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転職魔女、泳ぐ その2

 

 全体の4分の3、150メートル程を泳ぎ切ったが、私と2人の差は広がるばかり。

 こうなったら、あれを使うしかない。


 実は昔、私は泳ぎが大の得意だった。そこら辺の大人にも引けを取らず、10年に1人の存在だとも称された。その頃の私はとても努力家で、時間があれば水泳ばかりしていた。そして、誰よりも速く泳ぐため、自ら水泳のフォームを開発した。魚のように跳躍し、鳥のように潜る。それを繰り返すことによって、ブーストがかかったように速くなるのだ!


 私はこの最強のフォームをこう名付けた、『スワン』と。


「うおぉぉー!!」


「な、何てスピード! こんな技を隠していたなんて……」


「レイカさん、負けませんよ!」


 私は王女様を追い抜き、ファーナさんとの一騎打ちになる。ファーナさんはさらにスピードを上げ、それに私も食らいつく。のこり30メートル、20メートル、15、10……あと少し! その時だった。前から巨大な波が突如現れる。巨大な波はこちらには流れてこず、ゴールの岩の前で壁のようにヘリ立っている。


 一体どうして急に! その疑問が私とファーナさんの頭によぎった時、後ろから声が聞こえた。


「レイカ、ファーナ、お困りのようですねー」


 私達は同時に振り向く。そこに居たのは水の上を優雅に歩くユイちゃんだった。


「ゆ、ユイちゃん!?」


「何を隠そう、その巨大な波は私の魔法によって作られたものです。おっと、卑怯だなんて言わないで下さいよ? 誰も魔法を使ってはダメなんて言ってませんからー」


「くそう、こうなれば無理矢理にでもっ……」


 ファーナさんは勢いで波を越えようとするが、簡単に弾かれてしまう。


「泳ぎが苦手でもこうして勝てるのです! さあ、今ゴールの時を!」


 ユイちゃんは難なく波に近づいていく。ユイちゃんが波に接触すると、波の方が自然とユイちゃんを避け、水の洞窟のようなものが出来上がる。ユイちゃんがその洞窟に足を踏み入れたその時。


「目には目を、歯には歯を、魔法には魔法を、です! 我が拳に宿りし鋼の魔神よ、この皮膚を黒く輝きし鋼鉄の装甲に、塵の如き摩擦を紅く染まりし地獄の火花に、我が拳を何者も滅ぼせし破滅の凶拳に『爆ぜる鉄拳(ブラスト・ジューザ)』!」


 ファーナさんの拳が黒く染まる。拳の周辺には美しい火花と蒸気が現れ、いかにその拳が危険なものか教えてくれている。


「いきます、ハァァ……アッ!」


 ファーナさんの拳が巨大な波へと向かっていく。拳の通った後には、紅い光線が作られる。

 熱せられた拳に当てられた巨大な波のほんの1部は、急激な温度上昇で水から水蒸気に変化、それによって数千倍になった体積は、周りの波を巻き込んで爆発音と共に巨大化。巨大な波は跡形もなく消え去ってしまった。のだが……


「もうー! さっきの爆発のせいでゴールの岩が跡形もなくなっちゃいましたー!」


 ユイちゃんの不満の叫び声で、水泳対決は幕を閉じた。

 私達はビーチへと戻り、対決している間にナルーシャが用意してくれていた絶品のかき氷を食べ、その後数時間ほど皆でビーチバレーや素潜りなどをして、それぞれの家へと帰った。


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