転職魔女、転職の書を見つける
ファルオード王国から歩き始めて30分くらいが経った。
私は今ファルオード王国の隣の国"ラルドーラ王国"ヘ向かっている。ラルドーラ王国へは草原の道を真っ直ぐ歩くと5時間程で着く。その上自然が多く、動物や農産物が沢山売られている。
実はスローライフをするならここにしようと元から決めていたのだ。
「ふう、疲れた……」
少し休もうと、街灯と共に設置されているベンチの方へ駆け寄る。
舞踏館を出たのが午後10時くらいだったので、今は深夜1時頃だろうか。
ドレスは兵士に没収され、馬車の中でおんぼろの服に着替えさせられたので、時計すら持っていない。
私は眠気に耐えきれず、ベンチに寝転がって眠りについた。
「うーん……」
私はベンチの寝心地が良くないので、数分おきに呻き声を上げる。
普段のように寝返りを打とうとするが、失敗してベンチから落ちてしまった。
その衝撃で目が覚めた私は、強打した所を手で覆う。
「痛たた……ん?」
私はベンチの下に落ちている赤い本を発見する。
手を伸ばしてその本を手に取ると、ベンチに座って観察する。
その本は酷く傷んでいて、所々が破けている。
「転職の……書?」
表紙に書かれた文字にはそう書かれていた。
私は恐る恐るその本を開くと、中は白紙のページが続いていた。
ページの中間の辺りを開くと、そこには魔法陣のようなものが書かれていた。
「何これ? 凄く怪しいんですけど……」
私は自制心が目覚めて一度本を閉じるも、その怪しい魔法陣が気になり、もう一度本を開いてしまう。
「ちょっとだけ……」
私は芽生えた好奇心が遂に爆発し、魔法陣を触ってしまう。
はじめは外側の円を指でなぞり、段々中心へとと近づけていく。
指が魔法陣の中心へ来た時、魔法陣が光り出した。
「えっ……ちょっ! 何?!」
私は驚いて腰が抜ける。本は魔法陣のページを開いたまま地に落ちる。光は止まらず、私を包み込む。
あまりの眩しさに私は目を瞑る。
光は数十秒の間光り続けると、段々と光が弱くなり、やがて魔法陣の中に消えていった。
「もう、何だったんだろ?」
私はその本をもう一度取ろうとし、腕を伸ばす。が、私はある異変に気付く。
……服装が、変わっている。
「きゃあ! えっ、何で?」
先程まで身に付けていたおんぼろの服は消え、紫色のロングコートにノースリーブのワンピース、下半身は黒いミニスカートで、頭には紫色のとんがり帽子、靴は黒いヒールに変化していた。
きっと先程開いた怪しい本に魔法か何かがかけられていたのだろう。私は困惑と羞恥心で頭が一杯になる。
「こんなはしたない姿でベンチに寝ていたら、きっとあんな事やこんな事を……」
私は大人数の男性達に囲まれる姿を想像する。
顔が真っ赤になっていることに気付くと、首を振って想像を頭の中から追い出す。
「あんな怪しい本なんて放っとけば良かった……」
私は急いでラルドーラ王国へ向かった。
今日の夕方頃にもう一度投稿します