レオの過去⑤
欲をいえば最後にシリルに会いたかったな。最初はあんなに鬱陶しかったが、唯一の家族であり兄弟だ。この国を変えてくれたらいいなんて多くは望まないから、せめてシリルだけはこんなクソな国から出てどこかで穏やかに暮らしてほしい。
「第8王子、レオナルド・アルヴィエは第1王子である我が子、ボルテール・アルヴィエに手を出した。たびたび母親がいない弟に優しく手を差し伸べるボルテールに暴力を振っていた。
それでも許す寛大な心を持ったボルテールの助言で何度か反省のチャンスを与えたが、本人は更生せず、急ではあるがこの国の未来のためにも本日処刑することを決定した。」
よくそんな嘘をベラベラと…。呆れるな。
結局こいつらの劇場の中での引き立て役にしかなれなかったな。神様なんて信じてないけど来世では金も地位もいらないから普通の、ごく普通の人生を送らせてくれ。
覚悟を決め、目を瞑る。国王の命令により兵士たちが大剣を振り翳した瞬間。
「兄様あああああ!」
シリルが僕を呼ぶ声が聞こえたと思った瞬間、白い光に包まれたと同時に吹雪に近い冷たい風が広場を襲う。思わず目を瞑ったが、風が収まったのを感じ目を開けると、そこには一面氷の世界が広がっていた。驚いた顔の国王たちはその姿のまま凍り、僕を処刑するはずだった兵士たちは剣をふりかざしたまま凍っている。
「兄様、大丈夫!?」
「シリル…?」
まさか、シリルも氷魔法つかいを受け継いでいたのか?そんな兆しは今まで見えなかったが…。
器用に魔法をつかい、凍らせた手錠を石で割り壊す。
「ゲホっ…」
自由になった手で倒れ込むシリルを支える。すると、シリルの口からは血が出てきた。先ほどまで元気に見えたが、街を凍らせたんだ。相当な魔力を使用し、こんな小さい体に耐えられるわけがない。
「兄様を助けたい、と思ったら力が湧いてきて…思うがままに使っちゃった…
でも、僕兄様を助けられた…よね…?」
力なく笑うシリルを思わず抱きしめる。
「ごめん、ごめんな…」
「謝らないで。兄様にいつも助けられてた…。ようやく役に立てて嬉しいんだ…」
この勢いだと最低でも城は凍ってるだろう。医務室はなくとも、何処か他の村に行けば医師に診てもらえる、そう思いシリルを背負い隣町へつながる森へ走る。




