転職魔女、奇襲をかけられる
「これで良しっと!」
ユイちゃんに魔力を渡し終えた私は、魔法の絨毯に乗る。魔法を渡す為に地上へ降りて来たのだが、さすがに2度も盗賊に会うことは無かった。
私はすっかり慣れた絨毯の操作を駆使して、吹き飛ばされない程度の速さで上昇する。
「地図によると……南の森まではあと少し、頑張って!」
「昨日調べたのですが、南の森は通称"エルフの森"と呼ばれていて、沢山のエルフ達が暮らしているそうです」
「つまり、そのエルフ達から情報を得られるかどうかが勝負所ってことね」
そうこう話している内に、森が見えたきた。私はぐんと速度を上げ、森へ近づく。そして、着陸しようとしたその時、下から飛んできたビームのようなものが、魔法の絨毯の末端を切り裂いた。
「うわっ、何!?」
「下から攻撃されています!」
それからも何度もビーム(のようなもの)が飛んで来る。幸い、最初の1発以外は魔法の絨毯に当たらず、無事着陸することが出来た。
ユイちゃんは素早く魔法の絨毯を収納し、私とシャネルは近くの岩場に隠れる。ユイちゃんも臨戦態勢に入り、こちら側は準備OKだ。周辺には霧が出ていて、敵の位置を把握出来ない。
「放て!」
何処からか聞こえてきた声と共に現れたのは、先程のビーム(のようなもの)だった。
「我が魔力よ、光も通さぬ盾となれ『守護盾』!」
瞬く間に現れた青い盾は、ユイちゃんに向かって飛んで行ったビーム(のようなもの)を1つ残らず止める。
「レイカ、また魔力を貰ってもいいですか?」
「全然イイけど……」
「天なる存在は神なる存在。竜の如し暴風を呼び覚まし、大海なる大雨を生み出し、渦巻く轟雷を与えよ『大嵐』!」
すると、周辺の天気が急速に変化し、黒雲が集まる。雷が轟き、雨が降り注ぎ、強い風が吹く。
周りの霧がはれ、遥か前方に魔人の集団が現れた。
「まっ、魔人!?」
「敵の位置が把握出来ればこっちのもんです。大嵐よ、暴れ渦巻け『大嵐の咆哮』!」
「「「うっ……ぐわぁ!」」」
大雨、暴風、雷が敵の集団に降り注ぐ。地獄に居るかを思わせる阿鼻叫喚が聞こえなくなると、魔人は全員その場で倒れていた。
「はあっ……はあっ……やりました……」
ユイちゃんもかなり疲れているようだが、気を失う程ではないようだ。やがて雨も止み、太陽が顔を出す。
これで一件落着……とはいかなかった。1人、立っていたのだ。他の魔人とは明らかに違う、禍々しい気配を纏わせ、こちらにゆっくり近付いてくるそれは、私達にとっては悪魔、地獄から這い出てきた鬼のようだった。
「私の下僕をよくもこんな目にしてくれたな、全員死刑だ」
「くっ……」
ユイちゃんはもう戦えない。こうなったら、盗賊を倒したあの技をもう一度……
「森の周辺で大きな魔力反応があったので来てみれば……貴方でしたか、魔王精鋭隊の幹部・ルーラー」
魔王精鋭隊の幹部……何のことかはさっぱり分からないが、凄いというのは何となく理解出来る。
「なっ、何故ここにエルフクイーンが!?」
エルフクイーン? 岩場に隠れたままの私とシャネルは同時に首を傾げた。




