16:本題へ
さあ繋がっていきます。
時間が無くて内容が短くなってしまう。すいません。
「さて……再開するか」
「その前に、夜白ちゃんと何があったのか聞かせてもらうわよ!」
何食わぬ顔で話に入ろうとする斎藤に、養母が抗議の声をあげる。そんな養母の手は、ダイニングに戻ってきてからずっと机を叩いていた。バンバンと音が鳴ってとても五月蠅い。
「めんどくせぇ」
斎藤が吐き捨てるように言って、ちらりと膝の上の夜白を見る。
そう、主な原因は斎藤の膝の上にいる夜白なのだ。
「むきーっ! 夜白ちゃんを膝に乗せれるのは私だけなのにーっ!」
「いや谷口、夜白はおめぇの抱き枕でもなんでもねぇぞ」
どうやら、夜白が養母以外の膝の上にのるのが気にくわないらしい。荒ぶる養母に斎藤がついつい突っ込みを入れてしまう。
夜白はそんな光景を無表情で眺めていた。高みの見物というやつである。
「さあ夜白ちゃん、私の膝にのって!」
何を思ったのか、腕をガバッと広げて叫ぶ養母。さりげなく斎藤が溜息を吐いた。
「動きたくない」
「主任! どうやって夜白ちゃんを手籠めにしたんですか!?」
「……はぁ。夜白、一回降りてくれ」
「めどい」
「お前はて〇よかニートか何かか」
突っ込みを真後ろから浴びながら、夜白は渋々膝からどける。
「やっと夜白ちゃんを私に渡すに……へ?」
斎藤が椅子から立ち上がったのを見て、養母が間抜けな声を出した。
そのまま斎藤は、養母の傍までゆっくりと歩いて冷たい目で養母を見下ろし、
「頭冷やせ」
「ぐはっ」
脳天に拳を落とした。
「いだいっ!」
頭をさすりながら蹲る養母を気にも留めず、斎藤は元居た席にどかりと座る。
すかさず夜白はその膝に飛び乗り、斎藤に体重を預けた。
「にしても軽いな。ちゃんと食ってんのか?」
「食べてる」
「ならいいんだが」
筋肉の重さは何処に消えたのだろうか。夜白はそんな事を考えながら、ぼうっと養母を眺める。
それからしばらく観察していると、養母は涙目を浮かべて立ち上がった。
「うぅ……再開ね、分かったわ」
そう言って、とぼとぼと席についてパソコンを開く養母。
パソコンを見るのに膝の上にいては邪魔だろうと思い、夜白は膝から降りて元の椅子に座る。斎藤がどこか物足りない表情を浮かべたように見えたのは気のせいだろう。
「さて、まずゲームで起きた出来事について話しましょうか」
「あぁ」
養母が話を切り出すと、空気にピリッと緊張が走った。
「まずさっき話した通り、夜白ちゃんが裏ボスっぽいのを倒した」
養母の視線が夜白へと向く。
「そしてその先に閉じ込められていた――本人曰く封印されていたのが、サリエルという金髪の女の子。ちなみに分かっているとは思うけど、一応NPCよ。夜白ちゃん、詳しくお願い」
急に話を振られたのと、NPCの前に「一応」がついていたのに夜白は少し困惑したが、すぐに冷静さを取り戻す。
よく見ると、養母のパソコン画面にはNRWの攻略サイトが開かれていた。丁度画面に出ていたのはNPCに関する説明だ。
「サリーが鎖に手足を縛られてたから、鎖砕いて出てきた。以上」
「……その後は? なんかすごい音聞こえたんだけど」
その問いに夜白は少し考え込み、「あぁ」と声を漏らす。
「盗賊みたいなプレイヤーが出てきて、サリーが鎌で真っ二つにした」
「攻撃の余波?」
「鎌がそのまま壁に刺さった」
「なるほど」
満足したのか、養母は何度もうなずいた。
「……で、アクアの店で言わなかったこと、何?」
「あー……あれは」
言葉を濁しながら、養母はパソコンを操作している斎藤をちらりと見る。
しばらく沈黙が続いた後、今度は斎藤が重い口を開いた。
「谷口がさっき言ってた『NPCとは思えない反応』、の件か」
「……えぇ。NRWの運営の後ろに何がいるのか――得体が知れない」
怪訝な表情を見せる二人に、夜白は眉を顰める。
NRWの後ろ盾。
確かに、数世代前の家庭用ゲーム機と同じくらいの値段で売る意味が分からない。本来ならもっと高く売るだろうし、実際今までに販売された、完全ではない没入型のVRゲームも10万円は超えていた……らしい。
そうなるとやはり、資金に困らないような大きな後ろ盾が必須となってくる。例えば政府だったり、大手企業だったり――。
「本当なら、公開されるの?」
「大体の会社は株式でしょ? でもNRWの運営は違う……そもそも企業名が公表されていない。警察も調べようとしたけれど、何故か上から圧力がかかってくるの」
上からの圧力。その言葉に夜白は眉を顰める。
「圧力……例えば?」
「……懲戒免職されるわ。主任、この話に関しては主任からしてもらえる?」
「あぁ、分かった」
養母が珍しく申し訳なさそうに言うと、斎藤は小さくうなずいた。
「……処分を食らった後、一部の奴らが失踪する。何人かは死体で発見された」
「上は?」
「だんまりだ」
夜白の問いに、唇を噛みながら斎藤が答える。
捕まった時からニュースをずっと見ていないので、この警察官殺人事件についてが報道されているのか分からない。しかし。
「ごめんなさい」
「……何?」
斎藤の眉が、ピクリと動く。聞き取れていたのかは分からない。
一応聞き取れなかったのだと判断し、夜白はもう一度言った。
「ごめんなさい」
夜白はぺこりと頭を下げる。
斎藤と養母が困惑する中、夜白は口を開いた。
「……殺したの、多分――私」
言葉を失う二人に向けて、夜白は更に机につくギリギリまで頭を下げる。
しばらく下げていると、不意に頭を触られる感触がした。
「いっかい頭上げろ」
斎藤にわしゃわしゃと頭を撫でまわされ、夜白は頭を上げる。
二人は複雑な表情を浮かべていた。しかしそこに、憎しみと言った悪感情は混ざっていなかった。
「夜白――出来るところまででいい、詳しく聞かせてもらえるか?」
優しい口調でそういう斎藤に、夜白はこくりと頷いた。
次話こそ長くしたい……無理ですごめんなさい。
パソコン時間をどんどん削られるんです。




