の孤島。あの時、儂は泳いでいったが……その結果、結界のようなものが敷かれたのだ。最早、難攻不落の要塞。」

 「その点も問題はない!此度、五代表より船乗りの異郷者を見つけたらしく、その者の力を借りれば問題はないということだ!」


 その異郷者とは既に手筈が済んでおり、この自宅に向かってきているというのだ。ノック音がする。噂をすればなんとやらだ。宗十郎は意気揚々とドアを開けた。


 「待ち望んでいたぞ船乗りよ!難攻不落、荒波を渡るというのだ、さぞや……さぞ……や?」


 宗十郎がイメージしていたのはガタイの良い筋肉質の水夫であった。船乗りというのは皆、そういうものであったからだ!だが目の前にいる異郷者は水夫どころか……自分よりも一回り背の低い少年であった。


 「僕がその伝説の船乗りだ。お前が噂の異郷者なんだろ?ふーん……まぁ確かにそれなりに頼りになりそうじゃん。」


 品定めするように少年はジロジロと宗十郎を見る。宗十郎もまたその少年を観察していた。外見に惑わされるのは三流の証。小さな身体とは言え強いブシドーを秘めている者はたくさんいるのだ!いるのだ……が……!


 「師匠……拙者は未熟であります。拙者のブシドーではどうしても……この者から猛者の匂いを何一つ感じぬ……。」

 「……シュウよ……儂の目から見ても、そやつは……。」

 「!!すげぇ、ゆうゆうがいるじゃん!ねぇサイン頂戴!妹がファンなんだ!!」


 少年は困惑する宗十郎を押しのけ幽斎に押しかける。目を輝かせサインを懇願するその姿はどう見てもただの子供にしか見えなかった!


 「あ、あはは……あたしのファンだったの?嬉しいなぁ。ねぇ僕?サインならいつだって書いてあげるけど、一ついいかな?僕は本当にその、船乗りなの……?船乗りって言ったらもっと立派な男性のイメージがあるんだけど……。」


 即座に営業アイドルモードへと切り替える幽斎!宗十郎の冷たい目線を感じるが、幽斎は目配せをする!これは仕方ないことなのだからと!

 少年は幽斎に問われ、口ごもるがやがて重い口を開けた。


 「じ、実は僕はまだ真の力を取り戻していないんだ。そのことでお願いがあって……。」


 聞くに少年は船乗りの命とも言える操舵輪そうだりんを失ってしまったのだという!それさえあれば本来の力を取り戻し、いかなる荒波であろうと、いかなる困難であろうと打ち破る、不可能を可能にしてみせる英雄となれると主張するのだ!眉唾であった!


 「操舵輪って……船のハンドルみたいな奴か。そんなもの代用が効くのではないか?大体、それで力を失うのもおかしい。」


 カーチェは当然、そのことに疑問を抱いたのだ。だが宗十郎と幽斎は違う。少年の言うことを信用した。


 「否、カーチェよ。この者が言う事、それ即ちブシドーにとってサムライブレードならば話は別。確かにサムライブレードをなくしてブシドーの力は圧倒的に劣るのだ。」

 「それにさぁ、子供に大切なものをなくしたから手伝ってほしいなんて言われたら、助けるのが人情って奴じゃん?」


 かくして操舵輪を求めて宗十郎らは火山へと向かった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 師匠だけでなくライバルまでこの世界に? ハンゾーも強い!すごいな元の世界。 登場人物が増えて賑やかになってきましたね〜! 宗十郎がいない時の師匠、ガールズトークに花を咲かせたりしてイキイ…
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