8:不正疑惑と攻略再開
書き溜めが底をつきそうです。
途中の膨大な話を省くからこうなる(´・ω・`)
同日19時くらい
大幅…ってほどではありませんが、加筆修正しました。
新しく伏線を張ったりしましたので、もう一度閲覧くださればと思います。
「おい」
女性陣の硬直が解けた所に、不意に声を掛けられる。若い、中・高生くらいの男だった。
アクアとミサミサが怪訝な表情になるのを見て、それはこっちの反応だとばかりに夜白を睨みつける。無論、夜白は何も悪行を行っていない。
「お前だよ。チーター」
「?」
突然指さされた夜白は、ピクリと眉を動かしてから首を傾げる。
アクアとグランドが再度あんぐりと口を開けている横で、ミサミサは表情をこわばらせていた。
「チーター」という単語に反応したのか、ちらほらと人が集まり始める。
「今すぐ運営に通報してやるからな!」
「???」
プレイヤーの犯罪者を見るような視線に刺されて、夜白は更にわけが分からなくなった。そもそも、「チーター」という単語を聞いたことがない。
「チーターって、なに?」
「しらばっくれんな!」
そう叫んで手元を操作し終えた男プレイヤーは、してやったとばかりにニヤリと口元を歪めた。
「アクア、チーターって何?」
「不正ツールを使ってゲームで強くなったり、お金を増やしたりすることね」
「そんなのあるの?」
「犯罪よ」
苦虫を噛み潰したような顔をして、アクアは夜白の頭に手を置いた。
確かに夜白の動きは、素人から見れば不正に見えるかもしれない。
夜白は『殺し屋』の中でも、特異な部類に入る。生まれつき、もしくは生まれる前から『改造』を施された夜白は、ある意味『不正』をしているともいえる。
「私は――」
ちょん、とミサミサの服の裾を引っ張ったところで、夜白の意識は半ば強制的に引き戻された。
鳴り響くアナウンスと共に、プレイヤー全員の眼前にウィンドウが出現したからだ。
『運営より
通報を受けた不正行為の調査が完了しましたので、ご報告いたします。
プレイヤー名:Yashiroは不正ツールを使用しておりません。』
「……は?」
夜白に突っかかって来た男プレイヤーが、呆気にとられて素っ頓狂な声をあげる。
グランドとアクア、その他プレイヤー達も、唖然と立ち尽くしていた。
「……素で、あれか?」
男プレイヤーがぽつりと呟いた。
その場にいたプレイヤー達は皆一様にインターネットを開き、我先にと掲示板にアクセスを始める。
「……ふぅ」
ミサミサが溜息を吐いた。
夜白はそれに同調するように胸をなでおろす。
「ミサミサ、再開」
「そーしようか夜白ちゃん。兎に角ここを離れよう」
ミサミサが夜白の頭に手をのせて撫でまわす。
夜白は未だ硬直しているアクアとグランドの裾を同時に引っ張り、少し強引に意識を引き戻した。
* * * * *
「もっと奥、行きたい」
「ヤシロちゃんそれ、誤解されるよ?」
「おめぇら少しは自重せいや」
プレイヤー達がまばらに散っていった後も狩りを続けた結果、ミサミサのレベルは5まで上がっていた。モンスターに満面の笑みで突っ込んでいくのは、婦警さんとしてどうなのだろうか。
グランドは少しうなってから、少し申し訳なさそうに、やんわりと誘いを断った。
「俺らはもう少しミサミサさんのレベル上げ手伝うぜ。行くなら気を付けてな」
「行ってきます」
「いってらっしゃーいっ」
夜白は主にミサミサが迫ってくるかと思ったのだが、どうやら現在戦闘中のようだった。
ぶんぶんと両手を振るアクアの前を素通りすると早速、前方に『ブラックウルフ』が三匹群れているのを発見した。
「すぅ――」
夜白は静かに息を吐くと、『ブラックウルフ』との距離を一気に詰めた。
一向に気付かない『ブラックウルフ』の首を三連続で刎ね、戦闘を終える。
「ふぅ」
息を整え、更に奥へと薄暗い道を進む。
3分程進んでみたが、道中に出るのは『ブラックウルフ』だけで、今の所罠にもかかっていない。
「ん」
一層にボスなどいるわけがなく。
夜白は早速二層へと続く階段を見つけてしまった。今までと変わらない紫と黒の中間色の岩でできた、ごつごつとした階段だ。
階段を見つけた部屋は今までの部屋より広く、モンスターの出てくる気配が皆無だった。この部屋が俗に言う『セーフティーエリア』というやつだろう。
「行こ」
階段の内装も、これまでと大して変わらなかった。
長いものかと覚悟していたのだが、案外あっけなく二層にたどり着くことができた。段数は数えていないが、体感的には一般的な建物の一階分と同じくらいだろう。
二層も変化に乏しく、変わった事といえば出現するモンスターくらいだった。
一層では『ブラックウルフ』だったのに対して、二層は以前の兎――『ホワイトラビット』だ。
またプレイヤーも多く、先程の騒ぎを知る者達が夜白の方をちらちらとよそ見している。夜白を見ている隙に兎に攻撃されているプレイヤーも多い。
「ふー、一気に行こうかな」
短剣を握ってトン、と一度軽く跳ぶ。ワンピースがふわりと舞い、覗いた素足にプレイヤー達は鼻を伸ばした。
「……気持ち悪い」
不満気に呟きながら、夜白は一気にプレイヤー達の間を駆け抜けた。
途中で前に立ちふさがる兎の首を切り裂きながら、二層の奥まで全力疾走。AGIが高いおかげか、一層と同じく3分程で辿り着いた。
一層と似たような『セーフティーエリア』と、次の層へと続く階段。
プレイヤーの多種多様な視線を浴びながら、夜白は躊躇うことなく三層に降りた。
* * * * *
それから進むこと小一時間。夜白は特に苦戦することなく、現在は最前線である18層を進んでいる。
人型はゴブリンやオーク、動物型は羊や牛など、15層まではモンスターが多種多様な組み合わせでポップした。
16層は熊型の『ブラッディベアー』、17層は『リザードマン』と16層からは一気に難易度が跳ね上がった。
そして今いる18層は巨大な斧を使う『ミノタウロス』だ。レベルは階層と同じ18で、進むのに時間がかかるようになってきた。
「ふっ――」
飛び掛かってきた『ミノタウロス』の斧を受け流し、短剣を首に突き刺す。皮膚が硬かったせいで奥まで貫けず、HPバーが半分程残った。
「チッ――」
夜白は一撃で仕留められなかった事に苛立ちながら、再度攻撃しようと斧を振り上げる『ミノタウロス』の首から短剣を引き抜き、『暗殺術』の短剣スキルを発動する。
「『スラッシュ』」
攻撃力が引き上げられた一撃が『ミノタウロス』の首を捉え、刎ね飛ばす。HPバーが消失するのは同時だった。
「ふぅ」
一息ついたところで脳内にファンファーレが鳴り響く。レベルが15に上がった、という合図だった。
感覚が完璧に再現されているものだから、この世界がゲームの中だということを忘れそうになる。故に、鳴り響くファンファーレが『頭の中』で鳴っているあると認識してしまう。
――本当にゲームなのだろうか?
「まー、考えても仕方ない――」
自問自答しながら前進すると、その部屋の奥に階段を発見した。
「あっけない」
少し期待を抱きながら、夜白は階段を降りていった。
* * * * *
【NRW】謎の白ロリについて語るスレ
346名前:名無しロリコン
速報だ。
迷宮で例の白ロリを見てな、その動きがチート過ぎて男プレイヤーが運営に通報したんだが……
チート未使用だった。
つまり素でアレ。プレイヤースキルでアレ。
あの娘どうなってんだ?
347名前:名無しロリコン
≫346
プレイヤー名出てただろ。Yashiroちゃんだ。ヤシロちゃんだ。
確かにあの動きはヤバかった。
エフェクトが出てないからスキル未使用だろ?
なんで狼に気付かれないんだよ。
……まさかリアルでもアレ、とか?
348名前:名無しロリコン
強い幼女……これは神の試練なのだな。
俺はリアルでヤシロちゃん探し出す!
ぺろぺろしてやるぜ!
349名前:名無しロリコン
≫348
おさわりまんこの人です
350名前:名無しロリコン
≫348
悪いこと言わねえからやめとけ。
351名前:名無しロリコン
とりま誰かヤシロたんの戦闘kwsk
352名前:名無しロリコン
≫351
ヤシロちゃんがおっさん一人、お姉さん二人とパーティで狩りしててな。
おっさんにヤシロちゃんがなんか言ってな。
一瞬で消えた。
353名前:名無しロリコン
≫352
ファッ!?
最近の幼女は消えるらしい。
354名前:名無しロリコン
≫352
消 え ん の ?
続きkwsk
355名前:名無しロリコン
≫352の続き
「はて?」てなってたら何かが落ちる音がしたんだよ。ドサッてな。
んで少し奥の方見たらな、幽霊みたいに静かに立ってんだよ。
無表情のまま一瞬で狼三匹殺したヤシロちゃんが。
あんときはマジで背筋凍った。
一瞬で狼三匹? プレイヤースキルでアレ?
冗談じゃねぇ。手出したら死ぬぞ。
356名前:名無しロリコン
≫355
最早「怖い話」じゃねえかww
……え、まじ?
357名前:名無しロリコン
≫355
イベントが楽しみだな。
あれは暗殺じゃなくて正々堂々だからどうなることやら。
358名前:名無しロリコン
それだ。暗殺者だ。
え、リアルで暗殺術?
この件についてはしばらく保留だな。