転職魔女、祭りに感動する
「シャネルさん、遅いですね」
ギルドの前に到着してから30分程が経過したのだが、シャネルがまだ出て来ていない。勿論、集合時間はとっくに過ぎている。どうせ寝坊でもして、今必死に準備しているのだろう。
「ファーナさん、シャネルのことはさん付けしなくてもいいですよ。話すときもタメ口で大丈夫です」
「良いんですか? 流石にタメ口は……」
「ぜんっぜん良いですよ! 人間よりドラゴンの方が明らかに上の立場ですし!」
そんな会話をしていると、ギルドのドアが開いて、見覚えのある顔の女が1人出てきた。
「す、すみませーん! 目覚まし時計が鳴らなくて、寝坊しちゃって……」
シャネルの言い訳は私の予想通りだった。私はシャネルの腹にグーパンチを入れると、ユイちゃんと手を繋いで歩き出す。
「シャネル、痛そうだけど大丈夫?」
「うぅ……大丈夫です。っていつの間にかタメ口になってる!」
目標地点に近づいてくると、ちらほらと道の脇に屋台が設置されている。
「よっ、お嬢ちゃん達! 祭りに行くんだったら着物、着てかないかいっ?」
私達に声をかけたのは、着物のレンタルサービスをやっている店の人だった。私は着物を着ることが出来ないので丁重にお断りしたが、私以外の3人はレンタルして貰うことになった。
数分後、外のベンチに座っていると、3人が揃って出てきた。
シャネルは黄色の鈴が描かれた着物、ファーナさんはオレンジ色のシンプルな着物で、ユイちゃんは大人気キャラクターが大きく描かれた着物だった。ユイちゃんは不満そうな顔をしていたが、私は可愛さに笑顔が止まらなかった。
「皆さん、もうすぐで本道に着きますよ。本道には屋台が並んでいて、祭りの間とっても賑やかになる場所です。ミノタウロスはこの本道を通って行きます」
シャネルが本道の解説が終わり、私達は近道の路地に入る。路地を2分程黙々と歩いていると、突然開けた場所に出た。
「着きました、ここが本道です!」
私はその景色に圧倒される。まだ昼間であるのに、大きな道路が沢山の人と屋台で隙間なく埋め尽くされていて、何処からか太鼓や笛の音が聞こえる。
やはり、上と下では臨場感が違う。地面には、壇上にいる王族や貴族には味わえない不思議な力があり、それがより高揚感を与えてくれる。
「凄いです、これが……お祭り」
「ファーナさん、祭りにはまだまだ凄いことがありますよ。さあ、屋台を回りましょう!」
「屋台?」
「屋台とは、即席のお店のようなものです。まあ、見れば分かりますよ。最初はこちらに行ってみましょうか」
その屋台には、『たこ焼き』と書かれた紙が貼られていた。半円の窪みがある黒い容器に注がれた液体がジューっと音を立て、それと同時に香ばしい匂いが辺りに漂い、私達の食欲を唆る。
「ソースたこ焼き小、4人前で!」
「はいよっ!」
タコとしょうがが入った丸い物体に、青のりとソース、鰹節がトッピングされる。
渡されたたこ焼きに、爪楊枝をぷすりと刺す。
「いただきます!」
さあ、実食である。




