転職魔女、激怒する
ブクマありがとうございます!
「レイカ、今のうちに災害の方を……」
「ユイちゃん、前!」
ユイちゃんが油断して私の方に振り返った時、遥か彼方に飛ばされたはずのルーラーが猛スピードでこちらに向かってくる。幾ら強靭な翼を持っていようとも、吹き飛ばされた次の瞬間に戻って来るなんてことは普通では有り得ない。
「お前達は本気で私を怒らせ……」
「精霊なる神木よ、我の意のままに追従せよ『神木の狂鬼』!」
「神木に宿りし木の精霊よ、悪なる存在を打ち砕け『精霊の逆襲』!」
時間を余すこと無く私達は魔法を詠唱。ルーラーの周囲には大木が生え、そのルーラーの目の前に木の怪物が現れる。
これはいける! ユイちゃんと2人なら十分戦える!
そう思った次の瞬間だった。
ルーラーは何処からか紅色の炎を纏った黒剣を取り出し、大きく横に振る。その一撃だけで周囲の大木が1つ残らず斬り倒される。そして、ルーラーは地を蹴って木の怪物の元へ近づき、次は黒剣を右斜めに振る。気の怪物は上半身と下半身を切断され、呻き声を上げながらその場に倒れ、動けなくなる。
さらに、翼を羽ばたかせながらユイちゃんの元へと近づき、黒剣でユイちゃんのお腹を貫いた。
ルーラーはこの全ての行為を僅か3秒足らずでやってのけた。
「かはっ……!」
「ユ、ユイちゃん!」
ユイちゃんの白いワンピースが血で赤く染まっていく。
とどめに黒剣をもっと深く刺し込もうとするルーラーの行動をいち早く察知した私は、自分でも驚くような速さでルーラーに近づく。
「やめろっ!」
私は全力でルーラーの顔面を殴る。魔法よりも遥かに速く、重い一撃。ルーラーは予想外の攻撃に対処しきれなかったらしく、私の想像以上に吹っ飛ぶ。
ユイちゃんに刺さっていた黒剣は、ルーラーが手を離すと同時に消えていった。その場で倒れたユイちゃんの傷口からは真っ赤な血がドクドクと流れている。
「一体どうすれば……」
私が途方に暮れていると、ユイちゃんが半開きだった眼を見開き、口を開く。
「後は……頼み……ましたよ……」
そう言い残すとユイちゃんは顔に笑顔を作ったまま目を閉じ、そのまま眠ってしまった。
その瞬間、猛烈な喪失感と悲哀感が私の心を埋めていく。やがて喪失感と悲哀感はモヤモヤとした何かに上書きされていく。そのモヤモヤとした何かを言葉で表すことは出来ないだろう。だが、『喜怒哀楽』の中で言うのなら、その何かは『怒』に属しているはずだ。
「ふぅ……1人撃破♡」
ルーラーは先程消えたはずの黒剣を手にしている。
それを目にした瞬間、私の眼はそれを標的に設定する。『怒』に属した何かに心を染められた私は、何も考えることなく標的に向かう。
いつもより体が軽い。私は思ったより早く標的に辿り着いた。目の前の標的の顔面を容赦無く殴る。精一杯力を込めて、殴る。吹き飛んだ標的にいち早く近づき、もう一度殴る。何故か標的は何もしてこない。だが、理由は考えずまた殴る。
それを何十回と繰り返す。私は標的に向かって腕を振り上げ、もう一度殴……ろうとしたが、私の腕から伝わってきた誰かの手の感触を感じ取り、殴る行為をやめて後ろを振り返る。
「レイカ、もうやめて! もう……死んでるから……」
明日は休載致します




