転職魔女、幽霊に遭遇する
私は夕飯を食べ終え、リビングへ向かう。
今のところ、心霊現象はまだ起きていない。不気味な置物もリビングのテーブルに置いたままだ。
私がリビングに入るドアを開けようとした時、リビングから何かが倒れる音がした。
少し躊躇しながらもドアを開けると、テーブルの上に置いてあった不気味な置物が倒れて床に転がっていた。
「か、風で倒れたのかな……?」
私は不気味な置物を持ち上げ、もう一度テーブルの上に置いた。
■
時刻22時。
眠たくなった私は、リビングの電気を消して寝室へ向かう。
ゴトン!
突然、かなり近くから何かが倒れる音がした。私は周りを見回すが、倒れているものは見当たらない。
ゴロッ!
今度は何かが転がる音がした。その音は何処から聞こえて来たのか、よく分かった。それは……私の足元だ。
「き、きゃあァァァ!」
私の足元には、テーブルに置いておいたはずの不気味な置物が転がっていたのだ。
私は全速力で廊下を走り、寝室へ向かう。しかし、寝室へのドアは何故か開かない。
不気味な置物は転がりながら、ゆっくりと私に近づいてくる。私は怖くて腰が抜けてしまい、上手く動くことが出来ない。
「……い、いや……助けて、誰かぁ!」
私は必死に助けを呼ぶが、それに答えてくれる人は現れない。私は半泣きになりながらも、姿が見えない何者かと戦うことを決意する。震えた足で立ち上がり、貧弱な拳を作り、テレビで見た格闘技の構えを見よう見まねで構える。
「さあ、来なさいよ。あんたなんて怖くないから!」
私はヤケクソで挑発する。すると、不気味な置物は転がるのを止めた。その場で不気味な置物は震えだし、ピンク色の煙が噴出する。私は口を手で覆い、煙を吸わないようにする。
「その煙は吸って大丈夫ですよー」
知らない人の声が聞こえ、目の前に人影が現れる。煙のせいでよく見えない。
その人影は腕をつき上げて手を大きく広げる。すると、轟音と共に風が吹き乱れ、あっという間に煙を一掃した。
そこには、髪の長い少女がいた。マントのような白い服を着ていて、裸の足は床から少し離れていた。よく見ると体が透けている。
「初めましてです、魔女様!」
「……ゆ、ゆうれい?」
浮いていて透けている白い少女。どの特徴をとっても幽霊としか思えないが、それを疑わせるほど可愛い。
「幽霊なんてあんな奴らと一緒にしないで下さい! ユイはゴーストです」
この少女の名前はユイというらしい。明らかに人外の生物なのだろうが、あまり怖くなったりはしない。『魔女の本』という現実ではまず有り得ない物を何度も読んでいたので、そっち系のことには耐性がついてしまったのだろうか。
「ユイちゃん、幽霊とゴーストの違いって何なの?」
「幽霊は未練を残した人が稀になるもの、それと違ってゴーストは立派な種族です……って何故名前を?!」
「さっきユイちゃんが自分で言ってたよ」
ゴーストは幽霊と言われるのが嫌なようだ。私はその情報を頭の中に入れて、続いての質問をする。
「次の質問ね。さっき何で魔女様って分かったの?」
「それは……オーラです」
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