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第8話 ーー ダーリンジ街 ーー

皆様はGWをいかがお過ごしですか?


外出自粛は大変だとは存じますが、これを期に小説等どうでしょうか。

私も日頃は中々読まないハードカバーの本を買ってみました。

内容もとても面白くて、オススメなのですが。

手指が子供サイズの為に両手でも上手く支えられずに本が勝手に閉まることが難点です。

仕方ないので机に置いて読んでいるのですが、高さが合わずに腰と首が痛いです。

今後は電子書籍で買う事にします。



「アランさん!着きましたよ!」


ウトウトといつの間にか寝ていた頭にルカさんの声が入ってきた。

思わず驚いた僕は肩を揺らして顔を上げると、ルカさんの満面の笑みが見下ろしていた。


「あ!驚かせてしまってごめんなさい。ダーリンジ街に入りましたので、声をかけたんですけど…おはようございます?」


「お、おはようございます?」


寝ぼけ眼に映ったのは大きなレンガ調の天井。

すぐに途絶えて空の蒼さが目に入ったが、如何やら何かの建物から荷馬車ごと出てきた様だ。


「ふふふ。良く眠れましたか?ぐっすり眠っていたので起きるまでと声をかけずにいたんですけど、街についちゃいましたので。」


「うわ!すみません!」


慌てて姿勢を正すと建物達が視界に広がった。


「うわぁ!」


そこには白い土壁に勾配が急な鼠色の屋根が乗っかた家々がいくつも並んでいた。

同じ色の壁と屋根だが、その家によって玄関や窓の場所や形、階段やドーマーが有るか無いか等、其々個性が違っているが基本の配色が同じ為、まるで精緻な絵でも観ているようだ。


荷馬車が通っている石畳は表面が丁寧にそろえられており、タイヤから伝わる振動もそれほど酷くなかった。


「凄い…綺麗な街です…」



すれ違う街の人達は小綺麗な人ばかりで、そして女性と子供が多い様に見えた。

ここから見た感じ、とても治安は良さそうだ。


街ゆく人たちもジャンさん達が通る度に挨拶をしているので、ご近所付き合いも良好な印象を受けた。


「アランさん。」


ルカさんと目が合うと、彼女は自分の顎をツンツンと指差してにんまりとする。


それだけで意図を理解した僕は慌てて右腕の袖で拭った。涎まで垂らして爆睡していたとは…穴があったら入りたい。


「もう大丈夫です。元のカッコいいアランさんに戻りましたよ。」


クスクスと笑う彼女はおちゃらけてそう言うと、こう続けた。


「この後、私達は積荷を伯爵様のお屋敷に配達します。その後はお母さんの実家に3日ほど寝泊まりしたらまた家に帰るんだけど…あのね、良かったら泊まって行きませんか?」


「いえ!此処まで送って頂けましたし、そこまでお世話になる訳には。」


「遠慮しないで。おばあちゃんのスープ、とっても美味しいですよ!折角のご縁なんですし!」


彼女の目がとてもキラキラしている。

あぁ、僕はこの目に本当に弱いんだ…。

だけど、お師匠様の言いつけを守らなくちゃ…。

ごめんよ。


「ですが、、その、この後予定が…」


彼女から目を背ける僕の心情を察したのか、リーリエさんがルカさんを止めてくれた。

残念がるルカさんを宥めるジャンさん。



そんな彼女達を僕はぼうっと眺めていた。

ジャンさんとリーリエさんに挟まれる様にして真ん中に座るルカさんの髪が、両親を見るたびに揺れ動く。

その光景が酷く眩しく見えた。

膨れっ面の娘を見て笑い合う両親。

拗ねていた彼女もいつの間にか笑い出して、キラキラ輝いていた。




コツコツと僕の靴をアルが突いた。

籠に当たらない程度に羽をバサバサと動かすとキリっとした目で僕を捉えている。

まるで、「お前には俺がいるだろ?」と言われた様で、胸が熱くなった。

思わず籠をぎゅっと抱きしめる。


すると、アルは応えてくれる訳もなく、ただ僕の指を突いてきた。



「痛!」



血は出ていないが、真っ赤になった人差し指。

アルはまた翼をバサバサさせて今度は鳴き声まで追加してきた。


あ、わかった。これはアレだ。飯だ。

「お前が寝ていた所為で飯の時間が過ぎてるだろ!起きたんだったら、飯よこせ!飯!」と言われていたのか…


アル専用の半生の餌を籠の隙間から入れるとこれまた嬉しそうにお召し上がりになられた。

主人は右手をヒリヒリさせておるのに…次の餌の催促をするなんて…

この薄情者めっ……。

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