表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文月往人の透明な彼女  作者: 染井吉野
1二つのクリスタル
2/32

b.モンスターハンターとジュエリードール

 今から五十五年前、日本をある災害が襲った。歴史の教科書にも載っている惨事で、「大侵攻」と呼ばれている。


 ある日東京に、RPGから出てきたかのようなモンスターの大群が現れたのだ。どこから来たのかは分からない。空中に現れた魔法陣が開き、姿を現したと言われている。目的は食事に思えた。狙われたのは人間である。


 東京は一日で陥落した。地平線が見えるほど建物は破壊し尽くされ、地面が赤くなるほど人々は殺され尽くした。あらゆる現代兵器はほとんど意味をなさなかった。このまま日本は終わってしまうのかと思われた時、一人の救世主が現れた。


 それが、英雄と呼ばれる存在である。秘密基地を名乗る集団が作り上げたとされる、世界初にして未だに唯一の、心を持った人型のロボットだ。


 英雄は一日かけてモンスターの大半を殺し尽くし、残りをどこかへ帰還させることに成功した。けれどもこれを皮切りに、モンスターは時たま世界中に現れるようになった。英雄は増え続けるモンスターと戦う役目を課され、それに従って、世界はロボット技術や兵器研究のスピードを上げていった。


 そして生まれたのが、モンスターハンターと呼ばれる英雄の遺産を扱う職業につく人間、そして、ジュエリードールと呼ばれる人形である。


 ジュエリードールは、大侵攻跡地でのみ発掘されるモンスターと人間の血液で出来た宝石、トウキョウシリーズを胸に入れることで稼働する。瞳と髪の毛に宝石の色を持つ、非常に美しい存在だ。だが英雄とは違い、心はない。愛玩人形として発生した彼らだったが、ここ数十年で全く新しい価値が定着しつつある。


 人間の新しい肉体という価値だ。


 今から三十年前のことだ。ジュエリードールの宝石に人間の脳のデータを移すことができるようになった。これは永続的な移動、一時的な移動を選ぶことができる。今では金さえ積めば、人間は好きにジュエリードールの体を手に入れることが出来るようになった。人類の大半は自らの生まれ持った体を捨て、美しく、強く、長命な存在になりつつある。そしてロボット技術の研究が進み、ジュエリードールは歴史を遡るように、英雄じみた戦闘マシーンへと変化を続けている。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ