転職魔女、盗賊に襲われる
「そろそろ休憩しましょうか」
今は午後1時、ラルドーラ王国を発ってから1日が過ぎ、私達は魔法の絨毯に乗って森へ向かっていた。残る道程はおよそ40キロメートル、あと1〜2時間で着く距離なのだが、さすがに私の体力が限界に近いのだ。
休憩の為地上に降りた私達は、鞄の中から水と食べ物を取り出す。
「「「いただきマース!」」」
「おっとそこの姉ちゃん達、その前に俺達が頂いてもいいかい?」
私達の近くに1人の男性が現れる。いや、1人ではなかった。いつの間にか盗賊が私達を包囲していたのだ。
「なんだこいつら、絶品の美女2人に幼女だと? 最高じゃねえか!」
盗賊達は下品な声でククククと笑う。ユイちゃんは盗賊達から身を守るために魔法を唱えようとするが、その瞬間、頭を抱えて膝をついてしまった。
「すみません、魔力を使い過ぎたようです」
盗賊達はジリジリと前へ歩み寄ってくる。もう盗賊との距離は3メートルも満たない。
こうなったら……一かバチかやってみよう!
私は冒険者ギルドで何故か起きたあのことを思い出す。
「ん〜っ……はぁー!」
私は勢い良く腕を突き出すが、私の思った通りにはいかず、何も起きなかった。
「ん? 姉ちゃん、どうしたんだ? 行為前のストレッチでもやってんのか? ギャハハハ!」
あんたらに私の初めてを渡すもんですか! と内心で怒りながらも、何度も先程と同じ動作をする。
「お願い、奇跡よ起きて!」
「何のことか知らねぇが、もう待ってらんねぇ……ぜ!」
盗賊達は一気に距離を詰めてくる。私は最後の望みに賭けて、腕にググーっと力を貯める。
盗賊との距離がもう0に等しくなった瞬間、私は腕を大きく突き出した。
「お願い、発動してぇー!」
「っうお! なんじゃこりゃ!?」
私達の周囲にいた盗賊達は何かの力によって吹き飛ばされ、辺りは急に静かになった。
「でき……た……」
「れ、レイカ、今のは何ですか!?」
「冒険者ギルドに行った時、私に近寄ってきた冒険者達に、さっきみたいに叫びながら手を伸ばしたら、皆が吹き飛ばされちゃったの。だから、もしかしたら出来るかなぁーって」
ううっ……と呻き声を上げながら立ち上がろうとしている盗賊達を見て、私達は盗賊に踏まれていた魔法の絨毯の所へ素早く移動し、空を飛んで逃げた。
「……空を飛んだ? 一体何だったんだ、あの姉ちゃん達は……」
■
「全く不運だったねー、まさか休憩してる時に丁度盗賊に会うなんて……」
盗賊に会わないために空の旅をしていたのに、それでも盗賊に会うとは思わなかった。
「いや、あれは偶然じゃ無いかもしれませんよ。例えば……誰かが私達の場所を教えた、とか」
「一体誰がそんなこと教えるの? さすがにないよー」
「そうですね」
魔法の絨毯の上でプチ女子会を開いている私達を遥か上空から見ていたルーラーは、右手の通信機器に向けて言葉を発する。
「魔女と行動を共にしているのは雑魚人間1人とユイネルだ。鉄拳のファーナは居ない。ダンジョンアイテムにて空を飛びながら南の森へ向かっている。そこで作戦通り向かい打て!」
『御意っ!』
「決して失敗するなよ? 魔女の力が目覚めていないうちに仕留めるのだ!」




