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黒き王

 「戯けたこと、拙者の介錯ブレードが未成熟だっただけのこと。今一度、まみえんと言うのならば、ここで再度介錯致し申す!」


 宗十郎はサムライブレードを抜き、構える。ブシドーとニンジャ、出会ったのならばそれは必然的な化学反応である。二人の闘気がぶつかり、空間は緊張感に支配されるのだ!


 「その意気やよし、ならばそれに応えよう。だが侮るなよ宗十郎!此度のそれがしはあの時と違う!コマンドーとしてではなく、ニンジャとしてお主を殺害至らしめよう!この意味、とくとその身で受けるが良い!!」


 突如巻き起こるは煙幕!そして風が吹き晴れた時、そこには千を超える無数のハンゾーがいた!ニンジュツ・シルエットミラージュである!その姿は全てが実体を持ち、群体であり個であるのだ!


 「あの時の再現というわけか、面白い!だがハンゾーよ、舐めるなよ!ブシドーに同じ手など通じはしないのだ!」


 即座にサムライブレードにブシドーをエンチャント!宗十郎に流れるブシドーがサムライブレードのナノマシンと共振し剥離!サムライブレード周辺に漂い始める。

 そのナノマシンをブシドーにより制御し形態变化!サムライブレード長射程モードである!刀身は数倍に伸びて、宗十郎の身長を優に超える、異様な武器と化したのだ!


 「受けよハンゾー!ブシドー殺法!旋風の如し!!」


 振り回されたサムライブレードは斬撃の嵐と化した!周囲まるごと切断切断切断!建物ごと引き裂き、無数のハンゾーをまとめて引き裂く!


 「なるほど、数で挑むのは無策ということか、天晴である宗十郎!ならばニンジャの本懐見せてやろう!印!」


 ハンゾーは何かしらのハンドサインを結んでいた!それは召喚術式の展開式である!響き渡る地響き、地震だろうか、否!ハンゾーによるニンジュツの力だ!

 地面が隆起し盛り上がっていく!まるで生き物のようにうねりあげて形作られていくのだ!これぞ土遁スタイル!脈動的に組み込まれた土壌は一つの形へと作り出された!周囲の建造物を見下ろす巨大なブッダである!千手観音!無数の手には無数の武器!


 「これぞ万象天花ばんしょうてんげ!さぁさぁ宗十郎よ!我が至高、どう受ける!?」

 「無論!ブシドーならば真っ向勝負!このサムライブレードに全てを懸けるのみよ!」

 「よくぞ言った!ではいざ参らん!!」


 ハンゾーのニンジャカラテが宗十郎へと放たれる。それを迎え撃つかのように宗十郎はサムライブレードを振り下ろした!衝突するブシドーとニンジャ!その力の余波は空間に衝撃波として巻き起こり周囲一体を吹き飛ばす!均衡する互いのエネルギーは紫電となりて広がるのだ!


 「ぬぅぅ!短期間、少し見ぬ間とは言え腕をあげたな宗十郎よ!」

 「応とも!ブシドー、三日会わざれば刮目かつもくして見よ!日々進化を続けるブシドーを昨日のそれと同じと見ぬことだ!!」


 だがそれはハンゾーも同じことであった!打ち合うことで感じるハンゾーの実力は、あの時、あの戦場で渡り合ったものとは遥かに違う!それはニンジャとしての戦い方だけではない!単純に武芸者として高度な実力に位置していたのだ!


 「抜刀!サムライブレードは、お主だけの専売特許と思うなかれ!!」


 ハンゾーは腰のニンジャブレードを引き抜く!ニンジャブレードとサムライブレード、名前こそは違うものの、その性質は同一のものである!ニンジャのニンジュツに呼応し変化を遂げるマルチウェポンなのだ!


 「ここからが本当のニンジャ戦だ宗十郎よ!足掻くが良い!大車輪!!」


 巨大化したニンジャブレードを投擲!大回転し宗十郎に向けて放たれるのだ!しかしただ高速回転する刃物ではない、先端に触れる度に秘められたニンジュツが化学的反応を引き起こし、膨張!大爆発を引き起こすのだ!暴竜の如く爆発と爆風を撒き散らし、宗十郎へと殺意が向けられる!

 ニンジャブレードを宗十郎はサムライブレードで迎え討つ!だがその瞬間起こるのはやはり大爆発!思わずたじろぎ、後退をしてしまう。だが凌いだ!爆発の煙幕が晴れていく!


 「温いぞ宗十郎!後ろを見よ!!」

 「なにっ!!?」


 弾いたニンジャブレードの回転はまだ生きていたのだ!弾かれあらぬ方向へ飛んでいったニンジャブレードはまるでブーメランのように戻ってくる!当然である!ニンジャブレードはハンゾーのニンジュツがエンチャントされているのだから、通常とはありえぬ挙動で敵を狙い撃つのは自明の理であった!

 弾いても弾いても、永遠と標的を切り裂くまで狙い続ける、それこそニンジュツ・大車輪!受け止めようものならば大爆発を引き起こし、火傷必至!


 「ならば、ハンゾー!貴様を直接叩くのみよ!」


 加速する宗十郎!その速度は投擲されたニンジャブレードよりも速く、瞬間的であった。いくらニンジャが投擲した得物であろうとも、それは既にニンジャの手を離れたもの。故にニンジュツが常時込められているわけではない。ブシドーの全力疾走に追いつけないのは当然なのだ!


 「大車輪破れたり!覚悟せよハンゾー!」

 「戯け者が!この程度で我がニンジュツ破ったなどと傲慢千万!」


 吹き上がるは灼熱の炎。ニンジュツ火遁フレイムである!ブシドーにこのような児戯は通じないことは百も承知の筈。ならば何故ハンゾーはこのようなことをしたのか……皆目見当もつかぬ宗十郎であったが、その答えはすぐにわかった。

 背中から向かってくる大車輪を躱す。正面にいるのはハンゾー。その大車輪を受け止めるかのようにハンゾーに直撃するのだ!事故か……?否!ニンジャに限ってそのようなことは決してないのだ!


 「これぞ大車輪の真なる姿よ!宗十郎!この事態はお主が招いたのだ!」


 ニンジャブレード大車輪とハンゾーが一体化したのだ!これぞニンジャブレードの究極系!ニンジャブレードに込められたニンジュツが性質的変化を遂げて加速が限界を迎えた時、トンネル効果により人体と融合!一体化することで直接、ニンジャブレードにニンジュツを流し込み続けることができ、殺人的な加速度と力を放出する!それはまるで暴走特急のようである!

 更に回転エネルギーが加わり、その切っ先は通常の剣筋よりも遥かに重く鋭いものとなっていた!名付けるのならばハンゾー大車輪である!

 周囲を巻き込み崩れ落ちていく高層建造物たち!触れるもの全てを爆破し吹き飛ばす大車輪により、その多くの建物は損壊しているのだ!

 粉砕、粉砕、粉砕!距離を取る宗十郎を執拗に追い詰め、確実に破壊し尽くす、最早暴走特急は目的を為すまで止まらぬのだ!

 だがブシドー、いつまでも逃げるわけではない、崩れ落ちていく建物を宗十郎は掴んだ!


 「いいだろうハンゾー!ならばここからは真っ向勝負!ブシドーとニンジャ!どちらが優れるかの正面突破よ!!」


 数十メートルはあるであろう巨大建造物に宗十郎はブシドーを流し込む!サムライブレードではないこの国の建造物はたちまちブシドーに耐えきれず崩壊を始めるが些細な問題である!これよりの数秒間だけ持ってくれれば良いのだから。

 宗十郎はその膂力により、掴んだ建造物を持ち上げハンゾーに向けて叩き込むのだ!ただの建造物構造物ではない!ブシドーを流し込まれたそれは、巨大なブシドー塊として赤黒い紫電を帯びている!


 しかしハンゾー、一歩も引かずその巨大建造物ごと宗十郎へと直進する!巨大な掘削機のように向かってくる巨大建造物を破壊!連鎖的に爆破崩壊していく建造物!全てを破壊しつくし宗十郎のもとへと辿り着く!

 覚悟を決めた宗十郎はサムライブレードにブシドーの渾身をこめる。次の一撃で全てが決まる。お互いがそう確信したのだ!


 ■■■■■■■■■■


 ■■■ ■   ■■■。


 ───強い殺気。異様な気配。ブシドーでもニンジュツでもない。まるで漆黒の闇のような重圧。二人は瞬時にその発生源に同時に振り向く。見えたのだ。黒き閃光が。破滅のエネルギー体。ブシドーの動体視力でも何とか補足できるような代物。それは放たれた矢であった。


 宗十郎とハンゾーは反射的にその矢を躱すために、お互い距離をとる。一瞬の判断だった。数コンマでも遅れれば消滅免れぬ地獄の一撃。目の前に轟音とともに一撃迸ほとばしる。その後には未だ黒き矢の残響が残り、空間が断絶していた。


 「今のは……その反応からしてお主の手引きではないようだなハンゾー。」

 「それはこちらとしても同意。発射元はこの街の中央、玉座であるか。なるほど、見よ宗十郎。我々の周りを。」


 宗十郎は見渡す。半壊した街。瓦礫の山の数々。騒ぎを聞きつけやってきた人々たち。


 「この世界はそれがしらのいた世界とはまるで違うもの。少々、暴れすぎたようだ。此度はこれに手打ちとしよう。」

 「……あの黒き矢は警告、ということか。委細承知。その手打ち受けよう。」

 「宗十郎よ、このブッダはお土産だ、受け取るが良い!これにて御免!」


 煙幕が巻き起こる。煙が晴れるとそこにはハンゾーの姿が消えていた。残されたのは、ハンゾーが作り出した巨大なブッダのみ。


 そして未だにこの空間に残照として残る黒き矢の力。似ている。この世界でブシドーやニンジュツの全力を行使した時に起こる、空間の断絶現象と。即ち、この世界が異郷の力に耐えきれず、拒否反応を示している。

 ───即ち、黒き矢の主は異郷者。まだ見ぬ異郷者の一撃と宗十郎は見た。


 「恐ろしき弓取り手よ。聞きしに勝るは与一の一撃か。」


 その苛烈でありながら華麗な矢の威力に惚れ惚れしながら、宗十郎は遠く玉座を見据えていた。


 「貴様がこの騒ぎの中心か!大人しくしろ!」

 「ぬぅ!?」


 感銘に浸っていたそのときであった!衛兵たちに取り囲まれている!嗚呼何ということか!宗十郎はそのまま為す術がなく、衛兵たちに連れ去られていくのだった!


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