転職魔女、再び修行をする
「ナルーシャ、私に魔法を教えて!」
私はリビングのソファに座って紅茶を飲んでいたナルーシャに頭を下げる。
「……何故そういう話になったのか説明してくれるか?」
私がこう思い立ったのにはちゃんと理由がある。女勇者や魔王軍が何らかの目的の為に私を狙っているこの状況下で、今の私は力不足過ぎる。さっきも私は助けを呼ぶことしか出来ず、ファーナさんとの魔法の繋がりが無ければ、私はファルオード王国に連れて行かれるところだった。
皆に迷惑を掛けない為にも、自分の身は自分で守れるくらいにはレベルアップしなければいけないと考えたのだ。
私はその志しを精一杯ナルーシャに伝える。
「ふむ。まあ、前に魔女にしか出来ない芸当を教えてやると言ったしな。よし、ならば最低限の魔法とその魔女にしか出来ない芸当、通称『魔女殺し』の技を教えてやろう」
「ま、魔女殺し!? それってほんとに魔女が使うやつなの?」
取り敢えずその魔女殺しとかいう如何にもヤバそうなものを習得するため、私とナルーシャは外に出た。
「まず、『魔女殺し』は魔法を使うために必要である魔力をゼロにしてくれる。つまり、自らの魔力量を考えず、無制限に魔法を使うことが出来るのだ」
「それってめっちゃいいじゃない!」
私の率直な感想にナルーシャは何故か顔をしかめる。
「魔女というのは魔力を尋常では無いほど自らに納めておくことが出来る。それに、魔力を消費しても直ぐに回復する。魔法を使っても1時間後には完全回復するだろう。しかし、この『魔女殺し』は魔力を必要としなくなる代わりに、体内の魔力を全て消し去ってしまうのだ」
魔力を消し去る? いまいち良く分からず、私は首を傾げる。それを見兼ねたナルーシャはより詳しく説明してくれる。
「つまりだ。誰しもは体内に魔力を納めており、その魔力が無くなれば命を落としてしまう。ここまでは分かるな? そして、『魔女殺し』は魔力を消費せずとも魔法を使用することが出来る。だが、その代償として体内に魔力を納めることが出来なくなるのだ」
なるほどなるほど。体内の魔力が無くなると命を落とし、『魔女殺し』を習得しようとすると代償として体内に魔力を納められなくなる、つまり体内の魔力が無くなる、と。
「それって死んじゃうじゃん!」
「ああ、だが稀に死なない奴が居るのだ。そして、見事習得した場合、その者は魔女の『魔力量が桁違いに多い』という最強の特性を凌駕してしまうのだ。それが、『魔女殺し』と呼ばれる所以だ」
私は頭の中を少し整理する。そして、理解を深めていく。
「あれ? でもそれって魔女にしか出来ない芸当じゃないでしょ。『魔女殺し』って名前ついてる時点で完璧に魔女の対抗策だし!」
「いや、魔女にしか出来ない芸当というのはそれを習得する方ではなく、習得させる方なのだ。『魔女殺し』を習得するには魔女の9割程の魔力を込めて作った水晶を使わなくてはならない」
魔女に対抗する為に編み出したものが魔女と協力しなければいけないものだったとは、皮肉な世界だな、と私は思う。
「まあ、お前はそれ以前に基本的な魔法を習得するぞ。『魔女殺し』はそれらを全て習得した後で良いだろう」




