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女性の数が9割以上の世界に俺は降り立ち、イロイロと苦労する  作者: 銀色の侍
第九章 アゲルタム飲食店、料理対決編
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少年、相手のカラクリを考察する


 仮面女と戦いながらファストは自分以外の仲間達の現状を確認していた。サードやクルスは今の情勢から心配はいらないだろう。だが、クチナシと戦闘中のブレーは少し援護が必要かもしれない。2人の実力はほぼ拮抗しているが、見た所ではスピード面はクチナシの方が上に見える。破壊力はブレーが上回っているが、どんな強力な攻撃もそもそも当たらなければ意味がない。

 

 「アラ、ソンナ二彼女ガ気二ナル?」


 体術を駆使してファストに攻撃を仕掛けて来る仮面女。

 繰り出される拳や蹴りを全て受け流しながら、逆に腹部に蹴りを放つファスト。


 「クッ…」


 苦悶の声を仮面の下から漏らしながら蹴られた箇所を押さえて後ずさる女。そこにファストが刀を振るい、風の斬撃を放ち追撃を加えんとする。 

 だが、放たれた風の塊はクチナシの身体に直撃する直前に飛散した。


 「な…何だと?」

 

 今までどこか余裕を持っていたファストであるが、ここに来て初めて焦りの色を見せた。

 刀から射出された風の斬撃は相手に当たる直前に飛散した…というよりファストの眼には吸い込まれた様にも見えた。

 何か種がある筈と考えていると、仮面の下から女の笑い声が聴こえて来た。


 「凄イワネコノ魔道具ハ。威力ナド関係ナク相手ノ魔法ヲ吸収出来ルトハ♪」


 魔道具と言う単語に反応を示すと、それに応えるかのように仮面女はローブの腕の部分を捲り上げる。

 するとそこには金属でできたような籠手が装着されていた。


 「アナタト私トデハ力量二差ガアリ過ギルカラネ。コレ位ノハンデハ勘弁シテネ♡」

 「なるほど、その魔道具で俺の魔法を吸い取ったのか」


 冷静に相手の魔道具の性質を見極めるファスト。

 先程の彼女の発言と、そして風の斬撃を吸い取られた事から魔法を吸収する事は間違いない。だが、それ以外にも何かしらの機能が備わっている可能性も十分考えられる。

 そしてもう一つ、彼には気になっている事があった。


 「その魔道具…もしかして…」

 「…フフ、察シノイイオ兄サンネ」


 装着している籠手を撫でながら、彼の言いたいことが分かり小さく頷いた女。

 

 「ソウ、以前二私トアナタガ戦ッタアノ場二居タ子豚君カラ頂イタ戦利品ヨ」

 「あのデーブとやらの持っていた魔道具……」


 ファストの記憶では、以前目の前の女と戦っている時に乱入して来たデーブの姿が思い返される。あの時、目の前の女を倒そうとした時にあの小太りの男に乱入されて逃げられてしまった。しかも、あの男は魔道具が入ったトランクを奪われていた筈だ。


 「クリスタル王国の魔道具。思い返すとあの男は本当に余計な事しかしてくれないな」


 この場に居ないデーブに対して悪態を吐くファストであるが、その怒りは目の前の女によって沈静化される。


 「ソウ怒ラナイデアゲテ。モウコノ世二存在シナイ者二悪態ヲ吐クモンジャナイワ」

 「! ……どういう意味だ?」

 「別二? ソノママノ意味ヨ」

 「……」


 詳しくは語らないが、恐らくこの女はあの小太り男を殺している。

 ファスト達もこの女が消えた後、別れたデーブの行方は知らない。自分たちはクリスタル王国へ戻ったと思っていたが、その道中で殺害されたという事だろう。

 別段あの男に対して良い印象は何一つなかったので、あの男が死んだ事に関して悲しみに暮れるなどはないが、男性を殺したという点が引っかかる。


 「お前…お前達の目的は何だ? あそこのクチナシも俺を襲撃して来た。世に居る男を皆殺しにする計画でも練っていのか?」

 「サアネ?」

 「あんな〝男〟と言う性別しか取り柄の無いヤツを殺すぐらいだからな…」

 「質問ノ多イ男ネ。シツコイ男ハ嫌ワレヤスイワヨ」


 そう言って彼女はファストへと一直線に跳躍して接近戦を再び仕掛ける。

 放たれる拳を腕でガードするが、拳が当たった瞬間にファストの顔が僅かに歪む。腕に走った衝撃が先程以上に大きくなっているのだ。


 「っ! (これは…!?)」

 「マダマダァッ!!」


 呼吸を止めて無呼吸連打を繰り返す仮面女。

 放たれる無数の拳を防ぎながら、腕に蓄積されるダメージを怪訝に思うファスト。明らかに先程より女の攻撃力が上がっているのだ。


 「(何かカラクリがあるな…)」


 女の連撃に応戦しながら、攻撃力上昇の謎を考えるファスト。

 彼の視線はローブで再び隠されてしまった、籠手を装着している腕部分に向けられていた。







 ファスト達が戦闘を繰り広げている最中、サクラは避難している観客達の護衛をしていた。自分以外にもギルド所属の女性が数人護衛についてくれており、そしてようやく安全な場所まで観客達を送り出す事が出来た。

 護衛の最中は死人が襲い掛かって来ることも無くスムーズに誘導する事が出来た。こちら側に死人が来なかった事を考えると向こうは優勢だという事だろう。そう思うと少し安堵するサクラであるが、すぐに表情を引き締め直す。


 「皆、私は戦闘現場に戻るから一応警戒はお願いね!」


 護衛に協力してくれたギルドの女性にそう言うとサクラはファスト達の元へと戻ろうとする。だが、彼女の横を誰かが小走りで走り抜けようとする。

 飛び出して来た女性を見てサクラはそんな少女の腕を掴む。


 「な、何やっているのレンゲさん!?」

 「ちょっ、離して!」


 飛び出して来たのは先程ともに非難をしていたレンゲであった。

 非戦闘員である彼女は自分が足手まといになる事を理解し観客と共に避難していたのだ。しかし、そんな彼女はどういう訳か戻って来て、しかも危険な戦闘現場へと赴こうとしている。

 もちろん黙って見過ごす事が出来る訳も無く引き留めるサクラ。


 「危険ですよ! 向こうでは未だ戦闘が続いているんですよ!」

 「だからこそ尚更行かないと!!」

 「サード君が心配な気持ちは分かります! でもハッキリ言って貴女が行っても…」

 「サード君の事じゃないよ! いやサード君も心配だけどそうじゃなくて……ああもうっ!」


 焦りで考えが纏まっていないのか、レンゲの発言が少し支離死滅気味になっている。するとそこに後を追って来たメイシもやって来た。そして何故だか彼女と共にフルドも一緒に居た。


 「メイシさん…貴女もどうして?」

 「…居ないのよ」

 「え…?」


 メイシは隣に居るフルドを見ながら続ける。

 

 「フルドの店の娘…ナポリちゃんが居ないのよ」

 「ええっ!?」


 メイシの言葉に驚き反応を示すサクラ。

 それはつまり、まだナポリは戦闘の行われているど真ん中に取り残されているという事だ。しかも彼女には戦闘能力は恐らくない。つまり抗う力を持たない少女が取り残されているという事だ。

 それに気付いたレンゲは彼女を迎えに行こうとしているのだ。


 「さすがに放ってはおけないよ! サード君は私なんかと違って強いから心配してないけど、でもあの娘は私と同じで弱いんだから!!」


 サクラの瞳を見つめながら訴えるレンゲ。

 するとサクラはレンゲの腕を離すと、彼女の手を優しく握った。

 

 「わかりました。じゃあナポリさんは私が保護します。だからレンゲさんは待っていてください」

 「で、でも…」

 「やめなさいレンゲ」

 「…メイシさん」


 サクラに説得されても納得いかないと言う表情を浮かべていた彼女だが、メイシに止められて静かになった。


 「私たちが行った所で足手まといにしかならないわ。だからここはサクラちゃんに任せるべきよ。ナポリちゃんを助けても私たちがやられては元も子もないでしょ」

 「…そう…ですね…」


 一ミリも反論の余地もないその言葉にレンゲは頷く事しかできなかった。

 自分にはこの状況で出来る事は無事を祈る事しかない。悔しいがそれが事実なのだ。だから彼女はサクラの手を握り返して彼女へと頼み込む。


 「あの娘…ナポリをお願い」

 「はい、任せてください!」


 力強く返事を返すと、サクラは身体を強化してファスト達の元へと全速力で駆けて行く。

 その後ろ姿を見つめるレンゲ。そんな彼女に対してフルドは怪訝そうな眼を彼女に対して向けていた。

 



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