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転職魔女、魔王と戦う その5

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 ナルーシャは皮膚の剥がれた部分を右手で抑える。手の隙間から赤色が垣間見えた。


「ナルーシャ!?」


 魔法を使い過ぎたせいで体が壊れてしまったのだと思い、剥がれた所に左手を添えようとする。だが、それはナルーシャの左手によって防がれてしまった。


「大丈夫。こうなることは分かっていたんだ」


「そんな……私が弱くって、魔法もろくに使えなくて、足を引っ張ってばかりだったからこんなことに──」


「違う!」


 ナルーシャは一際大きい声で私の発言を拒絶した。周囲は自然と静かになり、視線がナルーシャに向けられる。


「私は……本当の魔女じゃないんだ……私は魔女から造られた『人形』なんだ……」


「どういう事?」


 ナルーシャは10秒程口を閉ざして落ち着くと、事情を説明し始める。


「昔……1人の魔女がいた。その魔女は人間を──世界を幸せにする為に魔法を使っていた。勿論、魔法以外にも貢献していた。法や制度を提案したり、今の王国があるのも彼女のお陰だと言える」


 私は勿論、この場の全員がその魔女のことをナルーシャだと思いながら、耳を傾ける。


「その魔女はあるとき、裏世界の存在に気づいた。そして、近々隠れた牙を見せるであろう災害の存在にも当然気づいた。そして、魔女は2度の災害を防ぐことが出来た」


 裏世界について知らない人達は、ザワザワと騒ぎ出す。しかし、王女様が右手を上げただけで王室は静まり返る。流石の行動に私は素直に感心する。


「だが、魔女も生物だ。時が経てば体も心もいずれ崩壊する。周期的にあと1度だけ災害があると知った彼女は、自分の寿命に絶望した。しかし、どうにかそれを止めなくてはならない。そこで彼女はとある人形を作った。それが私だ」


 周囲の人達は、ザワザワともう一度騒ぎ出す。しかし、今度は王女様が右手を上げることは無かった。


「ナルーシャ、じゃあ私は何で魔女になったの?」


「魔女の力は大き過ぎてな。いくら魔女が作った人形でも、耐えることは出来なかった。その為、『転職の書』を作り、人形に入り切らぬ力をそちらに移したのだ。一応、魔女の記憶は頭に入っているがな」


 ナルーシャは重苦しそうな息を一気に吐くと、私に笑顔を見せる。そのせいで、皮膚が3枚程剥がれてしまった。


「という訳で、私は魔女ナルーシャ=ネクロンでは無い。名もない人形だ。済まない、本当は隠そうなどと思っていなかった。だが、お前達と話しているのが……楽しくてな。真実を話して離れていってしまうのが怖かった。本当に済まない」


「いいよ! 秘密を打ち明けられるのが友達なんじゃない、友達にも打ち明けられないのが秘密なのよ! 私はあなたの秘密を無理に聞こうなんてしない。だからこそ、今話してくれたことが嬉しい」


 ナルーシャは、目に涙を浮かべる。そして、それが流れた瞬間、何かが吹っ切れたように皮膚が剥がれていく。


「そんな……!」


「私はもう良い。どうせ助からない。元から寿命だったんだ。ファーナ=エルドラゴン、ユイ=ゴースト、シャネル=リースン、そしてレイカ=フレーアールン。お前達と会えただけで幸せだったよ。……そうだ、最後に何でも願いを叶えてやろう。魔法で出来る範囲なら何でもしてやるぞ」


 私は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死に願いを言う。


「あなたの名前を付けさせて! あなたは魔女ナルーシャ=ネクロンでも、名もない人形でも無い。あなたの名前は……ルーシア=フレーアールン!」


 ルーシアは少しの間ポカンとして、その後フッと笑うと、とても幸せそうな顔で言った。


「ルーシア=フレーアールンか……気に入った。ありがとう……レイカ=フレーアールン……」


 そう告げると、ルーシアは剥がれた皮膚と共に跡形もなく消え去った。


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