転職魔女、王宮に乗り込む
馬車の近くで集まっている魔族達を置いて、透明の私達はファルオード王宮に乗り込む。透明化は体の表面上に薄い膜を作り出し、それが光に反射して透明になる。しかし、この膜はすぐに剥がれ落ちてしまうので、持って約3分だそうだ。
私達は大階段の前に到着する。上へと延びている階段は恐らく魔王達がいるであろう王室に繋がっていて、下へと延びている階段は王女様達がいるであろう地下牢に繋がっている。
「では、また後で!」
「うん!」
私とナルーシャは上へ、ファーナさんとユイちゃんは下に進む。
私とナルーシャは階段を進んでいく。すると、大きな広間に出た。王室へ行くにはこの大広間を通って数百メートル先の階段を使わなければならない。しかし、目の前の大広間には数え切れないほどの魔族達と大柄の魔族の男1人がいた。
私達は音を立てないように魔族と魔族の間を歩いていく。透明化が持ってくれることを祈り続け、ひたすら歩いていく。
大広間の半分程に辿り着いたようだ。すると、目の前にあの大柄の魔族がこちらに近付いてくる。大丈夫、透明化はまだ効果を示している。相手はこちらに気づいていない。
こっそりとその場を去ろうとしたその時だった。
「フンっ!」
大柄の魔族がいきなり私たち目掛けて拳を突き出してきた。私は間一髪避けるが、その拳は大理石の床に激突する。そして、見事に大理石の床が崩壊し、大きな穴が空いていた。
「ガウェイン様、一体何を……ってお前達、どこから入った!」
魔族達はあっという間に私とナルーシャを囲む。透明化の効果が切れたようだ。
「やつはガウェイン=リザード、魔王精鋭軍の幹部の1人だ。このレベルになると魔力だけで誰がどこにいるか感じることが出来る。透明化は魔力まで消し去ることは出来ない。すなわち……ここからは真剣勝負だ」
「幹部、ガウェイン=リザード……」
青い肌をしている鍛え抜かれた体がこちらを見ている。かなり手強そうだ。だが、先に周りの魔族達をどうにかしなければならない。そんな私の意志を読み取ったのか、ナルーシャは「私に任せろ」とだけ言って、右腕を掲げて指を鳴らす。
すると、突風が吹き荒れ、魔族達は瞬く間に吹き飛ばされ、壁に激突して気絶していく。ただ1人、ガウェインだけは1ミリとも動いていなかった。
「我は魔法は使えんが、この極め抜かれた肉体があればどんな魔法もねじ伏せることが出来る。この肉体さえあれば我はこの世界で2番目に最強だ!」
「レイカ=フレーアールン、魔法でねじ伏せるぞ、手伝え」
「了解!」
私は腕を突き出し、ナルーシャは腕を掲げる。ナルーシャが指を鳴らしたのを合図に、私達はガウェインに魔法の猛攻撃を浴びせる。雷、風、氷、岩……猛毒や痙攣の状態異常など、数多の魔法を発動させるが、全てガウェインの筋肉の前では効果を持たない。
「さあ、そろそろこちらの番だ。ハァッ!」
その瞬間、ガウェインの姿が視界から消える。と、その姿が目の前に現れた。
「フンっ!」
ゴギッ!




