転職魔女、円陣を組む
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「っくしゅん!」
「誰かに噂でもされてるんですか?」
私達は王宮の病室で眠るファーナさんを囲んで話をしていた。ファーナさんは魔法のせいで寝たきりになり、病院のベッドで就寝中。私とシャネル、ユイちゃんとヘレンはそれぞれ爆発で負った切り傷などを消毒してもらったのだ。
私は立ち上がり、少し離れた所に設置されている机ヘ移動する。机の上にポツンと置かれた災害の本を手に取り、ページを開きながら言う。
「この本に書かれているのが正しいなら、裏世界の消滅が始まるのは1ヶ月後だって事になる。それまでに魔法を覚えて、裏世界までたどり着いて、災害を止めなきゃならない……」
こう改めて考えてみれば、やはり難易度の高いものだ。1つても情報が正しくなければ、その時点で裏世界を救うことは出来なくなる。
「大丈夫です。いざとなればドラゴン達を避難させれば良いんですから! その時の人員は俺が手を回します」
「でもそれは最悪の手段、それにドラゴン達が私達を信じてくれるかも分からないよ」
災害の本には表世界と裏世界を行き来できる場所や起きる時刻も書いてあり、中にはドラゴンの記述もあった。そして、昔ごく1部のドラゴンは人間に狩猟されていた、という事も載っていた。こんな事件があった上で、人間を信じてくれるドラゴンは少ないだろう。
「レイカ、もう一度災害の内容を教えてくれない? 私、忘れっぽいから」
そうだね、祭りの時も目覚ましかけ忘れてたもんね、とからかってやると、シャネルはうっ……と短い断末魔のような声を上げる。
「1つ目は、ここから100キロメートル南の森の何処かに、表世界と裏世界を繋ぐ泉があること。2つ目は、災害は今までに2度も起きていて、周期が分かってる。周期から分かる次に災害の起きる時刻は今年の8月30日……丁度今から1ヶ月後!」
「1ヶ月……」
シャネルはその期間が良いのか悪いのか分からないらしく、ただその言葉を反復する。
「森までの100キロメートルの道のりは馬車で行けるほど甘くない。道は凸凹だし盗賊も出るかもしれない。辿り着いても、とても広い森から泉を探すのにも時間がかかるし、私の魔法が1発で成功する補償もない……そう思えば、1ヶ月はとっても短い」
「「「……!」」」
静かになった病室を否定するように、私は大きな声を出す。
「でも、私達なら出来るっ! 100キロメートルも、広い森も、きっと攻略できる。だから、裏世界を絶対救うぞっ、オー!」
「「「オー!!」」」
「病室では静かにして下さい!」
「「「ス、スミマセン……」」」
怒った看護師さんが病室から出て行くのを見送り、私達は小声で円陣を組んだ。
「レイカ、若しかすると100キロメートルは攻略出来るかもです」
「どういうこと?」
私はもう一度椅子に座り、ユイちゃんの話に耳を傾ける。
「その100キロメートルの道のりで、凸凹道も盗賊も回避出来る方法があるんです!」
「えっ!? その方法って何?」
「それはズバリ、『空を飛ぶ』です!」
「「「そ、空!?」」」




