表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第一話 告白は突然に

 入学式も無事終わり、私は自分の教室へと戻っていく。体育館にいくまで、着いてから、終わってからと、くだらない男たちから告白されたのは言うまでもない。


 やっと終わったというのに、クラスの男子どもの視線といったら……醜すぎるわよ。まるで飢えたブタのように見えるわ。


「入学式、お疲れ様ですぅ〜。この一年間、担任をする宮原佳奈といいます。よろしくねぇ〜」


 田舎だからなのか、教師の言葉に重みがない。まるで友だち感覚に思える。でも、肩が凝らなくていいと私はポジティブに考えた。


 ──ガラガラ。


「はぁ、はぁ、神城龍二、なんとか間に合いましたっ!」

「あのぉ〜、残念ながら……完全に遅刻なんですよぉ」

「甘いですよ、先生。この教室の時計は……時差で狂っているのです」


 ドヤ顔を決める龍二に私は目が点となった。いや、驚いたのはそこではない。運命のように彼と同じクラスだったことだ。


 よく分からない感情が全身を巡り、私の視線を龍二から逸らしてしまう。こんなことは、生まれて初めての経験。どうしていいのか、分からなかった。


「もぅ、そんなバカなこと言ってないで、自分の席に座ってくださぃ」

「わっかりました〜。って、僕の席はっと……」


 私は机に伏せ龍二の視線から逃げようとする。

 なぜ、逃げるのか。なぜ……だって私には魔性の力があり、男なんて道具程度の存在だったのに。


 分からない、全然、分からない。考え込んでいると、龍二らしき足音が聞こえてくる。一歩、また一歩と……。このまま私の席を通過して欲しい。そう願いを込めたのに。


「あれ……。キミはひょっとして、神楽耶さん、ですよね? その艶やかな黒い髪、このような美しい人は他にいはいませんから」

「ひ、人違いです。私は月姫神楽耶なる人ではございません」


 どうして嘘をついたんだろ。分からない、分からないけど、この男は私をおかしくする存在。だって、今の私は……心がこんなにも激しい音を奏でてるのよ。


 決めたわ、そうよ、私はこの男と関わらないようにする。そうでないと私は……。


「か〜ぐやさんっ」

「ひゃっ!? な、何をするんですかっ」


 いきなり耳元で囁くのは反則です。思わず顔をあげてしまいましたよ。


「やっぱり、神楽耶さんじゃないですか〜。同じクラスだったんですねっ」

「むぅ……。私はアナタなんて、知りま……」


 えっ、何、いきなり私の両肩を掴むだなんて。しかも、なんなのよ、そんの真剣な眼差しは……。だめ、収まってよ私の心音、これ以上大きくならないでよ。


「え〜、コホン。神楽耶さん、ひとめぼれです。僕とお付き合いしてください。お願いします」

「は、はい……」


 私は今なんて言いましたか。まさか、『はい』だなんて言うわけが……。違う、違うのよ、この龍二が真剣に頭を下げるから、つい、同調だけなのよ。


 落ち着きなさい神楽耶。いつものように、男どもをゴミ扱いするのと同じ対応をするのよ。私にとって男など道端に生える雑草と同じなんだから。


「あ、これはそうではなくて、その、あの……」

「ありがとうございますっ。この龍二、命を賭けて神楽耶さんに尽くしますので」


 ずるい、ずるいですわ。私の両手をいきなりつから強く掴んで……。これじゃ、もう、私どうしたらいいのか、分からないよ。


 何かの爆発音が聞こえたのは覚えてる。床が目の前に近づいて、そこから私の記憶は完全に失われてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ