転職魔女……
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春。それは所々に降り注がれ積もった雪が溶け、新しい命が大きく成長する、始まりの季節。そんな季節の小高い丘にポツンと佇んでいる家の近くで、少女は大声を上げた。
「レイカーーー! お腹空きましたーーー!」
家の中からそれを訴えに飛び出してきたユイちゃんの白いワンピースがふわふわと左右に揺れる。私は目の前の畑に一時的な別れを告げ、「今行くから」とユイちゃんに返事を送る。
玄関で靴に入った土を落とし、家に入る。リビングには朝っぱらから飲んで顔を真っ赤にしている女性達がこちらを見てくる。
「シャネルもファーナさんも、あまり飲み過ぎたら体に悪いよ?」
と言いつつ、私も駆け足で台所に行き、予め冷やしておいたお酒に手を伸ばす。ゴクゴクゴク……その液体が喉元を通り過ぎた瞬間、私は盛大に歓喜の声を響かせる。
「うんまぁーーーいっ!」
一仕事終えたあとのお酒は格別に美味しい。私がお酒の有難みを痛感していると、後ろから声をかけられる。
「ちょっと、うるさいんだけど。大事な睡眠を妨げないで」
「レイン! 泊まらせてもらっているのにそんな態度はないでしょ!」
レインさんとビージュさんは寝間着姿で言い合っている。私がその光景に微笑んでいると、待ち切れなくなったユイちゃんが私を呼びに来る。
「ちょっと待ってね! 今から作るから」
「遅いですよー! 一体何作るんですか?」
「それはねぇ……色々! パーティーだからね。ユイちゃんの好きなキャベツ太郎(お菓子)もあるよ!」
ユイちゃんは表情を輝かせると、「もう少し待っています」と言ってリビングに戻っていった。
私はマッハで調理して30分で料理を作り終えると、皆に外まで運ぶのを手伝ってもらう。新しく作った外の巨大テーブルに全ての料理をのせ終わると、2階の部屋で過ごしていたセルフィーさんを連れて来る。
「あれ? セルフィーさん……何か変わりました?」
「分かりますか? ここ」
そう言ってセルフィーさんは自分の髪の毛を指さす。そこには緑色の簪が装着されていた。
「部屋でいた時に付けたんです。似合ってますか?」
「はい! とっても!」
うふふと2人で笑い合っていると、後ろから「レイカさん」との声が聞こえる。
「すみません、約束した時間より少し遅れてしまって……」
「いえいえ、今からご飯を食べるところです。一緒に食べましょう、王女様!」
王女様とヘレンは指定された席に座る。私は1つ溜め息をつくと、背後の僅かな茂みに隠れている者に問う。
「そこで何してるの? ヘイン」
私の声に驚いたのか、はたまた私が気づいたことに驚いたのか、ヘインは茂みをガサッと揺らした。作り笑いを浮かべてすーっと出て来たヘインは、私に頭を下げてきた。
「本当にごめんなさい!」
「もう……その件は良いって言ったでしょ?」
「それなら……お、俺と結婚して下さい!」
「はあ!?」
はあ!? 心の中で同じ言葉を叫んでしまう。何考えてんだこいつ……と思いながらヘインの姿を見ると、その言動は本気のようだった。
「俺が女勇者に惚れたのは魔法の可能性とかもあるわけで、もしかしたら呪い? とか、操作されてた? とかかもしんないし……その、俺とレイカは婚約者だったんだから、結婚して当たり前って言うか……やっぱりさ、運命の糸とかが繋がってたり……」
ヘインは自分の言葉に顔を赤らめる。
「そうね。私達は運命の糸で……ってなるかボケェ!!」
私は罵声と共にヘインの顔に拳をめり込ませる。ヘインを数十メートル程吹き飛ばしてしまい、「あ、やっちまった……」と薄々後悔する。
私はユイちゃんに「ふられてドンマイ」と慰められているヘインに少し微笑み、1人で家の中に入る。私は残していた1食分を1つの写真の前に置く。
「ご飯、ここに置いとくね? ルーシア」
私はニカッと笑うルーシアの写真に背を向けると、外に出て自分の席に着いた。そして、私達は目の前の食事に、命に感謝を込めて手を合わせる。
「「「いただきます」」」
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最後に、「転職魔女の最強すろーらいふ〜突然現れた女勇者のせいで婚約破棄され挙句の果てに国を追放された私は、転職してスローライフを送ってやろうと思います!〜」を読んで下さり、本当にありがとうございました!




