転職魔女、奇襲をかける
「ユイちゃん、ファーナさん、起きて下さい! 王女様が危ないんですよ!」
私は2人を起こそうと一生懸命体を揺らす。すると、目を閉じたままユイちゃんが口を開いてくれる。
「ん〜、王女様なら私達と一緒にラルドーラ王宮へ向かってるじゃないですか……フワァー」
「それはニセモノなんです!」
「「へぇっ!?」」
大きな声を出すな! とナルーシャが叱る。私とナルーシャで2人に事情を説明した。
「そんなことが……」
「では、早速王女様を救う為の作戦を立てる。これは私の予想だが……ファルオード王宮に魔王及び魔王精鋭軍幹部が集まっているだろう」
私達3人は驚きの顔を隠せない。魔王なんてものに出会ってしまえば、王女様を助けるどころか、私達の命も危ない。勝機は無い。
「何故ファルオード王宮にそんな大物が?」
「きっと、より早く本来の力を取り戻したいからだ。数百年前、勇者が魔王の殆どの力を奪い、水晶に封印した。勇者はあと一歩のところで魔王を倒し損ねてしまい、その水晶は現在魔王自身が所持している。そして、その封印を解くには……」
「解くには……?」
「大量の魔力がいる。大体3億程だな。だがそんな魔力はそこら辺の魔族は勿論、魔王にも持ち合わせていなかった。そこで、魔女が必要となる訳だ。魔女の魔力を取り出して水晶に与えてやれば、封印は解けるからな」
本当に大丈夫だろうか。魔王がいることで、この世界で1番攻略不可能な城がここに誕生してしまった。王女様を救い、誰1人欠けることなく家に帰ることが出来るだろうか。私は不安になる
「大丈夫だ、お前には私がついている。勝機はある!」
その言葉に、救われた。自然と下に向いていた顔を力強く持ち上げる。出来る、出来ないじゃない。そんな事は関係無い。たとえどんなことが起きようと、どんな者が立ちはだかろうと、やるしかないのだ。
「よし! 腹はくくった」
ナルーシャは少しだけ微笑む。その顔は体型に見合わない、とても綺麗で、儚いものだった。
「では、作戦だが……」
■
馬車が停車する。ファルオード王宮に着いたようだ。ザッザッザッと『蘭』に変装した魔族がこちらに向かってくる音が聞こえる。それを聞いて、「合図があるまで絶対に声を出すなよ?」とナルーシャがひそひそ声で確認する。
足音が目の前まで聞こえ、そして消える。無音も束の間、魔族によって馬車が開けられる。
「さあ、到着しましたよ。ファルオード王宮にな!」
その魔族はもう変装を止めており、額に大きな角が2本露呈している。皮膚は灰色で、目は赤色、所々にヒビのような模様が入っている。その決して美しいとは言えない姿を目の前に、私は固唾を飲む。
「あれ? いないじゃねえか。もしかして、俺達が魔族って気づいて逃げやがったか?」
ナルーシャの作戦はこうだ。魔族が私達を迎えに来る時、透明化の魔法を施して見つからないようにする。そして、私達が思惑に気づいて逃走したと勘違いした魔族は、すぐに他の仲間を呼び寄せようと私達から背を向くはず。だからそこを──
「オオラァ!」
「ギヒッ!」
──ナルーシャが飛び蹴りをくらわす。そしてそれを合図に私達3人は馬車の外に出て、ファルオード王宮を目掛けて走り出した。




