転職魔女、鏡を覗く
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「裏世界にある鏡を見に行きたいの。その鏡は現在も過去も未来も見れるらしくて………」
「ああ、『時空晶鏡』のことか、それならここにあるぞ?」
ナルーシャは小さな鞄から私より一回り大きいくらいの鏡を取り出す。これが『時空晶鏡』のようだ。
「ってか何で持ってんのよ!」
私の隣へ来たナルーシャの胸をビシッと叩いてやろうと手を出したが、すんなりと止められてしまった。
「昔、研究で使用する機会があってな。裏世界にある『時空晶鏡』の1部を採っておいたのだ」
「へえ……」
私は『時空晶鏡』の目の前に立つ。今は普通の鏡のように私が映っているだけだ。何となく鏡の中央部に右手を当てる。
「うわっ!」
その瞬間、『時空晶鏡』に映っていた私の姿は消え、代わりに私の家が映し出された。
「レイカ、一体何を見ているのですかー?」
ユイちゃんがひょっこりと顔を出して『時空晶鏡』を覗く。
「この『時空晶鏡』は触れることで見たい場所と時間を自動で察知し、映し出してくれるのだが、レイカ=フレーアールンは知っていたのだな。まあ、偶然のような気もするが……」
「うっ……」
私は呻き声を上げながらも『時空晶鏡』から手を離す。今映っているのは、私達がミノ祭りで家を留守にしていた時、即ち私達が家を破壊されたことに気づく前日の夜だ。
景色が変わらないまま1分が経過したくらいの頃だった。5つの人影が現れたが、暗くて良く見えない。
私のそんな不満を察知したらしく、ナルーシャが『時空晶鏡』に手を当てる。すると、昼のように明るく映し出されるようになった。
「要望があるなら触れれば『時空晶鏡』が察知して色々と改善してくれる」
「ありがとう、ナルーシャ」
私が『時空晶鏡』に触れると、ナルーシャの言った通り私の要望に応え、人の顔が十分に見えるほど拡大してくれた。
そして、私は『時空晶鏡』に再び目を向ける。と、その同時に「あっ!」と声を出してしまった。
なんと、5人中2人は忘れることなど出来る訳が無い、あのヘインと女勇者であった。
「やっぱり……」
可笑しいと思っていたのだ。もしアサシンが生物であったとしても、私の家を狙う理由が分からない。ドラゴンを殺すのが目当てなら、ファーナさんを追いかけて戦えば良いのだ。
女勇者とヘイン、他3人は躊躇無く家のドアをこじ開け、中に入っていく。私は『時空晶鏡』に触れて5人を追いかける。5人は、私の家を荒らしていた。女勇者と他3人はともかく、ヘインが躊躇無く私の家を荒らしている姿を見て、私は心がズキっとする。
「そうか……アサシンは災害だったから、家を荒らした真犯人がいる……なるほど、全て理解しました」
「おい、レイカ=フレーアールン。女勇者の後ろで家具を壊している男、こいつ操られているぞ。魔法でな」
ナルーシャは声を発しながら指を指す。その男とは、ヘインの事だった。私は少し安心する。もしかしたらヘインのあの姿は誰かによって造られたものなのかもしれない、そんな超低確率の可能性があるだけで、私の心のズキズキは綺麗さっぱり消え失せている。
婚約破棄され、ファルオード王国を追放された時はもうヤケクソで、涙さえも出てこなかったけれど、今冷静に考えてみれば、やはり私はヘインが好きだったのだ。
おっと、変なことを考えてしまった。私は思考を元に戻し、ナルーシャに質問を投げかける。
「魔法でって、一体誰に……?」




