レオの過去①
僕はこの世界を壊したかった。
イタいことを言っているのではなく、本当に。
僕の親はクズだった。父は国王なのにも関わらず、酒に溺れ、後宮に気に入った女を力ずくでも連れてくる。その一人が僕の母親だった。恋人がいたにも関わらず、市井で父親に見初められてしまい、無理やり後宮入り。僕を産んだ後は病んで自殺をした。
そんな僕は奇跡的に数ある王子の中でも唯一父親の氷使いの魔法力を受け継いだが、この氷使いのせいでゴミみたいな国王の血を引いているのだとまざまざと感じる。そのせいで、正妃の息子である第一王子側から何度も命を狙われた。
僕と同じような境遇の弟がいて、そいつだけは僕に懐いていた。
「兄様」
僕の歩みが早かったのか小走りでついてくるこいつの名前はシリル。僕と違い母親は生きているがこいつに全く興味なし。育児放棄をした金と地位目当てで後宮入りした娼婦だ。
そんな親を持っているのは僕たちだけで他はみんな貴族様だ。他人なんかどうでもよかったが、同じ境遇にあるシリルを放っておけなくて僕達は身を寄せ合い、メイドたちもどこかの貴族について派閥争いに夢中なので僕達のことはお構いなし。食事の用意もされないため、僕がシリルの分もキッチンから盗んできていた。
すると、シリルがじーっとどこか見ていることに気が付く。僕達が食べている庭園の離れた場所では王子たちは美味しそうなサンドイッチやクッキーなど、軽食が用意されたお茶会を開いていた。
シリルはそんな王子たちを恨めしそうに睨みながら僕がとってきたパンを食べている。
やめるよう言ったが、そんな視線に気がついたのか、兄弟とはとても呼べない奴らがふんぞり返ってきた。
「おい!何見てんだよ盗人が!!」
そう言いながら第一王子であるボルテールを筆頭に近づいてきてシリルと僕が食べていたパンを投げて踏んだ。かなりの人数いるシェフの目をかいくぐるのにどれだけ苦労すると思ってるんだこの豚…と思ったが、こいつらと表立って喧嘩しても生産性がない。むしろその後大人たちから攻撃されるのは僕達だからだ。
無視して行こう、とシリルに声をかけ手を繋いで別の場所に移動しようとしたが、振り払ってシリルはボルテールたちに向かっていった。
突然のレオの過去です…短く1話でまとめようとしましたが無理でした!!