転職魔女、海に行く
「さっきからどこかで会ったことあるなぁと思ってたんだけど、確かそうだったはず。ミノ祭りの時に私が考え事してたら話しかけられて……どこかの貴族かなって思ってたんだけど、本当にその人が魔王精鋭隊の幹部なの?」
「ああ、しかし不味いことになったな。もしラテナと接触していたのなら、お前が魔女だという事はもう見破られているだろう。その存在を魔王が見逃すことなど有り得ない」
「ってことは……」
「ああ、ファルオード王国と魔王は繋がっている」
全てがつながった! つまり、私がミノ祭りで出会ったラテナが、魔王にその事実を知らせ、裏で繋がっているファルオード王国と協力し、私という存在を手中に取ろうとしているのだ。
「でも、それなら家を破壊する必要なんて……」
「単なる嫌がらせじゃないのか?」
「嫌がらせって、そんな事は……」
有り得ない! そう答えることは出来なかった。私はため息をひとつ着くと、机の上に置いた梨を食べる。
「あー、もう面倒くさい! やっと裏世界を救えたのに、休む間も無く変な事に巻き込まれるし! 夏は皆で海とか行きたかったのになー……」
パチン!
ナルーシャの指が音を鳴らした瞬間、座っていたはずのソファの感触が無くなり、私はその場で尻もちをつく。私は床に手を付ける。
ザリッ
「ん?」
触った感触がおかしい。木製の床の筈なのだが、何故か砂のような感触だ。手にも砂のようなものが手にこびり付くのが分かる。
ふと顔を上げる。その瞬間、私はとんでも無い光景を目にした。
青い海、輝く砂浜、それらを照りつける太陽、海からやってくる涼しい風。そう、そこはどう見てもどこかのビーチであった。
「え? ……海? ビーチ? 何で……?」
私はただひたすらに疑問の声を上げる。幸い、その疑問に答えてくれる者が瞬時に隣に現れてくれた。
「海に行きたいと行ったではないか。変な事に巻き込まれるのは魔女の宿命でもある。そして、お前を魔女にしたのは私だ。せめて願いの1つや2つくらい叶えてやらなくてはな。ここは7月20日のラルドーラ王国最果てにある隠れスポットだ。存分に楽しめ」
「7月20日って、タイムスリップしてるじゃん。もう何でもありだね」
魔王の次に強い魔族の魔法をいとも簡単に唱えるとか、もう最強じゃん。もしかしたら魔王にも勝てるのかもしれない……
「レイカー、凄いよここ! 超綺麗だし、水も気持ちいい!」
「本当に凄いですよ! お魚もいっぱいですー!」
水着姿の2人がこちらに走ってくるのが見える。
「シャネルとユイちゃんもいたんだ!」
「ああ、先程2人にも事情を説明し、水着を与えていたのだ」
「私も海に入りたい……けど、着れる水着が無いしね……」
私が溜め息を漏らして落胆していると、ナルーシャに肩をちょんちょんと触られる。
「レイカ=フレーアールン、魔女は特殊なオーラを纏っていて、殆どの衣服は耐え切れず爆散してしまう。しかし、その特殊なオーラに耐えることが出来る素材があるのだ。極希少な素材だがな。今お前が着ている服にも、私が着ている服にも使われている」
「ってことは……!」
「今回のために、水着を用意しておいたぞ!」




