子供で博識って凄くね
叫び声を挙げながら光に包まれた俺はジジイの胸ぐらを掴めず、視界が真っ黒になった。それからどれほど時間が経ったのかは分からないが、気が付いた時には誰かの声が聞こえてきた。
「見ろ!起きたぞ!」
「あらー、起きちゃったのね。」
「ねー!アルフの面倒は私が見ていいの!?」
「まだ赤ちゃんだから流石にな、でもお父さんたちと一緒にならいいぞ。」
「わーい!お姉ちゃんがしっかりと面倒見てあげるからね!」
「ふふっ、お姉ちゃんはアルフが好きなのね。」
目を開けた瞬間見知らない人たち三人の顔が覗き込んでいた…正直怖い、赤ちゃんってこういう心境なんだな。そう思いながらも俺は周りをできる限り見渡す。赤ちゃん用の籠の中にいるのは分かるが、それのせいで余り周りを見渡すことができない上に…三人の顔で前の視界がいっぱいだ。
「あなた、そろそろこの子もお腹が空いてるだろうし…」
「あーそうか、それじゃやってくれ。」
「お父さん、何をするの?」
「まー見ていなさい。」
んっ?今お腹が空くと言ったか?これはまさか…俺はお父さんであろう人に籠から抱き上げられて、そのうちお母さんは近くにある椅子に腰がけてドレスの肩のストラップを外した…
いやちょっと待て!駄目だ!絶対に駄目!俺これでも中身は青年だよ!?思春期真っ只中の青年だよ!?えっ、ちょっと待って!お願いだから今この状態でお母さんに渡したら駄目…あっ。
俺はお母さんに抱きしめられた瞬間、考えるのをやめた。何故かって?そりゃ目の前に大きな山が二つあるから…それから数分後、俺はお花畑から元の世界に戻ってきた。
「それじゃあ私はまだ仕事があるから先に行かせてもらうよ。」
「分かったわ、私はもうしばらくアルちゃんと一緒にいるわ。」
「私もいる!」
「アシリアはこれからお勉強よ。」
「えー!?」
「勉強が終わったら一緒にアルちゃんの面倒を見ようね。」
「うん分かった!」
納得すんのかよ…姉さんと父さんは俺を撫でて、部屋を出て行った。
「それじゃ、アルちゃんはお母さんと一緒にお寝んねしましょうね。」
何か小っ恥ずかしいな、だけど今の俺じゃ何もできないし寝るか。そう思いながら俺はお母さんの温もりを感じ、安らかに眠った。
それから、俺は主に食っては寝てを繰り返していたが、多少は有力な情報も手に入れれた。まず、俺の家族は貴族だが特に地位が高いわけではなく、一般的な貴族だ。そして領地も広くなく、小さな村一つだけだ。だが、それのせいで不便になることはない、むしろ最高な状況だ。ここならゆっくりと面倒ごとに巻き込まれず生きていけるし、これ以上に俺にとって好都合なことはない。
次に得た情報は魔法だ。そう、俺が夢にまで見てた魔法、あれが叶うというのだ。だが、ただ魔法が存在しているのを知っただけで、魔法について勉強をするにしても書籍まで行けないし、読んでもらいたくてもその願いを伝えれない。というかあのクソジジイが最後に言ってた有力なスキルが何なのかすら分からない。その点しっかりと説明してほしいものだ。
「そうじゃな、それに関してはすまなかったのう。」
この声、まさか!?てめーかクソジジイ!?
「ほう、やはり赤ちゃんだったら喋れないのか。ふむ、ほうれあの時みたいに胸ぐらを掴もうとしてみろこのクソガキ!」
ジジイ…確かに今の俺はお前に対して何もできない…だが成長した暁にはテメーを殺す。
「むっ、おっほん。それよりお主の先ほど思っていたことじゃが、スキルや魔法の説明じゃな。」
もしかしてこいつ俺の思考が読めるのか?
「読めるぞ、じゃから喋れなくても意思疎通は可能じゃ。」
それじゃあ色々と説明を頼む、それと次勝手に思考読んだら殺す。
「わしはこれでも一応神なんじゃがな…」
少し悲しそうに言いながら、ジジイは近くの椅子に腰がけた。