転職魔女、祭りに行く
第15部分「転職魔女、お願いをされる」を1部変更しました。
「ミノ祭りに行きたい?」
全く知らない語呂に、私は首を傾げる。
「はい、昔の頃から祭りに行くことが夢だったんです。この地域で有名な祭りはミノ祭りって仲間から聞いて……どうかお願いします!」
祭りに案内するだけなら簡単そうだし、第1私に拒否権は無い。
「大丈夫ですけど、ミノ祭りってどんな祭りなのか知らなくて……」
「それはこのギルド受付の私がお答えしましょう!」
シャネルはドヤ顔で自分の職業を強調するが、職業名がそこまでかっこよくないのに気づいていないようで、誇らしげに胸を張っている。
「えー、ミノ祭りというのはですね、昔この地域に住んでいた人達が五穀豊穣を祈って始めたお祭りです。祭りは2日間ありまして、2日目の夜にはあの凶暴で有名なミノタウロスが街を徘徊するんです」
ミノタウロスと言えば、魔物では無い生物の中で1番凶暴と言われている。魔物とそうでない生物の線引きは詳しく決められていない。専門的には魔力の質が違うらしく、ある特有の物質が混ざっているとか何とか。
「でも、ミノタウロスが街を徘徊して大丈夫なの?」
「大丈夫です! ミノタウロス1匹にプロの調教師が3人もついていて、未だに事故は起きていません!」
それなら安心だ。まあ、シャネルの言うことだから信用は出来ないのだが。
「その祭りは何時やってるの?」
シャネルはポケットから花柄の手帳を取り出し、ミノ祭りの開催時間を確認する。
「えっと……明日の昼からですね」
「じゃあ……皆で行ってみる?」
「「良いんですか?」」
私が首を縦に振ると、シャネルとユイちゃんの目がキラキラと光る。
「いやー、魔女様って優しかったのですね。ずっと畑作業しとけって言われるのかと思いましたよ」
私を何だと思っているんだ、とシャネルの発言にツッコミを入れ、隣で黙々と何かをしているユイちゃんに目を向ける。
ユイちゃんはいつの間にか隠していたお菓子やおもちゃを、大きいリュックサックにぎゅうぎゅうに詰め込んでいた。その様子に少し和むが、直ぐに表情を立て直すとユイちゃんに少々きつい言葉を浴びせる。
「こら、そんなに持っていっても仕方ないでしょ! 第1、祭りは明日なんだから今用意する必要はないの!」
「……駄目?」
ユイちゃんのつぶらな瞳によって私の心臓の鼓動がとてつもなく速くなる。
可愛すぎるユイちゃんをそれ以上叱ることが出来ず、少しだけにしなさい、とだけ伝えて、代わりにシャネルのほっぺをつねった(50秒くらい)。
その後は皆で畑作業をして、ようやく畝が完成した。
■
翌日。
「ユイちゃん、おはよう」
「おはようです!」
私は下着姿から魔女の姿へと速やかに変身すると、ルンルン気分で鼻歌を歌う。実は私も祭りは初めてなのだ。正確に言うと初めてでは無いのだが、祭りの時はずっと壇上で椅子に座らないといけなかったので、祭り自体を楽しんだことは無い。だからこそ、今日と明日は全力で楽しみたい。
空いている部屋に寝て貰っているファーナさんを起こしに行く。準備が整った私達は、シャネルとの待ち合わせ場所であるギルド前まで歩く。
「なんなら私が飛んで運んであげますのに……」
「もし見つかったら騒ぎでは済まないですよ!」
「ユイは夜行性なのです……ふぁー」
ユイちゃんは眠そうな目を擦りながら大きな欠伸をする。
「さあ、今日は皆で楽しみましょっ!」
「はい!」
「そうですね、私も楽しみです!」
そして、私達はギルド前まで辿り着いた。
お祭り編始まりです。




