転職魔女、発狂する
ブクマありがとうございます!
「思い当たるのは……魔王精鋭隊幹部・ラテナであろう。正確に言えばラテナの優秀な部下達だがな」
「幹部……」
ナルーシャは目的を果たした『時空晶鏡』を収納し、紙とペンを新たに取り出す。
「ラテナは悪魔や魔人などの魔族では無くてな、人間なのだ。それに魔法を使うことも出来ず、剣を振ることも出来ず、天才的な策を練ることも出来ず、ただ少しずる賢いだけだ。だが、魔王はそれが気に入った。脅威というものが無ければ、それ程信用出来る」
「あ! そう言えばナルーシャ、ラテナの事はフルネームで言わないね。いつもだったらレイカ=フレーアールンとかユイ=ゴーストとかで呼ぶのに」
「言われてみれば確かにですー」
ナルーシャはペンをカリカリと動かしながら答える。
「ああ、ラテナのフルネームは不明なのだ。色々な所に情報網を持っている私でも分からない。余程知られたくないのであろうな、ホレ」
ナルーシャは先程取り出していた紙を私達に見せる。そこには女の人の絵が描かれていた。ペンを動かしていたのはこれを描いていたからのようだ。
「これはラテナの顔だ」
「魔女様って画力あるんですねー」
「あ、ユイちゃんってナルーシャのこと魔女様って呼ぶんだ」
「はい! 魔女様ですから!」
私は何故『魔女様』では無く『レイカ』なのか疑問に感じたが、その方が都合が良いと思って口に出すのを止める。
それにしてもナルーシャが描いたラテナの絵、どこかで見たことがあるような……
ピンポーン……ガチャ!
「レイカー、遊びに来たよー! ……って何で皆さんお揃いでこんな所に?」
「あっ、シャネル!」
取り敢えず私達は玄関からリビングに移動し、シャネルとリビングでアイスを食べていたファーナさんも加えて話を続ける。
「それで……何の話だったか?」
「えーっと……確か魔女様の画力が凄くて……」
「何それ、見せて!」
「シャネル! 魔女様に向かってタメ口は失礼です!」
「魔女様の絵、興味深いです!」
「私、梨切ってくるね」
私はシャネルが手土産に持って来てくれた梨を2つ台所へ持って行き、包丁を取り出して丁寧に梨の皮を剥き、ドスッドスッと力強く切る。透明なお皿に綺麗に梨を盛り付けると、私は鼻歌を歌いながらリビングへと向かう。
長い廊下を歩いてリビングに近づくにつれ、リビングから聞こえる声が大きくなっていく。これが私は好きだ。何と言うか、言葉で表すことが躊躇われる程好きなのだ。
「あっ、この絵あの人ですね!」
「何だ、シャネル=リースン、知っているのか?」
「はい! ミノ祭りの時に会いました! レイカがぼーっとしてた時にその人に怒られて……」
「あー、確かにそんな事ありましたねー」
「何だと!? ラテナに接触したのか!?」
そうだ、それだ!
私は梨を落とさない程度の速さでリビングに駆け込む。そして……
「それだぁーーーーーーーー!!」
と声を上げた。
この後、私の突然の発狂に「頭おかしくなりよったんかこのクソ魔女が!」と言わんばかりの冷たい視線を浴びせられた事は語る必要も無いだろう。
明日は休載致します




