転職魔女、再び王宮へ行く
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「断る。お前が私達を騙している可能性は充分ある。信用出来るものか。それに、ここにいた方がレイカ=フレーアールンにとっては安全だ。何せ、『鉄拳のファーナ』にあの魔法使いの娘までいるのだからな」
ナルーシャはそう言い放つ。
「あなたは誰ですか? 私はレイカさんに質問しているのです!」
王女様とナルーシャの睨み合いが続く。私はこの険悪な雰囲気を取り消すべく、2人を止める。
「や、止めてください! 2人共!」
私の大声に全員が注目する。
「わ……分かりました。王宮に行きます。ナルーシャ、王女様は信用出来る、大丈夫。王女様、ユイちゃん達も一緒に王宮に連れて行くことは可能ですか? 心配なんです」
ナルーシャは黙り込み、王女様は少し考えた末、許可を出してくれた。私達は家から貴重品を取ってくると、用意された馬車に乗り込んだ。
馬車に乗り込んでから5分程が経った。私の横にはナルーシャ、ユイちゃん、ファーナさんの順番で座っているが、ユイちゃんとファーナさんはもう寝てしまっていた。
「ねぇ、ナルーシャ。ナルーシャって海で遊んだ時に1回王女様に会ってるよね? なのに何で王女様はナルーシャのことを誰ですか? って聞いたんだろう? もしかして自己紹介してなかったの?」
一瞬、ナルーシャの顔が強ばる。ナルーシャは無言で馬車の中をきょろきょろと見回すと、私の耳元で話し始めた。
「よく気づいたな。今、この馬車はファルオード王国に向かっている」
「えっ!? それってどういう……」
私が言い終わる前にナルーシャに口を抑えられる。
「大きな声を出すな。連中に聞こえてしまう。いいか? 海に行った時、私は王女様と話した。その時に名前も職業も、お前が知っているくらいの情報は教えた。魔女だと言ったら驚いていたよ」
「じゃあ、さっきの会話は何だったの?」
私もナルーシャの耳元で囁く。
「よく精神を集中してみろ。魔力を感じれば分かるはずだ」
私はナルーシャの言う通り、目を閉じて深呼吸をする。どこか大きな海中を沈んでいっているように、深く集中する。やがて、自分に流れる魔力が見えてきた。
「そのまま頭を持ち上げろ。馬車の外の魔力も感じるのだ」
私は重い頭をゆっくりと持ち上げる。すると、周囲の魔力が感じられる。精鋭部隊『蘭』の人達の魔力のようだ。しかし、何かがおかしい。
私は突然セルフィーさんとの会話を思い出す。人間と魔族の違いをセルフィーさんに教えて貰っていたのだ。確か、人間と魔族の決定的な違いは体内の魔力の流れ、人間は髪の毛から爪先まで魔力が流れているのに対して、魔族は心臓部分にしか流れていない。
「あっ!」
「そうだ。こいつらは全員魔族。王女様や精鋭部隊の隊員に化けているのだ。恐らく本物の精鋭部隊と王女様はファルオード王国に監禁されているだろう」
「そんな、助けなくちゃ!」
ナルーシャはニッと笑うと、握り拳を前に突き出した。
「だから今から助けに行くのだ! 魔族達は私達が正体に気づいていないと思っている。不意をつける最大のチャンスではないか。さあ、王女奪還戦争の始まりだ!」




