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――ぐちゃり。
生臭い、薄暗い部屋の中で、少女は『肉片』を踏み潰した。
びちゃりと液体が飛び散り、白いフローリングを紅く染め上げていく。
「もう、終わり?」
少女は辺りに散らばる肉片を紅い瞳で冷たく見下し、首を傾げた。
――その光景は、異常だった。
まだ未成年――それも15歳にも満たない少女が死体を蹴とばして、愉悦を感じている。
これを異常と言わず、一体何と言うのだろうか。
しばらく経った頃、全ての死体から返答が無いのを理解した少女は、残念そうにうなだれた。
「つまらない――」
少女は浅く溜息を吐き、くるりと踵を返した。少女の腰まで伸びた銀髪が、宙にふわりと舞った。
漆黒の手袋をはめた小さい手をきゅっと握り、刃物の具合を確認する。
少女はニヤリと唇の端を吊り上げ、くすりと嗤った。
「まだ、遊べる――くすっ」
ひゅんひゅんとやたらと切れ味のいい刃物を素振りし、少女はドアノブに手を掛ける。
――カチャリ。
扉を開けた先には物音ひとつしない、一面の暗闇が広がっていた。
「次は――乗り込んじゃおうかな?」
少女は暗闇に誘われるようにして、闇に溶け消えていった。






