転職魔女、勘違いされる
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シャネルさんは私が魔晶石を壊してしまった事に怒ってるのだろう。シャネルさんに謝ろうと決意した私は、腰を直角に折り曲げる。
「魔晶石を壊してしまった事、本当にすみませんでした! 値段が幾ら高くても、必ず弁償します!」
謝罪をしても反応が無いので、私は頭を少し上げてシャネルさんの様子を伺う。シャネルさんは予想と違い、私の謝罪にきょとんとしている様子だった。
「……あの……シャネルさん?」
私が恐る恐る声をかけると、シャネルさんは沈黙から逃れて笑い出す。
「あはは、弁償しなくても大丈夫ですよ! レイカさんをここに連れて来たのは、別の用件です」
「でも、あれ程強く握られると誰でも怒っていると思ってしまいます!」
「あ、あれは少し興奮してしまって。だって、昔から憧れていた魔女様に会えたんですから!」
私は魔女という聞き覚えのある言葉に首を傾げる。何故なら、魔女とは神話に出て来る女性のことで、夢のような魔法を使い、ドラゴンさえ一撃で倒してしまうという。
勿論、魔女もドラゴンも空想上の生物だ。それに会えたと言われても、首を傾げるのが当たり前だ。
「いつ、どこで会ったんですか?」
「今、ここでですよ! 冗談言わないで下さい。あなたが魔女様なのは分かっています!」
どうやらシャネルさんは私の事を魔女だと思っているようだ。これはしっかり誤解を解かなくてはならない。
「シャネルさん、私は魔女じゃないですよ」
「否定するんですか。さては私を試していますね? 大丈夫です、私は魔女様の為なら何でもしますから!」
まずい、状況がどんどん悪化している。ならば、私が魔女だと思った理由をシャネルさんに話してもらおう。それを否定すれば、きっとシャネルさんも勘違いだと分かってくれるはずだ。
「何故、私が魔女だと思ったのですか?」
「また試しているのですか? 魔女様は魔力の能力値が桁違いに高いと魔女の本に載ってありました。あなたの能力値は正に同じ、紛れもなく魔女様です!」
私はシャネルさんの口から放たれた『魔女の本』という言葉を見逃しはしなかった。神話の魔女に関しての何らかの情報が書かれているのだろう。たとえ子供向けの本でも、今は少しでも情報が欲しい。
「シャネルさん、その魔女の本は何処にあるんですか?」
私が真剣な目で見つめるが、シャネルさんは何故か赤くなった顔を手で覆い隠す。
「……そんなっ……シャネルさんだなんて……クソシャネルとでも呼んでください」
「前までの反応は普通だったじゃないですか!」
駄目だ。シャネルさんの反応が可笑しくなってきている。というか、呼び方の提案でクソシャネルなんて、シャネルさんは一体魔女を何だと思っているのだろうか。
「クソシャネルなんて呼べませんよ! 今まで通りシャネルさんと呼びます」
「魔女様、それはいけません。せめてシャネルとお呼び下さいませ」
私は仕方なくシャネルと呼ぶことにする。
しかし、私は魔女では無いのであまり従順にされると申し訳ない。
「魔女の本は私の家の金庫に厳重に鍵をかけています。家は近いので、今から走って持ってきます!」
そう言うとシャネルさんはあっという間に部屋を出ていってしまった。