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24:予選②

遅れてすみません。


ナイアちゃんが出てきます。

 試合を終えて酒場に転送された夜白は、早速プレイヤー達に詰め寄られていた。

 あれどうやった。ステータスが何だ。現実では何をやっているか。一万出すから今度――などなど。確かに気になるのは理解できるが、現実での話は禁止行為だった筈だ。


 ――というか現実の話ならまだしも、一万出したら……の下りは本当に吐き気が催される。夜白とて、無知な幼子ではない。つい最近ではあるが、その行為の意味する事は知っているのだ。


 日本は平和な国だと思っていたが、こうも犯罪者だらけだとは思ってはいなかった。養母達は何をしているのだろうか。『郷に入っては郷に従え』等ということわざがあるらしいが、つまりそれは外見で差別されたりするのに抗ってはいけず、援助交際にも応じろ、という事だろうか。怒りがこみ上げてくる。


「今度リアルでお会いできませんか?」

「最初のあの動きはなんだったんだ!?」

「今度話聞かせてよ! なんかおごるからさ!」


 しつこいったら、ありゃしない。終わる兆しが見えない、要求の数々。好機と色欲に塗れた視線にさらされながら、夜白はアクアの姿を探す。


「……邪魔」


 この胸を渦巻く感情には、覚えがある。

 殺意。殺人欲求。正義とも偽善とも異なる、おどろおどろしい悪感情。夜白には、このままこれを抑えきれる自信がない。


「ヤシロちゃん!」


 不意に、アクアの声が響いた。


「……はぁ」


 夜白の機嫌が悪いのを察したのだろうか。それとも夜白が囲まれているのに危機感を抱いたのだろうか。どちらにしろ、アクアの空気を読む能力は異常である。

 ともあれ、向こうから迎えに来てくれるのはありがたい。夜白はありったけの殺気を籠めて、周囲を睨みつける。


「ひぃっ」


 ……などと間抜けな声を漏らしながら、プレイヤー達の大多数が今にも失禁しそうな様子で後ずさった。これ程効き目があるとは思ってはいなかったが、確かに現実でも結構な効果があった。確かに、一般人には耐えられないだろう。


「あっ」


 二人の元へ戻ったところで、アクアが間抜けな声を漏らす。夜白の殺気が緩むと、プレイヤー達は妙によそよそしく生命活動を再開した。死んではいないのだが。


「出番だわ」

「ん。いってらっしゃい」

「いってきまーすっ!」


 最後に夜白にハグをかました後、アクアは空中に手を滑らし始める。

 というか、アクアよりグランドの方が先だった筈だが――


「あぁ俺か? 気にすんな。勝ったから気にすんな」

「……大丈夫?」

「あぁ、だからもうほっといてくれ」


 手遅れだった。グランドは机の上に項垂れ、振り向こうともしない。FXで有り金全部溶かした人のような形相である。

 無駄口を叩いている内に、アクアが舞台に転移してしまった。夜白は手元のウィンドウに目を移し、椅子に座って試合の様子を眺める。プレイヤー達はもう夜白に絡んでこないようだった。



   *   *   *   *   *



 ――場所は変わって、アクアのステージ。


 中心から少し離れた所――スタート位置で、アクアは杖を片手に佇んでいた。


「あー、ヤシロちゃんもふりたいわー」


 人肌が恋しい。アクアは茶色のポニーテールを揺らしながら肩を抱く。

 最近の不満と言えば、ミサミサと間違われる事だ。髪が青いミサミサの方が、アクアのイメージが強いらしい。


「おっ、きたきた」


 ステージの反対側が発光し、やがて人を形作る。対戦相手のお出ましだ。

 自分と対戦相手の名前とレベルが記載された、巨大なカウントダウンウィンドウが出現するのを見て、アクアはあることに気付いた。


「……って弱っ」


 Lvはまさかの20と少しで、職業(ジョブ)は初級職のファイター。Lv40オーバーのアクアからしたら、赤子も同然だ。

 ……そういえば、ヤシロちゃんも初級職だった気がする。だが気にしてはならない。あれとこれとは別物だ。


「まー、適当にやったりますかー」


 カウントが残りわずかになるのを見て、アクアは杖を構えた。


 『試合開始』


 無機質な声が告げる。


「『ブリザード』」


 カウントが0になるのとほぼ同時に大気の気温が急激に下がり、氷の粒を形成して大嵐を起こし始める。

 試しに一発。それなりに強めの魔法名を言い、敵の様子を見る。

 1割も減ってないMPと、勢いよく削れていく対戦相手のHPを見比べながら、アクアは溜息を吐いた。


「なんで初心者が迷い込んでるのかしらねぇ」


 対戦相手のHPはそのまま尽き、嵐が完全に収まった時には既にその姿を消していた。


『Winner:アクア』


 システムメッセージが表示されると同時に、宙をうくような感覚がアクアを襲う。

 呆気なく葬り去られた――というか葬り去った対戦相手の顔を見ることなく、アクアは勝利を収めた。



   *   *   *   *   *



「参考にならない」

「まぁまぁ、そう言うなって」


 酒場の片隅にある席で、ようやく気を取り直したグランドが夜白をなだめる。

 しかし事実、アクア対初心者の試合は全く参考にならない。言ってしまえば、蚊を殺すレベルの内容だった。


「まぁ、確かに酷くはあったな」

「……ぐらんど、もしかして「まぁ」が口癖?」

「いやまぁ、つい癖でな。ていうか今頃か?」


 苦笑いを浮かべるグランド。夜白は今までの会話を思い出して、やはりかと相槌を打つ。


「今までは、そんなに言ってなかった」

「いやぁ鋭い。お、戻って来たぞ」


 若干のタイムラグがあるのか、と納得する。よくよく見れば、転移してくる位置の床に魔方陣らしきものが書かれている。転移が終了したら消える様だ。


「たっだいまー!」

「んむっ」


 油断していた。アクアにとって、ハグは挨拶みたいなものだった。

 後頭部と首の間に腕を回されて、夜白の顔は巨大な胸に押し付けられる。

男性にはぱふぱふというものが好まれるらしいのだが、夜白にとってはただ苦しいだけだ。これの何がいいのか理解できない。


 ……仕方なく息を止めて、無抵抗と同時に無心を貫くことにしよう。


 しかしこうしていると、あながち悪いものではないとも感じてしまう。


「さーさー、次の試合が始まってしまうわ」

「……はぁ」


 ようやく解放された夜白は、どこか物足りなく感じ……てはいないが、兎も角溜息を吐く。

 椅子に座ったアクアが膝の上においでアピールをしていたが、無視。グランドを挟んで反対側の席に座り、夜白はイベントのウィンドウを開く。


「……あいつか」


 ウィンドウに表示された『ナイア』の文字。レベルが50オーバーだということで、一般プレイヤー達にも注目されているようだ。

 しかし対戦相手も負けてはいない。レベル45――つまり、アクアと同じくらいだ。


「ん」

「始まるな」


 画面にパーカーを着た少女――ナイアと、いかつい鎧を身に纏い、希少そうなバスタードソードを両手で握った対戦相手の男が現れる。

 離れた位置で男が剣を構えて深呼吸をする一方で、ナイアは口に手を当ててあくびをした。

 試合が始まるのを今か今かと待ちわびるプレイヤー達から不満気な声が漏れる。グランドもその一人だった。


「……何やってんだあれ」

「さあ」


 夜白がそっけなく答えた所で、カウントダウンがスタートした。

 ナイアは相変わらずで、杖も剣も持たずにのびのびと過ごしている。


 そして、カウントダウンが『0』になった瞬間――。


『******』


 ナイアが何かを呟いた。


「……?」


 夜白が首を傾げると、対戦相手の体が硬直して地面に崩れ落ちる。麻痺のようだ。

 続いてナイアがパチン、と指を鳴らす。


「……え?」


 ――刹那、巨大な剣が男の体を貫いた。


 観戦しているプレイヤー達も呆気にとられる。

 巨大な剣は地面から突き出たのかと錯覚したが、違った。よくよくみたら、体内から地面に向かっても突き出ている。

 当然、一瞬でHPを全損した男は、粒子と化してステージから退場させられる。


『Winner:Nyar』


 システムメッセージが大きく表示されたのと同時に、ナイアがニヤリと笑みを浮かべた気がした。

夜白ちゃんが絡まれて、ナイアちゃんが無双するのん。


受験が近づいてまいりましたので、更新頻度が低下します。

下手すると一週間更新できないかもです。


落ちたらエタります。

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