転職魔女、ミノタウロスに謝罪する
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「す、すみません!」
容姿から考えるに、何処かの貴族の方だろう。私は素早く目の前から立ち去り、何とかその場を凌ごうとする。貴族は舌打ちだけを残して通り過ぎていった。
「もー、何ぼーっとしてるんですか? あんな人にも絡まれて……早く行きましょう!」
バチン!
私は頬と手を強く叩く。裏世界がアサシンによって危険な状態になっていても、ファーナさんはそれを我慢して、私が言った通りに祭りを楽しんでいるのだ。私が祭りを楽しまずにどうする。
「急にどうしたんですか? 何で自分にビンタを……」
「ちょっと悩み事があってね、でも、もう大丈夫!」
今日は楽しもう。そして、明日考えよう。
それから私達は、屋台を周り、小道を歩いて、かなりの時間が経過した。
「あと少しでミノタウロスが本道を通ります。見に行きましょう」
いよいよ祭りも大詰め、本道に行くと沢山の人々が本道に集まっていた。
「かなり混んでるねー」
「いえ、今年はかなり少ない方ですよ?」
シャネルの衝撃発言に私は悲鳴を上げる。私達はシャネルおすすめのスポットを陣取り、ミノタウロスが現れるのを待つ。
『まもなく、ミノタウロスが通ります。祭りにお集まりの方々は、道をおあけ下さい』
私達がミノタウロスを待っていると、鈴の音と共にミノタウロスが現れた。立派なツノ、傷跡だらけの黒く大きい体は、ミノタウロスの迫力をより高める。そのミノタウロスの上には調教師と思われる人が乗っていて、群衆に手を振っている。
「大きいです……!」
ユイちゃんはミノタウロスにとても驚いたらしく、目を見開いてそう呟いている。
私がミノタウロスを見つめていると、何と目が合った。その目は私をギラリと睨んでいるような気がして、面白半分で私も睨み続ける。すると、私を睨んでいたミノタウロスが突然暴れ出し、調教師は落ちてしまう。自由の身になったミノタウロスは、私目掛けて猛突進してきた。
山ほどの悲鳴と逃げる足音が響き、飛び交う中、ミノタウロスは私に近づいてくる。
「やばいっ、殺される……」
本能的に命の危機を直感した私は、その場から逃走しようと試みるが、恐怖で足が動かない。
「魔女様、ユイが魔法を使って……」
「魔法は駄目、ユイちゃんの魔力は残り少ないんでしょ?」
ミノタウロスが私を狙っている事に気づき、魔法を使おうとするユイちゃんを必死に止める。ユイちゃんはもう魔力が半分以上無くなっている。これ以上魔法を使うと、前みたいに魔力切れになってしまうかもしれない。
きっと、ミノタウロスは私が睨んだが為に暴走してしまったのだ。きっと、誠心誠意謝れば、許してくれる!
ミノタウロスが丁度目の前に来た時、私は頭を下げる。
「ミノタウロスさん、ごめんなさいっ!」
「いやあ、それはこちらもですよ。魔女様を睨んでしまったこと、誠に申し訳ありませんでした」
へ?
恐る恐る頭を上げると、そこには綺麗な形のお座りをしているミノタウロスがいた。
「僕はミノタウロスのみの太と言います、以後お見知り置きを」
へ?
ミノタウロスが口を動かして流暢に話す姿を見て、私はその場に倒れ込んでしまった。




