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転職魔女、我に返る

 

 シャネルのその言葉を聞き、私はふと我に返る。その瞬間、両手から痛みがズキズキと流れてくる。固く握られた両拳を見ると、ルーラーと私の血で真っ赤に染まっていた。ところどころ皮膚が剥がれており、つい目を背けてしまうほど痛々しい。


「シャネル……もう、大丈夫だから……」


「……うん」


 私の足元には先刻まで殴られていたルーラーが倒れている。身体中が痣や鼻血で埋まっており、顔はもう形を保っていない。

 当然、息はしていなかった。私が殺したのだ。こいつはユイちゃんを殺したのだ、こんな目にあって当たり前、そう割り切ることは私には出来なかった。


 そして、その横にはユイちゃんが倒れていた。こちらも息をしていない。


 自然と涙が零れる。息をするように、当然のように。ゆっくりと雫が頬を伝って流れていく。いつもなら恥ずかしくてすぐに涙を拭き取る私も、今は唯その感触を心に刻み込む。


「……ごめん……ユイちゃんが……やられちゃって、凄く悲しくてっ……」


「分かってる。分かってるから、ね?」


 私は何度もコクコクと頷き、シャネルに抱きつく。甘くて温かい匂いが香る。柔らかい真っ白な翼が、ふんわりと私を包み込んだ気がした。

 私は2回ほど深呼吸するとシャネルから離れ、涙を拭いてパァン! と頬を叩く。


「ごめんね、でももう大丈夫。今は心臓が張り裂けそうなくらい悲しいけど、私達はこの世界を守らなくちゃならない! じゃないと、ユイちゃんも悲しむだろうし」


「うん!」


「あの……」


 私が意志を固めたところで、サーニャが心細そうな声を出す。


「2人はユイさんと長い付き合いですよね……なんか……私だけが……ハブられているというか、ボッチになってるというか……私、場違いじゃありません?」


「「……ぷっ!」」


 真剣そうな顔つきのサーニャから出たその発言に、私達は思わず吹いてしまう。


「大丈夫! 私達もユイちゃんと知り合ったのもごく最近だから! なんかそう思うと、短期間でいろんなことがあったなぁ……」


 私とシャネルは、短いけれど濃度が半端ない楽しい思い出を思い返す。そう思えば、ファルオード王国でヘインと結婚して人生を終えるよりも、今の方がよっぽど刺激的で楽しいだろう。なのに、とても大切な友達を失ってしまうなんて……


「あー……やっぱり、私場違いじゃありません?」


「「……ぷっ!」」


 ナーバスになっていた私に衝突してきたサーニャの一声にまた吹いてしまう。


 その時だった。


『ルーラーの生命活動完全停止を確認、(トラップ)魔法を発動します。生命活動を確認出来ないものは全て消去、生命活動を確認出きたものは8月30日に強制転移させます』


 突然、脳内に何者かの声が響く。私が内容を理解する前に足元にあったはずの地面が無くなり、抗う術も無く猛スピードで落ちていく。


「う、うわぁぁぁ!」


 周りは暗闇、シャネルやサーニャの声も聞こえない。叫び声を上げながら落下していると、暗闇から1つの光が見える。私はその光に段々と近づいていき、半強制的にその光に飛び込んだ。


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