転職魔女、正体を知る
「時を遡り、復元せよ『時の復元』」
ユイちゃんが魔法を唱えると、瞬く間に家は荒らされる前の状態に戻った。
「凄い! 本当に何もかも元通り……魔法ってなんでも出来るんだね」
「『時の復元』は対象の状態を1日前に戻す魔法です。物体にしか効果が無く、魔力の消費も激しいので、使い勝手は良くないのですよ。今もユイの魔力の半分は消費されましたし」
また後でユイちゃんに魔力を渡すと約束し、帰り際に購入した立方体の水槽に水道水を入れる。そこに球魚を投入しようとするが、ユイちゃんに止められた。
「レイカ、急に水温の違うところに入れては駄目です! あと、水道水のままだと球魚が弱ってしまいます」
「ユイちゃん、球魚のこと詳しいの?」
「球魚すくいという遊びがあるのは知りませんでしたが、殆どの生物は頭に入っています。さっき買ってきたバクテリアを入れて……」
ユイちゃんの指導で無事球魚を水槽に移すことが完了し、私達は眠りについた。
■
ミノ祭り2日目。
またも寝坊して遅れて来たシャネルと合流し、昨日と同じ道を歩く。
私はシャネルの隣へ行くと、耳元で話しかける。
「昨日、私の家が荒らされてたんだけど……」
「えっ! 荒らされてたってどういう事ですか!?」
「うるさい! 周りの人に聞かれるとまずい内容だから、声の音量下げて」
シャネルは無言でコクリと頷く。
「裏世界は知ってると思うから説明しないけど、そこに住んでるドラゴンが、喉元をタガーのようなもので斬られて、殺されているらしいの。ドラゴン達はその犯人をアサシンって呼んでるらしいんだけど、何か知らない?」
裏世界のことは、神話好きのシャネルのことだから知っていると思うのだが、もしかしたらアサシンの情報も何か知っているかもしれない。
「裏世界は知っています。ドラゴンだけが住むもう1つの世界のことですよね? それで、アサシンのことですが……アサシンは生き物ではありません」
「それって……どういう事?」
「魔女様は神話に出てくる占いの神『アテウス』を知っていますか? アテウスは百発百中の占い師と呼ばれていて、神話にもアテウスの占いが残っています。その占いの1つなのですが……」
私は妙な胸騒ぎを覚える。何故か腕に鳥肌が立ち、冷たい汗が噴き出す。
「僅か数千年後、神秘の世界にそれは訪れる。風は荒れ、地は裂け、生きる神秘の生物は、首が裂け、朽ち果てて土に還る。やがて神秘の世界も朽ち果て、消滅する」
「まさか……」
私は、考えられる中で最悪の答えを頭に浮かべる。
「そう、アサシンの正体は……災害です」
災害。全生物が恐れる、最大の敵。自然の力、圧倒的力、止められない力……そんな絶望の代名詞のような言葉が、頭の中でぐるぐると回る。
私は思わず立ち止まってしまう。あまりに言葉が重すぎた。
「大丈夫ですか?」
「顔色が悪いですよ?」
歩こうにも歩けない。返事をしようにも話せない。ユイちゃんもだが、ファーナさんはこの事を、相手が災害ということを知らないのだろう。正直、相手が生きていれば何とかなると思っていた。話し合ったり、いざという時は魔法で倒したり……そうだ、魔法!
「魔法で災害を止めれば……」
「お主、どけと言っておるじゃろうが!」
気がつけば私の周りには人が居らず、目の前には金の神輿の上に乗った女性が、私に罵声を飛ばしていた。
明日は休載致します。




