転職魔女、婚約者に捨てられる
新連載開始しました!
末永くよろしくお願いします
ここはファルオード王国の王都"パルダン"。
私の名前はレイカ=フレーアールン。今はパルダン城内の舞踏館でハンサムな男の人とダンス中。
男の人とはファルオード王国第三王子のヘイン=ファルオードだ。ヘインにはつい先日プロポーズされたばかりで、まだ結婚式も挙げていない。
ファルオード王国では結婚式を挙げないと結婚した事にはならないので、まだ未婚である。確か来週くらいには開催する予定だと聞いたような。
すると突然音楽が止まり、私達は踊るのを止める。
「皆の者聞け! この御方が本日舞踏会に参加される、先週召喚された勇者様じゃ!」
そう紹介を受けて出て来たのは、つり目の女性だった。
この世界には魔王という者が存在し、数年に1度、魔王を倒す為に勇者が召喚される。
女勇者は紫色のドレスを身に着け、用意された豪華な椅子に座る。
すると音楽は流れ始め、皆はダンスを再開する。
私もダンスを再開しようとヘインの方を向き直ると、ヘインは女勇者の方を見つめていた。
「何と美しい……」
ヘインはどうやら女勇者に見とれている様だ。
「ちょっと! 誰に見とれてるのよ!」
私は強引にでもダンスを再開しようとヘインの腕を持とうとすると、ヘインに突き飛ばされ、尻もちを着いた。
「美しい、天使だ……」
ヘインはボソボソと呟きながら女勇者のところへ向かって行く。私はヘインを手放してたまるもんかと立ち上がり、ヘインの後をついて行く。
ヘインは女勇者の前に到着すると、頭を垂れて女勇者の手首を握りしめた。
「そのお美しい姿に一目惚れしました。私と、結婚して下さい!」
え?
ヘインの余りにも大胆な発言に私は混乱する。
「へえ……」
女勇者は舐め回すように私を見ると、ヘインに向かって笑顔を見せる。
「はい、良いですよ。但し、条件があります。私は愛する人を独り占めしたいのです。言っている意味が分かりますね?」
ヘインは少し考え込んだ後、側近の兵士達に命令を下す。
「お前達、このレイカ=フレーアールンを国外追放せよ!」
ええーーー!
私は必死に抗議するも話を全く聞いて貰えず、城外へと連れて行かれる。
脳の半分くらいが混乱状態のまま馬車に乗せられる。国の外まで着くと兵士に1袋分のお金を渡され、何も無い草原へ押し出される。
私は唯好きな人に出会い、恋して、幸せに暮らしていただけなのに、何故こんな目に合わねばいけないのだろうか。
まず、1つ目の原因はあの女勇者だ。
あの女勇者はきっと何かを企んでいる。ヘインを利用する為にプロポーズを承諾したのだ。
そして、2つ目の原因はヘインだ。
ヘインは兎に角チョロ過ぎる。
一応私達は結婚の約束までしていたのだ。
私はあの女勇者のせいで婚約破棄され挙句の果てに国を追放されたのだ。残っているのは腰に提げているお金だけ。
何時までもくよくよしていてもしょうがない。
私の良いところは美人なのとポジティブだというところだけだ。
こうなったら、何が何でも夢に見るスローライフを送ってやろう。
私はその決意を胸に、ファルオード王国から遠のいていった。