転職魔女、決意する
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「ファーナさん、詳しく教えて頂けますか?」
ファーナさんは暗い顔のままコクリと頷く。
「この世界には、表世界と裏世界があります。表世界は今私達が存在している世界です。裏世界はドラゴンしか存在せず、私はそこの生まれなのです」
「ユイもよく父に言われていました。裏世界はドラゴンの巣窟、迂闊に近寄るなと」
裏世界。私も何処かで聞いた覚えがある。確か、山も川も海も無い、何処までも地平線の不思議な場所。
「確かにドラゴンは戦闘力がとても高いです。でも、とても大人しくて、争いなど起きたことがありませんでした。ですが、私がここに来る前、裏世界に居た時のことです」
ファーナさんは静かに語り始めた。
「ある日、私は眠りから覚めて、空を飛んでいました。すると、地上で倒れているドラゴン達を見つけたのです。駆け寄ってみると、喉元をタガーのようなもので斬られていて、もう既に死んでいました」
私は思わずひどい、と声に出してしまう。
「その後も喉元を斬られたドラゴン達の遺体が発見され、その事件は誰かの犯行と推測されました。私は犯人を捜索していたのですが、手掛かりさえも掴めず、ドラゴン達は怯えて暮らす毎日。その時。あなたの噂を聞いたのです、魔女様」
噂? そういえばファーナさんと初めて会った時にそう言われたっけ。
「それはどんな噂なんですか?」
「裏世界には大きな鏡が一つだけあって、表世界で起こっていることを自由に閲覧することが出来るのですが、裏世界に流れた噂は『表世界に魔女が現れた。遥か昔に存在していた魔女とは別の魔女らしい』でした。私は鏡で魔女様の顔、住居を調べ、ここに来たのです」
私は話の意図をようやく理解する。
ドラゴンを殺す者が現れ、誰も太刀打ちできない。そんな状況のとき、魔女が現れたと知って、その魔女に会いに来た。私の解釈が正しいとすれば、ファーナさんが私に会いに来た目的は1つだけだ。
「本当のお願いは、それだったんですね?」
「はい……騙すような真似をして申し訳ありません。でも、初めて会った人、さらにドラゴンなら、こんなお願いをされても困ってしまうのでは無いかな、と思ってしまって……」
ファーナさんは優しいから、きっと頼む直前で私の事を思ってしまったのだろう。
ファーナさんの目には涙が溜まり、顔も赤くなっていく。
私は、静かに確認する。
「……お祭りは、楽しかったんですよね?」
「……うぅっ、はいっ!」
ファーナさんは溜まっていた涙を放出させながら、私に笑顔を向けて返事をした。
「なら良かったです。その頼み事も引き受けます。その代わり、明日は祭りに付き合って下さい」
ファーナさんは何度もコクコクと頷きながら、目から溢れる涙をハンカチで拭いていた。
じきにファーナさんの涙は止まり、呼吸も落ち着いた。
「それで、ファーナさんはこの家を襲ったのはその犯人だと考えているんですか?」
「はい、私を追って来たのだと思います。裏世界のドラゴン達からは『アサシン』と呼ばれています」
「アサシン……」
私の家を無茶苦茶にし、ファーナさんを泣かせ、沢山のドラゴンの命を奪った犯人。私はアサシンを必ず見つけ出す事を、心の中で強く決意した。
補足話:魔力は基本的に減ることがありません。自ら魔法を使って魔力を消費したり、他人に魔力を削られる魔法をかけられるくらいしか、魔力が減ることはないのです。レイカとは別の魔女が作った不気味な置物(ユイちゃんだけが中に入ることが出来る)は、中に入ってる間は魔力が少しずつ削られてしまいます。




