第1話
「あなただあれ?」
「…」
うさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら目の前にいる男の子にそう尋ねる。
私の名前はレティシア・ドゥシー。このドゥシー辺境伯の一人娘である。
そんな私の目の前に突然現れたのは、日光の下にいると水色が透けるような綺麗なシルバーの髪の毛をした男の子だ。
でも髪の毛の状態はいいのに顔や体には傷があるし、服もボロボロだ。
「ねえ、あなたは誰なの?ここら辺の子?」
「…くれ」
「えっ?」
「何か…食べ物をくれ…」
「! うん!いいよ!」
私は嬉しかった。辺境伯の父は強面でその娘も屈強だと思われており、また、都会とも離れているため貴族が少なく同世代の子供の友人はほぼいなかった。
そのため嬉しくなり、少年の手を取り見つからないように自室へ連れて行った。
父は母の忘れ形見となった母と瓜二つの私に過保護で交友関係にも口を出してくる。言い方悪いけど汚い少年を家に連れてきてると知られたらまた引き離されてしまう、直感的にそう思った。
「今持ってくるね、待ってて!」
そう言い、専属のシェフがいる台所に向かいおやつをねだる。
「今日はね、うさちゃんとお茶会をするからたくさんちょうだい!」
「ふふ、お嬢様は可愛らしいですねえ、たくさん入れましたのでお部屋まで運びましょうね。」
「だ、だめ!誰もはいっちゃだめ!貸して!」
そう言うとポカンとした表情のシェフを置いてけぼりにし、マドレーヌとクッキーが入った皿を奪い部屋に戻った。
「おまたせ!」
そう言うや否やお皿は手元から離れ、少年がマドレーヌにかぶりついていた。
「ねえあなたのお名前は?どうしてお庭に立っていたの?うちの警護兵をどうやって潜り抜けたの?どこの子?」
「…うるさい」
食べながらそう言うと私の質問には全く答えず睨みながらそんな風に言う。
「レオナルドっていうの?」
「!
なんでわかったんだ?」