なろう作品あるあるに物申す
割と広く受け入れられてるけど、ちょっと調べたり考えるとあれ?っとなってしまうところに物申してみました。
馬車
なろう世界を描いた作品あるある、馬車の改良。
なろう異世界作品を何作か読んだ人の中に、馬車にサスペンションを導入する作品を見たことがない人は少ないのではないでしょうか。
作品内の転生者によるサスペンションの導入について特に文句があるわけではないです。スプリングを使ったサスペンションと違って板バネを使ったサスペンションは発想さえあれば出来るのではないでしょうか。問題は導入前の馬車の描写にあります。
サスペンションが実装される前の馬車に座席が設置されている記述を見たことがありませんか。座席付きの箱に車輪を付けたものを馬車として扱っているわけですね。
これ史実だとかなり昔なんです。具体的には14世紀には馬車は「座席付きの箱に車輪を付けたもの」から一歩進んで「座席を吊り下げた箱に車輪を付けたもの」が登場します。
サスペンションの発明に伴い座席がまた設置されるようになりましたが、それまでは馬車の座席は懸架式が主流だったんです。インターネット検索で出てくる馬車はサスペンション開発後の馬車なので懸架式の馬車と言うのは殆どありませんが、なろう作品における馬車の座席は間違いなく懸架式のはずです。
サスペンション導入前で懸架式ですない時代というと12世紀とかになってしまうので、なろう作品だとありがちな写実的な肖像画なんて描けない時代です。このくらいの時代の装飾のメインは毛皮で、宝石を加工する技術も無ければ冶金技術も未発達ですから宝石や貴金属の装飾を使った豪華絢爛な衣装なんてありません。
つまり、サスの導入がされてない馬車が描写されるなろう作品というのは馬車の発達が著しく遅れているわけです。
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科学
なろう世界を描いた作品あるある、魔法があるから科学が発達しない。
そんなことありますかね。
なろう世界でも水車や風車はよく描写されます。それがあるなら魔法の力から動力を得ようという発想は必ず出てくるはずです。魔法があれば動力を作るのは簡単ですね。効率化の研究は進むと思いますが、効率が悪かろうと動力を得られるならば、それを活用する方法を人は考えます。
それは例えば高所への荷揚げに使ったりだとか、それこそ車輪を回して移動に使ったりする方法も考えられていくでしょう。当然便利なので人はもっと使おうとしていきます。となればどこかのタイミングで魔法の力に頼らない動力を作ろうと考えるのは必然です。魔法で風を生み出すというのはどのなろう世界でも見られますから、蒸気機関よりは蒸気タービンの方が先に研究されそうですね。
動力が発展するということは、動力機関の製造の為にも、使う為にも様々な分野の発展が急がれるのは間違いありません。科学の発展というのは正にそれだと思います。科学が発達しないということは考えづらいですね。
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火薬と銃
なろう世界を描いた作品あるある、魔法があるから銃が無い。
そんなことありますかね。
硝石そのものが見つかっていない世界ならば、火薬そのものが発達しない為に銃器が生まれないという可能性はありま…せん。別に鉱山が見つからなくとも湿潤環境でも人が生活していればトイレからとれるんですから。まぁ科学的に存在しないとまで言われれば見つかりませんが。
しかしここはあえて10000歩譲って火薬が見つからなかったとしましょう。でも銃が開発されない可能性があるのでしょうか。古代中国の人々は火薬の密閉空間で爆発する性質から火槍を作り上げたわけです。異世界で魔法を使って手元で起こした非殺傷性の小さな爆発で殺傷性の攻撃を得る手段を考えない可能性があるのでしょうか。ましてやなろう世界だとモンスターという明確な脅威があるわけですから攻撃手段として新兵器の模索は常に行われているはずです。
たまに銃なんてモンスターに効かないというのもたまに見ますね、これも変な話です。現代の銃は効率化が凄まじいので目的に合わせて威力を加減しているからこそ、有名な銃器が低威力なだけです。初期の銃器であるマスケット銃は弾が丸いのと黒色火薬を使っていたために現代の散弾銃(スラッグ弾)並みの威力がありました。つまりコンクリートブロック程度なら簡単に打ち抜く威力があります。弓矢を風の魔力で包んで遠くまでうんちゃらかんちゃらやるならマスケット銃で同じことするべきでしょうね。
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通信
なろう世界を描いた作品あるある、連絡手段が馬だけ。
そんなことありますかね。
なろう作品だと、一例として王都からの緊急の連絡が早馬で届いたという場面が描かれてますよね。戦場において左翼や右翼に伝令飛ばしたりもありますね。まぁ伝令くらいならわからなくも無いですが緊急の連絡というのを、ある程度発達した文明で馬を使って伝えるというのはどうなんでしょうか。
大昔の長距離の情報伝達と言えば狼煙です。なろう作品に限らず単純な合図に狼煙が使われているのはよく見ます。あとは馬や人を使って直接手紙を届けたりというものばかりですよね。しかしそこから急に短波通信に飛ぶ作品が本当に多いです。転生した人によって魔力を電波みたいに使った電話がすぐに出来ちゃったりしますね。
まぁまぁまぁ、それはいいです。ご都合主義万歳、転生者がすごい物を作っちゃうことについて何か言う必要はありません。
しかし異世界に住む人々が長距離や短距離の命令伝達に延々と馬や人をつかった直接的な連絡手段しか使っていないと思わしき描写はあまりにもおかしい。史実では電気の普及前には馬や人を使った直接的な方法以外に長距離では腕木通信、短距離では手旗信号が使われていました。これらの視覚による通信は馬や人を使った伝令とは比較にならないほど高速です。
ましてや異世界では魔法により強い光源を作れますから、実質的に信号灯を持っているのと同じです。その時点で短距離の通信については手旗ではなく信号灯を使うはずですし、その発達は史実よりも速くなること間違いなしです。モールス信号のような点滅を用いたメッセージの送信手段は間違いなく開発され、近距離通信においては多用されているはずです。
長距離通信においてはもしかしたら腕木通信(10キロ間隔)に必要な拠点を町と町の間に作れない、作るのにコストがかかるという理由で発達が遅れる可能性はあります。とはいえ最低限国境と首都の間にはどんなコストを払ってでも高速通信の為に設置すると思いますけどね。ナポレオンもイタリア支配のためにアルプス山脈を越える腕木通信設備を作らせてます。高速通信と言うのはそれだけの価値があります。
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爆発
なろう世界作品あるある、すごい爆発で敵を倒す。
爆発と言えば爆弾ですね。爆弾は簡単に人を殺傷する恐ろしい物です。が、殆どの爆弾は衝撃波で人を殺傷しているわけではありません。人を殺傷するほどの衝撃波を生み出すにはかなりのエネルギーが必要です。爆発の衝撃波だけで人を殺傷する兵器というのは威力が過剰な原子力爆弾や水素爆弾を除けば、通常兵器だと気化爆弾くらいです。
皆さんは徹甲弾と榴弾の違いをご存じですか?
徹甲弾は発射で得た運動エネルギーによって目標を破壊します。そして榴弾は爆発エネルギーで目標を破壊している…わけではありません。榴弾は着弾した際に内部の火薬が炸裂して弾核を破砕して、破砕した弾核の欠片が高速で広範囲に飛び散ることで広い範囲に攻撃しています。爆発による衝撃波だけの攻撃と言うのは距離減衰が高すぎるため、実用化しようとしたら密度が低い低威力の巨大な爆薬の塊を投下したのと同様の効果を持つ気化爆弾くらいしかないわけですね。
逆に言えば弾核を与えることで非殺傷性の爆発を殺傷性のある攻撃に変えることができるわけです。
もし爆発する魔法でTUEEEEするなろう小説を書く方がいるなら、是非とも爆発の中心に土魔法で弾核を構成する描写を足してみてください。
前作の土魔法の可能性を書きながらも思ったんですが、魔法があっても近代までは進歩しそうですね。病気を回復魔法で治せる世界だとどうしても化学分野が遅れて足を引っ張りそうではあります。