転職魔女、魔王と戦う その2
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魔王とナルーシャがその場を動かなくなってから約2分が経った。ナルーシャはチラチラとこちらを見てくる。私が逃げる行動を取らないので戸惑っているようだ。だが、私はそんな行動をするつもりは無い。最適な選択はそれでは無い。
届かないだろうが、私は心に強く思う。
『ナルーシャ、今から何が起きてもずっと前を向いていて。魔王を倒すことだけを意識して』
勿論、返事は無い。私はそんな事は気にせず、傍に置いていた剣を手に取る。たとえ私が戦闘不能であっても、魔王は私に注意をしているはずだ。私が想定外の行動をした場合、必ず魔王は隙を作る。ナルーシャと魔王は互角、きっと魔王に一瞬の隙さえ作れれば、ナルーシャがその隙に攻撃してくれるはず。
私は深く深呼吸する。そして、握っている剣を左腕に刺した。その瞬間、異常な痛みと血が溢れ出る。左腕が熱い。私の息が荒くなる。
「なっ、何を!」
魔王の驚いた声が王室に響き、私はその方向に目を向ける。私は魔王と目が合った。しかし、ナルーシャはこちらを見ず、魔王を捉えていた。その様子を見て、私はニコリと笑い、叫び声を上げる。
「いっけぇーー!」
「うおおぉーっ!!」
ナルーシャの全力パンチは魔王の鳩尾に入り、魔王は大量の血を吐く。そして、王室の1番端まで飛ばされた。
ナルーシャは間を空けず魔王に近づこうとする。が、何かに行く手を阻まれた。そこに現れたのは総勢20人ほどの武装している騎士だった。ナルーシャはたまらず距離を取る。
「おかしいな。お前の魔力は0に等しい。召喚魔法なんて魔力を大幅に消費する魔法など使えないはずだ」
「ああ、これは召喚魔法では無い。こいつらはこの王室にある金属で作った騎士もどきだ。だが、こいつらでも深手のお前達を足止めするくらいは出来る。さあ、行け! お前達!」
魔王の合図と共に騎士もどきが整列して私達に近付いてくる。ナルーシャはかなり体力を消費している。この数を即座に倒すのはどう考えても不可能だ。私は魔法も左腕も使いものにならない。それ以前に、意識が朦朧として来た。体も寒くなって来ている。まさに万事休すだ。
騎士もどきは止まらない。きっちりと揃えられた足音と共に近付いてくる。ナルーシャもジリジリと後退している。
と、その時、騎士もどきの奥から大きな音が聞こえる。すると、その音の発生源付近の王室の壁が崩れる。
「流石にもう魔法を使えん。我とはここでおさらばじゃ、残念だったな!」
魔王は立派な黒い翼を開き、宙に浮く。ここから逃げる気だ。私はそれを知り、どうしようもなく悔しい気持ちが心から溢れ出てくる。
せっかくここまで来たのに……必死に必死に切れそうな糸を繋ぎ止め、あと少しなのに……ここで逃げられてしまうなんて……
「逃げるな! 卑怯者! 最後まで戦いなさいよ! 卑怯者!」
「おい、小娘。逃げることは卑怯では無い。それも方法だ。お前達はコンタクトを取っていたのだろうが、きっと逃げろと言われていたのだろう? お前はそこで無駄なプライドに踊らされ、選択を誤った。こうなるのは当然だ!」
無駄な……プライド……間違えた選択……そんなこと、どうでもいい!
私はふらふらとよろめきながらも、どうにか立ち上がった。
「勝負は、これからよ!」
明日は休載致します。




