最後だから
「臨時ニュースです。」
アナウンサーが少したどたどしながら放ったたったひとつの臨時ニュースから始まった僕らの最後へのカウントダウン
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初日
「ははは…なんかよくわからないね。」
僕はそう言って彼女に語りかける
「そうね。本当に突然なのね。」
「まさか一週間後に地球が終わるなんてなぁ…全く実感がない。」
「当たり前でしょう。いきなり一週間後お前は死ぬって言われたのと同じよ?ぱっと『そうか』なんて納得いくわけないじゃない。」
「…」
「外、騒がしいね。」
「私たちみたいにぼんやりしてる人もいるわよ。」
「そんなものなのかな…」
「結局変わるのは1日2日くらいでそこからどうせ落ち着くわ。」
「じゃあ…今日はのんびりで、いいかな。仕事もどうせ行ってもいかなくても変わらないと思うし。」
「そうね…」
僕達は外の騒がしい声を受け流しながら1日何もせず過ごした
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2日目
「おはよう…」
「おはよう」
「寝過ぎちゃったよ。仕事がないって思うと気が楽になるね。」
「何かあった方が充実には思えると思うのだけれど。」
「僕はこっちの方が気楽だな。プレッシャーとかもないし。」
「…どこか出かけてみる?」
「そうだね。」
僕達は支度をして散歩をしに行った
「なんだか思ってた外の様子と違うな。」
「どんなふうに思ってたのかしら。」
「もっと賑やかそうに人が荒れ狂ってそうなイメージだったのに…つまんないな」
「そういう発想はあまり良くないわよ。」
「そうだけど…一週間後に死ぬってわかってるんだから別にいいじゃない。」
「…あら、交番ってやってるのね。」
「本当かい?…よくやるなぁ」
「いつもと変わらない日常を過ごす人もいるのね。」
「そうだね。」
僕は交番の前を通って帰った、交番の人なのかどうかははっきりしていないけれど優しそうな笑みを浮かべていた。
僕はその笑顔の少し後ろから長い髪の毛とロープが見えた。
…僕には関係はない
「あなた今『助けて』って聞こえた?」
「ははは。疲れが溜まってるんじゃないかい幻聴なんて君らしくもないよ。」
黙って静かにそこから立ち去った。