転職魔女、男を持ち帰る
「私が、ですか?」
「はい。にわかには信じられないと思うのですが、もうすぐ世界は滅んでしまうんです」
「それってもしかして……裏世界のことでしょうか?」
私は王女様の説明を聞いて即座に頭に浮かんだその3文字を王女様に投げかける。しかし、王女様はピンと来なかったようで、裏世界? と呟いて首を傾げる。
私は取り敢えず、裏世界のことを話すことにした。
「……という訳なのです」
「なるほど……それはきっと、私が言っていたのと同じものですね。私は滅びるのがこの世界と勘違いしていたみたいです」
てへっとしている王女様に、私は思っていたことをぶつける。
「あのっ……」
「その裏世界を助けるため、私に手を貸して下さいませんか? 大変失礼なことを申し上げているというのは承知しています。でも、たとえ違う世界でも、ドラゴン達を見捨てたくないんです!」
私達3人だけの部屋が、しーんと静かになる。ふと我に返ってみると、何故こんなことを言ってしまったのかと後悔した。
王女様は紅茶を飲もうと手元に持っていくが、直前のところで止め、小さく口を開いてはっきりと言った。
「無理です」
まあ、それはそうか。
当然のことだ。王女様ともあろう人が、こんな彼女と全く関係の無いものに首を突っ込むはずがない。
「無理というか、出来ないのです。私は貴族との食事会や式などで予定もつまっているのです。なので、代わりにヘレンを使って下さい」
「なんでそこまでっ……!」
「世界が滅びるのを知っているのに、何もしない人なんていませんよ」
ニコリと微笑んだ王女様の笑顔は、私の全ての悩みや疑問、混乱を包んでくれた。とても温かい感覚だった。
■
時刻午後11時半。
王宮から解放され、自分の家に帰ってきた。流石に皆はもう寝てるかな。明日、皆に謝ろうと決め、ポケットから合鍵を取り出す。ドアを開け、家の中に入ろうとすると、目の前にシャネルが仁王立ちしていた。
「レイカ、おかえり〜!」
パン! とシャネルが手に持っているクラッカーが弾け、ビニールテープが私を覆う。
「びっくりし……」
「うわぁー、びっくりした!」
私の声をかき消したのは、ヘレンだった。実は王宮を出る時に、王女様からヘレンを連れて行って欲しい、と頼まれ、仕方なく家に連れて来たのだ。
私の後ろからひょこっと出てきた彼を見て、シャネルが驚いてし大声を上げる。
「れ、レイカが男を連れて来たぁー!」
ギャアーと叫んで廊下を転がり回るシャネルの様子を見たヘレンは、冷や汗をかいて引いていた。すると、ファーナさんが奥から出てきて、私が見知らぬ男の隣にいて、その近くでシャネルが発狂して転がり回るという、目の前の状況に混乱している様子だった。
「この人はヘレンさん。王宮で知り合って、裏世界のことを手伝って貰うことになったの」
「王宮で?! 凄い人を連れて来たんですね」
「シャネルちゃんとファーナちゃんだね。2人ともよろしく!」
女子3人と素性もよく知らない男1人が1つ屋根の下。これってちょっとやばいんじゃないの? と少し不安になる。
「「ヘレン、これからよろしくね」」
ヘレンはいきなり呼び捨てにされた事に驚いていた。そして、私も呼び捨てにしてやろうと思うのだった。
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