転職魔女、時を超える
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眩い光が身を包んだ3秒後、足元に地面が現れる。重力が復活して重く感じる体を動かし、周囲の状況を確認する。私の隣にはシャネルとサーニャが何者かの声が聞こえる前と同じ位置に居た。
しかし、ルーラーとユイちゃんが見当たらない。
「ここは……!」
私は不意に上空を見た。その瞬間、全てを理解する。
空は赤く染まっていた。いや、空だけではない。赤い霧状の物質が周囲に漂っている。
「これは、災害『アサシン』!」
私達が見つけた災害『アサシン』の知識が記された本には載っていなかったが、受け継いだ前代の魔女の情報には存在していた。災害『アサシン』の特徴は赤い霧状の物質が裏世界の空気中に漂うという事。この赤い霧状の物質はドラゴン族にだけ効果を発揮し、ドラゴン族の唯一の弱点である喉元の逆鱗を侵食、やがて喉元を掻っ切られたような状態で死亡してしまう。
そして、何故突然災害が起き始めたのか、その答えは一つだけ。
「シャネル、サーニャ、ここは"8月30日"の裏世界! ルーラーの魔法によって転移されたんだと思う。時を超えただけだから正確には転移じゃないけど」
「8月30日って……災害の日じゃん!」
シャネルはあたふたと混乱して叫ぶ。魔法と解釈すれば謎の声も納得出来る。私は声の内容を鮮明に思い出し、気がかりな点を発見した。
「あっ、確かあの声が『生命活動を確認出来ないものは消去する』って言ってなかったっけ!」
「言ってたと思う。じゃあ、もしかしてルーラーもユイちゃんも……」
私は再び絶望感に浸る。肉体さえあれば、蘇生することも不可能ではないと思っていた。その希望が消えてしまったことに私はまた涙が溢れそうになるが、必死に堪えてこの状況から抜け出す策を考える。と、その時。
「レイカさーん!」
遠くから私の名を呼ぶ声が聞こえる。その声の方に視線を向けると、こちらに飛んでくる2匹のドラゴンが見えた。
「レインさん、ビージュさん!」
2人は赤い霧を上手く避け、私達の元へ無事到着する。
「私達は突然現れた大っきい穴に吸い込まれて、こんな所に飛ばされたんですけど、レイカさん達もそうですか?」
「はい、そうです。あの……レインさん、ビージュさん、聞いて驚かないで下さい。ここは"8月30日"の裏世界です!」
「………………っえぇぇぇ!!」
ビージュさんは少し放心状態になった後、私達に驚きの顔を見せつける。レインさんはピクリと眉を動かしたものの大して驚かず、無言のまま私を睨んでくる。
私がビージュさんのことを神様と呼んでないことに不満があるようだが、私は気付かないふりをして話を続ける。
「取り敢えず、今日(8月30日)は災害が起きる日です。お2人は避難しておいて下さい! 私は災害を止める魔法を詠唱します!」
「避難するって何処にですか!?」
今すぐ赤い霧の少ない所へ案内したいが、今はそんな時間は無い。私は無言でシャネルにアイコンタクトを試みる。シャネルならこの赤い霧が危険だと直感で理解してくれるはずだ。
私の考えはシャネルに伝わってくれたようで、シャネルはコクリと頷くとレインさんとビージュさんに話しかける。
「わ、私に着いてきてください!」
そう言うと、シャネルは2人のドラゴンを連れて赤い霧が少ない所へ走っていった。
よし、私は『聖なる抱擁』を──
グサッ
「……えっ?」
背中から何かが刺さった感覚が痛みと共に伝わってきた。しかし、痛かったのはその一瞬、数秒が経過した今は背中がとてつもなく熱い。
意味不明の状況に私が混乱していると、後ろから明るい声が聞こえた。
「フゥー、任務完了っ♪」
補足話:魔王城には大量の魔力を消費する代わりに、利用者の好きな場所を映し出す事が出来る水晶玉があります。ルーラーがレイカ達を追跡出来ない状態の時は、その水晶玉でレイカ達を見張っていました。(音声などは利用者にだけ聞こえます)




